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日欧の香港に対する温度感と春節前の中国金融政策を確認 なお人民元高は止まらず「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第33回は「日欧の香港に対する温度感と春節前の中国金融政策を確認 なお人民元高は止まらず」でお届けいたします。

目次

1.日本と欧州の香港に対する温度感
2.中国金融政策の見方
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.日本と欧州の香港に対する温度感

国家安全維持法が施行されて約7ヵ月が経過しました。当初はデモの取締りから始まり、その後にインフルエンサーの逮捕、民主派政治家の取締り、海外逃亡者への指名手配、教育改革、ウェブ・メディアへの制限と続き、ますます「本土化」が強まる中、米国を筆頭にファイブ・アイズは猛反発ですが、日本と欧州はどのように香港をみているのでしょうか?

人材派遣を手掛ける、株式会社パソナが日系企業の海外現地法人818社を対象に行った調査によると、海外に活路を見出す日系企業にあって、香港の事業規模拡大を検討している会社の割合は全体の13%と、他地域と比較して、群を抜いて少ない割合になりました。

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米国と中国の二つの巨大な力の間で揺れ動く日本ですが、このチャートから見てとれることは、香港については現状維持が大半、様子見の姿勢を強めつつ、投資を手控えている印象です。

では欧州はどうでしょうか?先週金曜日に香港の経済貿易代表部(Hong Kong Economic and Trade Office)はキャリー・ラム行政長官とドイツ商務省を含む欧州20経済団体とのオンライン・会議を行い、GBA(グレーター・ベイ・エリアと呼ばれる華南地域)における主要な経済対策などについて説明し、欧州から投資を呼び込むための協力を呼びかけました。

欧州側からは、昨今の人権問題や香港の一国二制度に関する懸念も伝えられたようですが、どちらかと言えば儀式的な意味合いが強く、むしろ欧州ビジネス界はまだまだ香港及び中国市場に食指が伸びている印象を受けます。

中国との主義や思想が異なることを頭で理解しつつも、巨大な中国市場と言う磁石に吸い寄せられてしまっている面は否めません。米中対立の行く末を大きく左右する日本と欧州の動向に引き続き注目したいと思います。

2.中国金融政策の見方

本日は中国の金融政策の見方について、少しお話をしていこうと思います。これはTwitterなどを見ていて、米国の金融政策や経済指標の見方は広く認知されているものの、中国の金融政策や経済指標について見方が分からない方が多いのではないかと思ったことがきっかけです。注目を集めているのも最近のことですから、当然のことと思います。

そこで本日は中国の最も基本的な金融政策の見方として、中央銀行の金利操作について見ていきたいと思います。

まず中国は政策金利をみてもあまり意味がありません。なぜなら中国の政策金利は期間1年の貸出基準金利ですが、2015年10月から貸出基準金利は4.35%で手つかずになっているので見ても仕方がないのです。なぜ手つかずになっているかと言うと、この4.35%を基準に、銀行が80%、はたまた120%などの掛け目を用いて融資を行うことで、顧客適用金利を調節することが可能で、ゆえに実質的には既に融資の自由金利設定が可能になっており、政策金利調節の必要性が薄まっているから、中央銀行も貸出基準金利を調節しないのです。

ではどの金利を見たらよいのか?と言う事ですが、答えはSHIBOR(Shanghai Interbank Offered Rate)と呼ばれる銀行間取引の参考金利を見るべきということになります。実際に金融機関が取引する金利に限りなく近い訳ですからこれが正解と言えます。

では実際にSHIBOR、ここでは最も取引が活発に行われていると想定される3ヵ月物をみてみましょう。3ヵ月物SHIBORは、春節前に小幅に上昇していることが分かります。

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人民元金利が小幅に上昇したことで、次章で説明しますが、足元人民元高が一段と進んでいるのです。こう考えると結構シンプルですよね?

まずは難しいことを考えずに、人民元金利=SHIBORと言う存在を覚えておくと約に立つと思います。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さて恒例の為替相場アップデートをしていきたいと思います。先週のドル/円相場は、ほぼ一本調子に上昇を続け、テクニカルでみれば13週(3ヵ月)、そして26週(6ヵ月)の移動平均を綺麗に上抜けたことで、相場は上昇トレンドに入ったと考えています。背景には日本要因としては緩和の継続示唆、米国要因としては米景気回復の兆しと、それに伴う米長期金利の上昇が挙げられます。

それでは香港ドル/日本円(HKD/JPY)から見ていきましょう。

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香港ドル/日本円は想定通りドル円の上昇に連れ高、一時13.60を上抜けて推移し、現在も13.60を挟んで推移しています。今週も、ドル/円の動きに大きく影響をうけることを想定していますが、まだもう一段の上昇が見込めると考えています。数ヶ月のスパンで考えて、ドル/円が110円までじりじりと上昇していく場合には、香港ドル/日本円は14.20レベルまで上昇します。14円台まで上昇する可能性は十分にあると思っています。

米ドル/香港ドル(USD/HKD)は依然としてもみ合いが継続。米香の金利差もほぼない状況ですので、こちらは引き続き膠着を予想します。

次に人民元を見ていきます。

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人民元/日本円(CNH/JPY)はさらに一段と上昇、16.30台が定着、一時16.37まで上昇しました。ドル円の上昇を狙っても良いのですが、キャリー(スワップ・ポイント)がつくこと、人民元金利も小幅に上昇していることから、私は、為替は、人民元/日本円の買い持ちで相場と対峙することを基本戦略にしたいと考えています。

米ドル/人民元(USD/CNH)については、6.40台での推移が継続しています。人民元金利も一旦上昇に転じており、さらに人民元高が進んでもおかしくない状況です。

最後に対円のパフォーマンスを比較したチャートを改めて載せておきます。

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※2020年の年初のレートを100として通貨ペアの強弱をあらわしたチャート

赤いラインの人民元/日本円のパフォーマンスが圧倒的に優れていることが良くわかると思います。ドル/円だけでなく、人民元/日本円をみて頂きたい理由の一つに、この圧倒的なパフォーマンスがあるわけです。

尖閣問題だ、春節だと、今週もまだまだ世間を賑わせ続ける中国。ぜひ一度、人民元をお手に取って頂き、ドル/円と違った体験をして頂ければ、作者冥利に尽きます。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

<最新著書のご紹介>

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なぜ米国は中国に対して、これほどまでに強硬な姿勢を貫くのか?

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【インタビュー記事】

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

日本経済新聞: 中国海警局の領海侵入「断じて容認できず」 官房長官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE0827C0Y1A200C2000000/

Hong Kong Economic and Trade Office: CE addresses European business community on Hong Kong development (with photo)
https://www.hketoberlin.gov.hk/en/press-release/20210207.htm

South China Morning Post: Hong Kong leader seeks to ease national security law concerns in dialogue with European business groups
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3120783/hong-kong-leader-seeks-ease-national-security-law

パソナ:パソナ『第2回海外人事状況に関する調査』実施
https://www.pasonagroup.co.jp/news/index112.html?itemid=3740&dispmid=798

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。