総括
利下げのベンチマークのコアインフレ低下せず(金融政策と軍事外交で信頼得られず。外貨準備は増加)
通貨最下位、株価15位
予想レンジ トルコリラ/円 12.0-13.0
(ポイント)
*コアインフレ指数低下を鑑み利下げをしたが、コアは反転、上昇
*9月CPIは19.58%、コアは16.98%、PPIは43.96%上昇
*9月の製造業PMIは52.5に低下した
*8月貿易収支は42.6億ドルの赤字
*外貨準備は最少時の倍となる
*米、トルコに対抗措置警告 ロシア製ミサイル購入で
*政策金利は1%引き下げられ18.0%となった
*利下げ後、リラは下落、株価も下落、長期金利利回りは上昇した
*中銀は政策金利のベンチマークをコアインフレに変更した(リラは下落)
*リラを売るのは主として国内勢
*中銀、外貨預金準備率を2.0%引き上げ
*政府の見通しによると、今年末時点のインフレ率はプラス16.2%
*今年の国内総生産(GDP)伸び率は9%の見通し
*大統領は利下げを要求している
*7月経常収支は改善 観光収入増加
*2Q・GDPは強く、今年の成長率は8%超えか
*今年は月別に見れば最強が3回、最弱が3回と乱高下している。
*コロナ感染者は増加
*大統領支持率低下
(9月消費者物価、利下げの前提のコア指数低下が覆った)
9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比19.58%と、2019年3月以降で最高になった。予想をやや下回った。中銀はは政策金利を18%に引き下げており、実質金利のマイナス幅が一段と拡大した。
前月比では1.25%。予想は、前月比1.35%、前年同月比19.7%。
中銀が9月に政策金利をインフレ懸念がありながら1%引き下げて18%にしたのは、金利決定のベンチマークを総合インフレから3か月連続低下しているコアインフレに変更したからだ。おそらくエルドアン大統領の利下げ圧力に応じながら、市場の信頼を失わないようにした中銀の苦肉の策であった。ただ市場は理解せず、トルコリラが下落しインフレ懸念が再燃した。
9月のコアインフレは4か月ぶりに16.76%から16.98%へ上昇した。利下げをする要因がなくなってしまった。公式インフレ目標は5%。
(CPI上昇要因と今後の見方)
9月の前月比CPI上昇率を押し上げたのは教育費。学校が再開する中、5.15%上昇した。家具価格は3.33%上昇した。
食品・非アルコール飲料価格は前月比で0.05%の上昇にとどまったものの、前年比では28.79%上昇と、伸びをけん引した。
一方、年末の2-3カ月から来年初めにかけて、インフレ率は急激に鈍化する可能性が高く、積極的な追加利下げが行われるだろうという見方もある。ただ利下げに伴い、リラが急落する公算が大きい。ここ数カ月、総合インフレ率を押し上げる要因となっていた食品価格の上昇がピークを過ぎたことが指摘されている。
(9月生産者物価=PPIは43.96%上昇)
9月の生産者物価指数(PPI)上昇率は、前月比1.55%、前年同月比43.96%。
(他の経済指標)
*9月の製造業PMIは52.5と前月の54.1から低下した
*8月貿易収支は42.6億ドルの赤字。7月の42.8億ドルの赤字とほぼ変わらず
*救いは外貨準備の増加だ。介入出来る狭義の外貨準備も800億ドル台と最悪時の倍となっている。リラ安が続けばリラ買い介入に踏み切るだろう。
(リラ安に財務省は)
ギュル財務副大臣は、トルコリラが対ドルで過去最安値を更新していることについて、リラへの市場の信認を高める措置を取ることが必要だと述べた。詳述は避けながらも、不安定化を招く行為や発言の自制も呼び掛けた。
ギュル氏は、信用供与は選別して行われるべきだとし、安易な融資がインフレ高進につながっていくと批判した。ドル経済化がリラの価値を損なう大きな引き上げになっているとの考えも示し、ドル経済化の行き過ぎを是正することも必要だと主張した。
トルコ国民は近年、2桁台のインフレやリラ下落へのヘッジ手段としてドルなど外貨を記録的な水準まで購入している。リラはこの5年では価値が3分の2目減りしている。
(米、トルコに対抗措置警告 ロシア製兵器の追加購入巡り)
シャーマン米国務副長官は、トルコがロシア製の地対空ミサイルを追加購入した場合に対抗措置を検討すると警告した。北大西洋条約機構(NATO)が脅威とみなすロシアと軍事協力を深めないよう促した。
シャーマン氏は「あらゆる機会を通じてトルコにロシア製の軍事装備品を追加購入しないよう促してきた」と指摘した。「トルコがそのような方向に動いた場合の報いを明確にしていく」と述べ、対抗措置を警告した。トルコはNATOに加盟している。
エルドアン大統領は9月29日、ロシア南部のソチでプーチン大統領と会談した。ロシア製の地対空ミサイル「S400」の2基目の購入について議論したとみられる。トルコは1基目のS400配備をめぐり、米国から経済制裁を受けている。
オースティン米国防長官は1日、トルコのアカル国防相と電話し、2国間の防衛協力を重視していると伝えた。S400の追加購入をめぐっても議論した可能性がある。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン下限から小反発 大きく伸びず
日足、ボリバン2σ下限から小反発。10月1日-4日の下降ラインが上値抵抗。9月27日-10月1日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。
週足、ボリバン2σ下限まで下落して小反発。9月6日週-13日週の下降ラインが上値抵抗。5月31日週-9月27日週の上昇ラインがサポート。雲下。
月足、7月、8月は連続陽線も9月は7月-8月の上昇ラインを下抜く。3月-9月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σ下限は11.462。
年足、6年連続陰線。今年は僅かながらも陽線スタートも中銀総裁の電撃解任で陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
インフレを高く公表した調査機関を告発
トルコ統計局は2月、独立系のインフレーション・リサーチ・グループ(ENAG)を刑事告発した。ENAGが調査手法の公表を義務付ける規則に違反しているという。ENAGはデータを集めオンラインの物価を追跡、トルコの消費者物価上昇率が年40%前後にも達していると試算した。統計局の数値とは2倍以上の隔たりがあったようだ。
エルバン財務相はENAGが統計局を「おとしめ」ようとしたとして、国民にENAGの調査結果を無視するよう求めている。エルバン氏は、統計局に政治的な介入はなかったとも主張した。
ENAGで調査を実施したトルコのイェディテペ大学のベイセル・ウルソイ教授は、「ENAGのデータが国民の懐事情と店頭価格に基づくもので、物価上昇を反映していることは誰もが知っている」と話す。「たとえ誰も望んでいないひどい数字だったとしても」とつけ加えた。
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