総括
いよいよ政策金利決定、トリプル安続く リラ買い介入継続
(通貨最下位、株価最下位、長期金利18%台)
予想レンジ トルコリラ/円 13.0-14.0
(ポイント)
*政策金利は19%に据え置き予想
*株は安く、長期金利は18%台で高止まり
*介入は実施しているだろう
*2月出業率は13.4%に上昇
*経常赤字、貿易赤字が継続
*新中銀総裁は利下げ観測を牽制
*格付け会社は格下げを示唆
*トルコ政府は資本規制を考えず
*中銀総裁解任理由は政治的背景と前総裁の利上げのパフォーマンスがある
*大統領は経済改革を打ち出した
*OECDは成長見通しを大幅引き上げ(総裁解任前)
*トルコは中国製やロシア製ワクチンを接種
*レアアースに望み
*EU加盟を諦めたわけでもない
*新憲法制定を画策
*米・トルコ関係は要注意 駐米大使召喚
*大統領はGDPを世界のトップ10に引き上げるとした
(政策金利は)
エルドアン大統領の中銀総裁電撃解任後、初の金融政策決定会合が4月15日に開催される。予想は既にカブジュオール新総裁が急激な政策転換に対する投資家の懸念を収めようと努め、インフレ率が高いために当面は高水準の金利を続けると約束していることもあり政策金利は19%で据え置かれる見通しだ。ただ前中銀総裁解任の理由は市場の予想を上回って利上げをしたことにあると財務相が表明した以上、1.5%程度の利下げは近いうちにあるだろう。
(過去のリラ急落と異なる点)
今回の混乱は深刻だ。これまでのクーデターや米国との外交対立後のリラ急落はあったが、長期金利や株価には大きな影響はなかった。株価はリラ安を好感して上昇したこともあった。今回は株、債券、為替のトリプル安である。投資家の信頼感を失ってしまった。それだけに今回の金融政策決定会合は重要だ。大統領は既に利下げを示唆して圧力をかけている。
私もギリシャやウクライナ危機を経験、その度に当該国の債券を買ったのであるが、それは危機の後、国際的支援の道筋が決まったからである。報道が危機を煽ろうが買った。ただトルコの場合は、債務危機デフォルトになるわけでもない。IMFなどが正しい金融政策を指導するわけでもない。かってきままな大統領による正しい金融政策への妨害である。
(介入は行っているようだ)
当局は電撃解任後、リラ防衛介入を行っているようだ。外貨準備が約50億ドル減少しているからだ。
(外交関係も不安、需給、格下げは)
また年初は落ち着いていた外交関係も波風が立ち始めている。中国とはウィグル族問題、ロシアのウクライナ増派に対してNATOの一員であるトルコはどう出るか、東地中海領有権問題も前に進んでいない。貿易赤字も続き需給面も弱くリラ安を招きインフレ加速要因となる。格下げもいつ行われても不思議ではない。目が離せない状況は続く。
(トルコ失業率、2月13.4%に上昇)
2月の失業率は、0.7%上昇の13.4%だった。未活用労働力を示す指標は過去最高だった1月の29.5%から28.3%に低下した。同指標は新型コロナウイルス
パンデミックが労働市場に与える影響を反映している。1月までは4カ月連続で上昇していた。前回のピークは厳格なロックダウン下にあった昨年5月の29.3%だった。
非農業部門の失業率は前月の14.6%から15.3%に上昇。若年層の失業率は0.4%上昇して26.9%となった。
3月には、新型コロナウイルス感染抑制策が一部緩和されたものの、ここ数週間で政府は方針を転換。飲食店での規制を継続するほか、イスラム教の断食月であるラマダン期間中は、外食も禁止される。
(経常収支)
2月経常収支は26.1億ドルの赤字となった。前年同月は13.8億ドルの赤字。旅行収支の黒字の縮小で経常赤字が拡大した。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン下位で政策金利決定を迎える
日足、安値の12.60あたりから戻すも4月2日の長い上ヒゲで下落。3月30日-4月12日の上昇ラインがサポート。4月2日-12日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向き。雲の下。
週足、3月22日週は下窓を開けてオープン。ボリバン2σ下限を一時下抜くも戻す。21年3月22日週-4月5日週の上昇ラインを下抜く。ボリバン下位へ。雲中から雲下へ下落。3月29日週-4月5日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、20年11月-21年2月の上昇ラインを下抜く。ボリバン下位。2月の長い上ヒゲが効く。21年2月-3月の下降ラインが上値抵抗。5か月移動平均線はまだ上向き。20年11月-21年3月の上昇ラインがサポート。
年足、6年連続陰線。今年は僅かながらも陽線スタートも中銀総裁の電撃解任で陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
15日に利下げなら15-20%下落も=モルガンスタレー、中銀副総裁の出身会社
モルガン・スタンレーはトルコ中銀が今週、市場予想に反して利下げすれば通貨リラは15-20%下落する可能性があると指摘。エコノミストの大半は15日の中銀会合で政策金利が19%に据え置かれると予想。一方で、今週の会合でタカ派的なガイダンスが示されればリラは7.75-8.00リラに上昇する可能性があると見る。
モルガンスタレーは新中銀副総裁の出身会社である。
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