“+6.4-(-5.1)=+11.5”

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+6.4-(-5.1)=+11.5。

これは小学校の3年生くらいで学ぶ算数の数式であるが、何のことだかお分かりであろうか?

そう、この簡単な数式は日米の経済成長格差を見る為に2021年米国第一四半期GDP.速報値と我が国のそれを引いたものであるが、+6.4%から-5.1%を引くと+11.5%となってしまった日米のGDP.の差である。

一言で言えば、あちらは6%以上のスピードで景気回復が進んでいるのに、此方では逆に5%以上のスピードで景気が落ち込んでいる状況である。

未だ、有る。
+4.2-(-0.4)=+4.6。
此の数式は2021年米国第一四半期CPI.(消費者物価指数)速報値の+4.2%から我が国の-0.4%を引いた4.6%の日米のインフレの差である。

一言で言えば、あちらは4%以上のスピードでインフレが進んでいるのに、此方では逆に物価が下がってデフレに落ち込んでいる状況である。

上の二つとも偶々4月ひと月の数字を引っ張り出したものでこれを基に経済論争をする積りは毛頭無いが、少なくともGDP.比較からはFRB.は景気過熱を心配するだろうし、日銀は景気停滞を心配しない訳にはいくまい。

CPI.比較ではFRB.は将来のインフレを心配するだろうし、日銀は反対にデフレを心配しない訳にはいくまい。

では日米の中央銀行は何を考えるか?

FRB.はいきなり引き締め(急ブレーキを掛ける。)とは行かないが、徐々に緩和政策からの脱却を図るためにテーパリング(アクセルを緩める。)を当然考えている筈だし、それは地区連銀総裁からの度重なる発言から伺い知ることが出来る。

片や、日銀。
お気の毒であるが、何も為す術を持たないと思われる。

これ以上緩和政策を打ち出せば恐らく地方銀行を含めた金融機関はやっていけなくなり、金融不安にも繋がる可能性が有る。
かと言って現状の緊急事態宣言を含む非常事態の中では“金融緩和政策からの脱却。”などは口にも出せない。

アメリカは時間の問題で緩和政策から抜け出し、我が国は雁字搦めの緩和政策の継続しか選択肢は無いのが実情だ。
日米金利差は広がりこそすれ、縮まることは有り得ない。

テーパリングと言えば、先週発表された前回のFOMC.議事録の文言に注目したい。

議事録の中で、
A number of participants suggested that if the economy continued to make rapid progress toward the Committee’s goals, it might be appropriate at some point in upcoming meetings to begin discussing a plan for adjusting the pace of asset purchases.
“多くの参加者が、経済がFOMC.の目標に向かって急速に前進し続けるならば、今後の会合のある時点で、資産購入のペースを調整するための計画の議論を始めることが適切ではないかという提案をした。”
と言う文言が有った。

このA number of ..がポイントである。
高校時代に習った英語を思い出すと、“Some participants.”であれば、“数人の参加者”であり、“A number of participants.はSomeよりはずっと多い“多くの参加者”と訳すのが妥当であろう。

FOMC.議事録では誰が何を言ったかは記録されないので、FOMC.を構成する12人の内何人がテーパリングに対して積極的かは分からないが、FOMC.後の記者会見でパウエルFRB.議長がテーパリングに関して、けんもほろろに“時期尚早である。”と言い切った点は割り引いて考えておいた方が良さそうだ。

現在為替市場は極めて静かな動きを見せているが、株式市場は以前の連日高値更新の騰勢は息をひそめて何方と言うと下値を探ろうとしている感が有り、仮想通貨市場はVolatile.(予測し辛い変動的)な動きを見せている。

仮想通貨の代表格であるビットコインは凡そひと月前の4月14日に高値704万円を付けた後5月19日には半値以下の307万円まで暴落し、本日14時現在370万円近辺で取引されている。

仮想通貨は米中金融当局の規制強化の可能性の報があって利食い売りが先行しているものと思われるが、市場がより深刻にFRB.のテーパリング論議を気にしだし始めたのではなかろうか?

本格的なテーパリングが始まると(議論も含めて)、金融緩和を囃して上げていたと思われるリスク資産の調整が始まって当然であろう。
株価は下げるであろうし、勿論仮想通貨も下げよう。

もっとも2013年のテーパリング発言で株価と新興国通貨暴落を経験したFRB.はそのメッセージの伝達方法に関しては相当慎重に行動を起こすであろうが..
(もしかして、テーパリングに対して慎重な発言をするパウエル議長と、それに反して積極的な発言をする地区連銀総裁の言葉の違いにFRB.の巧みな戦術を見るべきなのかも知れないと思うのだが、これはちょっと穿った見方かも知れない。)

リスク資産が下がった場合、リスク・オフとなってドル、円、そして債券が買われるのかも知れない。

その場合、ドル・円相場は強い通貨同士であり、債券が買われると金利は低下するのでドル・円が下げるイメージが湧くが、上で述べたFRB.によるテーパリングの時期の議論が進む中、ドル・円を買うのは勇気が要る気がする。



テクニカル分析の視点から言うと、どうやらもう少しのドルの下げも有りそうである。
下がったら買うと言うBuy on dips.の戦略が有効と思われる。

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