一時は去年の最高値である112.22をトライするのかと思われる程の上昇の勢いがあったドル・円相場はあっという間に失速し先週は安値109.00まで大幅に下落した。
ワクチン接種率の高さで買い囃された英国のポンドも東芝の買収計画によるポンド売り&円買いの噂と欧州当局がアストラゼネカ製ワクチンと血栓の関連性を指摘と報じられてから売りが先行し、対ドルで週初の1.3818から1.3701まで値を下げて週を超えた。
逆にワクチン接種率の低さで売り叩かれた円は金利安につられたドル安のお陰で円高が進んだ。
週を終えてみるとドル・円は週初110.62から109.65(安値109.00)へとドル安・円高となり、ユーロ・ドルは週初1.1752から1.1900(高値1.1927)へとドル安&ユーロ高となって、まとめるとドル安、ポンド安、ユーロ高、そして円高と何だかちぐはぐな動きを見せたことになる。
ドルが売られた主要因は一言で言うと米国長期金利安と思われるが、金利動向とドル・円相場の動きを見ると不思議なほど強い相関性が窺える。
戻り高値の110.96を付けた3月31日に米国10年債利回りは終値ベースで1.744%を付け、戻り安値の109.00を付けた4月8日には1.626%まで下落している。
この10年債利回りがアップ・ダウンした10日間、金利が上がればドル・円も上がり、金利が下がればドル・円も下がると言う動きをしていることが分かる。
どうやら現状のドル・円相場の行方を占うには米国長期金利動向を探っておけば良い様に思われる。
その米国長期金利動向であるが、一時の財政支出拡大=債券市場の需給の悪化=債券価格下落=金利上昇と言うシナリオがすんなりとは受け入れられなくなった感が有る。
先ず需給であるがどうやら10年債の1.7%以上の利回りはS&P.の平均配当率である凡そ1.4%と比べても“悪くはない利回り。”であり、機関投資家からそこそこの買いが入っている模様である。(金利上昇抑制要因)
それとFRB.高官から金融政策に関して相次いでハト派的な発言が為されて市場の長期金利上昇期待が削がれた感が有る。
米国長期金利上昇にある程度の歯止めが掛かれば先月に見られた様な急激な対円でのドル上昇は無かろう。
とは言え、ニューヨーク株式市場での連日の最高値更新に見られる様にアメリカのワクチン普及とそれに伴うアメリカ経済のV.字回復期待は大きく、急激な金利とドルの下落も考え難い。
暫くは現在の109円台ミドルを中心としてレンジを意識しながら、ファンダメンタルズに則ったドル高シナリオと米中や中東の地政学リスクに則ったリスク・オフ、及びポジション調整の円高シナリオを描いておけば良いのだろうか?
またまた愚痴になるが、永らく為替に携わっていてこんなに相場観に迷うのは久し振りである。
昨年末から今年年初に掛けてのドル・ベア=(ドルに弱気)一辺倒の自らの相場観から未だ抜け出すことが出来ないのであろう。
幾ら考えてもよく分からない、或いは思った通りに相場が動かない時はテクニカル分析が有効であろうか。
移動平均線だけを見ていると111円、112円と大きな抵抗も無く上昇しそうだったドル・円相場も、実は買われ過ぎや売られ過ぎを表すストキャスティクスは上昇局面の110.90で、同じくRSI.は下降局面の同じく110.90で売りサインを出していた。
同じく上昇一方だったポンド・円も大高値の153.40でストキャスティクス、RSI.共に見事に売りサインを表しているのだ。
テクニカル分析だけで相場に勝てるとは露にも思わないが、大いに参考にする価値は有りそうだ。
因みに、ドル・円のストキャスティクス、RSI.を表したチャートから鑑みるに、塾長の見立ては“何方かというともう少し下サイドへのトライが有りそうだ。”だが、如何であろうか?