“誰がドルを売るか?”
ドル・円の上昇が止まらない。
先週のドル・円相場は火曜日に戻り高値の109.23を付けた後利食いの売りが出て一旦は108円台ミドルまで値を戻したが、その後は再びじり高の展開となり今朝の東京市場では先週の高値を伺う109.19まで上伸した。
このレポートを書いている午後3時時点では109.30を超えて取引されている。
90日と200日移動平均線を上切って、後は大きなレジスタンス(上値抵抗線)は無いと思っていたら、何と市場は200週移動平均線なるものも見ていてそれが109.01に存在するらしく、今度は其処がサポート(下値支持線)として意識されていると聞く。
そして次のターゲットは昨年6月の戻り高値の109.84,次はコロナ騒動の後の戻り高値111.71、そして次は2月20日に付けた112.22と言う事らしい。
昨年末から今年の年初に掛けてあれだけドルの弱気であった市場のセンチメント(塾長を含めて)からは正に様変わりの展開であるが、事ここに至ると上述の市場のターゲットに向けての上昇トレンドに対するドルの売り手が余り見当たらない。
実需の輸出筋の売りはドルの上昇局面の106円~107円で相当消化された。
逆にヘッジを外す(外貨建て保有債権の為替リスクを減らす為に先物で売っておいたドルを買い戻す。)べくドルの下落を待っていた本邦機関投資家は急ピッチのドル上昇に追い付けず買い遅れ感が漂う。
但し、彼らは現状の109円レベルではドルの買い意欲は見せない。
下がれば買うと言う戦略か?
ご存じシカゴ・IMM.がついに匙を投げて円の買い持ち(ドルの売り持ち)を大幅に減らした。
ここ8週に渡って徐々に持ち高を減らしていたが、先週は一挙にネットで12,756枚(ドル換算で約15億ドル相当)の円の買い持ちの板を減らし僅かネット6,514枚(ドル換算で7億ドル相当)の円の買い持ち(ドルの売り持ち)となった。
来週はドテンして円の売り持ち(ドルの買い持ち)に転じているかも知れない。
ドルの売り手と期待されるのは、逆張り(ドルが下がれば買い、上がれば売るという相場のトレンドに逆らった取引)を得意とする我が国個人投資家であるが、先週火曜日の時点でドルの買い持ち残高を約4億ドルに縮めており、ドルの売り余力は有ると思われる。
ドル・円相場が高値に挑戦する展開で彼らがどの様に出てくるか(ドル上昇に対して売り向かうか、それとも再びドル上昇の流れに乗じてドルの買い持ちを増やすか?)が注目される。
まとめると、今週は今まで長らくドルの先安観を信じてドルの売り持ちポジションを保有していたシカゴ・IMM.がドルの買い持ちに転じるか、そして今まで長らくドルの先高観を信じてドルの買い持ちポジションを保有していた我が国の個人投資家がドルの売り持ちに転じるか?
中々興味のある展開が予想される週となりそうである。
今週は16日~17日にFOMC.、18日~19日に日銀政策決定会合が開かれる。
FOMC.ではメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)で利上げ時期がどの程度前倒しされるかや、経済・インフレ見通しの変化などに注目が集まる。
パウエル議長やイェレン財務長官は長期金利の急上昇に対して大きな懸念は無いとは言うものの、FRBがツイスト・オペ(長期国債の購入を増やし、短期国債の購入を減らす)に踏み切って長期金利上昇を抑えるであろうとの憶測もある。
FOMC.後のパウエル議長の記者会見に注目したい。
日銀政策決定会合では金融政策の点検が行われると見られ、雨宮副総裁が述べた様に“緩和効果が損なわれない範囲内で金利はもっと上下に動いてもいい。”とすれば円高要因となるが、黒田総裁が国会で述べた様に“長期金利の変動許容幅を拡大する必要があるとは考えていない。”のであれば、引き続き円安トレンドは続くものと考えられる。
これまでドル安&円高を唱えていて急に豹変したわけではないが、日米のコロナ対策の実情を見るとワクチン接種率一つを取っても日本の対応の緩さが目立って仕方ない。
聞くところによるとアメリカのワクチン接種数は延べ1億人分を超えたのに対し、我が国は10万人にも達していないらしい。
そう言えば我々高齢者に対するワクチン接種は4月から始まると聞いていたが、何の音沙汰も無い。
これではやっぱり円を買う気にはならない。
どうやら円安基調は続く感じがしており、ドル・円、豪ドル・円、カナダドル・円などの通貨ペアーでBuy on dips.=(下がったら買う。)の戦略で臨みたい。