米国長期債券利回りの上昇が止まらない。
先週の金曜日は1.406%で引けたが、木曜日一時1.61%近くまで利回りが上昇した。
全くの想定外の動きであった。
2021年の金融市場の動きは株高、金利高、そしてドル安を読んでいたのだがどうもそれが変調を来した感じがする。
FRB.が金融緩和姿勢を続け、バイデン政権が大規模な財政出を行うのであれば、
財政支出拡大期待。=株高。
財政支出拡大による債券市場での金余り。=債券安=金利高。
市場でのドル余り。=ドル売り。=ドル安。
が常識的に考えられるシナリオであるが、そもそも株高と金利高は両立しない筈である。
市場はどうやら其処に気付いて10年債券利回りが1.5%を超えた辺りから株売りに走り、先週一時31,961ドルの史上最高値を更新したダウは木曜日と金曜日に1,000ドル以上の大幅な下げを演じて30,932ドルで引けた。
金曜日の日経平均株価も1,200円の大幅な下げを見せて28,966円で引け、日米同時株安となった。
今までの“株高。=リスク・オン。=安全資産である債券売り(金利高)とドル売り(ドル安)。”、のパターンから“安全資産である債券売り(金利高)と株安=リスク・オフ、そして米国金利上昇に反応したドル買い(ドル高)。”と極めてちぐはぐな動きを見せる様になってしまった。
その結果は見ての通り、金利は上昇して株価は下げ、主要通貨は下げる(ドルは上昇)こととなった。
長期金利上昇に対してFRB.から何らかのけん制発言が出るかと思われたが、結果は逆でFRB.地区連銀の総裁からは、“長期金利の上昇は景気楽観の強まりを反映。利回りは歴史的にみて依然として非常に低い。FRBが現時点で利回りに対応する必要はない。”などの楽観的な意見が追い次いで出されて金利上昇に拍車をかけた。
週明けの東京株式市場では日経平均株価は一時720円近く戻した後、午後2時半現在で約620円高の29,580円近辺で取引されている。
ダウ先物も約200ポイント高で取引され、先週の大幅な下げを取り戻しているがこのまま一気に先週のレベルまで戻るかは予断を許さない。
難しいのはドル・円である。
104円ミドルに在った90日移動平均線、105円ミドルに在った200日移動平均線を上切れて現在は大きなレジスタンス(上値抵抗線)は見当たらない。
戯れに21日移動平均線を引いてみると102.50を上切ってからはこれがサポート(下値抵抗線)になっていると見えなくもない。
テクニカル的な観点から見るとドル・円の上昇余地は未だ有りそうだが、このまま糸が切れた凧の様にどんどん上昇していくとも思えない。
日銀短観で発表された2020年度下期の大企業・製造業の想定為替レートは106.42で、2020年度通年の想定為替レートは106.70とされており、3月の期末を控えて輸出筋のドル売りが予想される。
一方的に上昇したドル・円を買いそびれた投機筋のドル買い意欲と実需のドル売りの攻防が予想されようか?
因みにシカゴ・IMM.の投機筋のポジションは先週ネットで8,560枚(約10億ドル相当)円の買い持ちを減らしたが、依然として28,622枚(約34億ドル相当)の円の買い持ち(ドルの売り持ち)を保持している。
彼らは滅多な事ではポジションの大幅な変更、例えば買い持ちから売り持ちに転じる様なことはしないが、先週起きた様なロジックの変化(株安、金利高、ドル高)に応じてポジションの更なる縮小を計ればドル・円の更なる上昇は否定出来ない。
暫く続けてきたSell on rallies.=(ドルが上がれば売る。)の戦略は一時封じて様子を見たい。
ドルを再び売るとすれば200日移動平均線である105円のミドルを下切れる時であろうか?
今は我慢の時と心得る。