“トリプル・ブルー。”

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注目の米ジョージア州での上院決選投票が行われ、民主党が共和党から2議席奪還して上院での構成比率は共和党50席、民主党50席のタイとなり、最後の決戦票は民主党のハリス副大統領の採決に任されることとなって、上院も民主党が制して大統領、上下院全てが民主党となり所謂ブルー・ウェーブ、或いはトリプル・ブルー(民主党一色)となった。

年明けのニューヨーク株式市場は年末のラリーへの反動とコロナ・ウィルスに対する不透明感や上院決選投票を前にして大きく下げて始まったが、それが週の安値となり後は連日値を上げて3指数共最高値を更新して引け、日経平均株価も30年5ヶ月ぶりに28,000円台を回復して引けた。

上院決選投票の前はブルー・ウェーブとなればインフラ投資や財政支出などの株価好材料と共に増税や規制強化の悪材料も存在し、高値更新中の株価には調整が起きるだろうとの観測が強かったのだが、結果的には上述した様に連日の高値更新となった訳である。

その間、債券は市場の予想通りに売られて10年物債券の利回りは1%の大台を回復した。

利回りが上昇する中、株価も同時に上昇すると言う上院決選投票の前には予想もしなかった現象が起きたことになる。

どうやら民主党内の穏健派と左派の政策かい離は大きく、党内の反対が少ないインフラ投資や財政出動による現金給付などが優先されて増税や規制強化、そして金利上昇と言う株価にとっては悪材料が後回しとなるのではないかとの思惑が台頭したのではなかろうか?

株価が騰勢を続ける中、為替相場は比較的静かに推移したが、米長期金利上昇に合わせてドルは主要通貨に対して小幅上昇した。
昨年までのリスク・オン=株価上昇=債券価格下落(金利上昇)=ドル下落の図式が崩れた感が有る。

前週終値と先週終値を比べてみると日経平均、ドイツDax.、イギリスFTSE.、ダウ、ナスダック、S&P.の主要株式市場の全てが週の高値で引けると言う所謂高値引けとなった。

            前週終値    高値       安値       終値       変化
日経平均株価       27,444.17  28,139.03  27,055.94  28,139.03  +2.5%
JGB.10年債利回り  0.020%  0.035%  0.010%  0.030%  +0.010%
ドイツDax.           13,718.78  14,049.53  13,651.22  14,049.53  +2.4%
イギリスFTSE.      6,460.52  6,873.26  6,571.88   6,873.26 +6.4%
ダウ30種平均        30,606.48  31,097.97  30,223.89  31,097.97 +1.6%
ナスダック            12,888.28  13,201.98  12,698.45  13,201.98 +2.4%
S&P.                     3,756.07  3,824.68  3,700.65  3,824.68  +1.8%
米国10年債利回り   0.916%  1.118%  0.919%  1.118%  +0.202%
ドル・円               103.29  104.08  102.60  103.96  +0.6%
ユーロ・ドル         1.2217  1.2349  1.2194  1.2222  +0.0%
ポンド・ドル         1.3662  1.3703  1.3532  1.3560  -0.7%

ドル・円に関しては米長期債券の利回り上昇と共に安値102.60からじりじりと値を上げて東京市場が休場の週明けのニューヨーク市場で高値104.39を示現したが、実は先週木曜日に再び財務省、金融庁、そして日銀が集まって所謂“三者会談”を開いて102円台まで突入したドル・円相場をけん制した。

塾長に言わせればどうせ我が国の思惑だけでドル買い・円売り介入が出来る訳でも無く“余り意味の無い会議。”だと思うのだが、我が国ではこう言った動きが結構効く場合が多く、機関投資家や銀行のポジション・テーカー(割合長期のポジションを持つトレーダー)から所謂“忖度買い。”が入って、ドルが買われた。
当然米長期債券の利回り上昇も彼らのドル買い意欲をそそったものと思われる。

先週高値更新後の週明けのニューヨーク株式市場では今度は3指数共大きく下げ、民主党によるトランプ大統領に対する弾劾訴追などの政治的混乱と米長期金利上昇が嫌気されたと伝えられた。
やっと米長期金利上昇と言う悪材料にほんの少し反応したのであろうか?

昨日為替市場では株式が下落する中主要通貨に対してドルが上伸したが昨年の様にリスク・オフ=株価下落=債券価格上昇(金利下落)=ドル上昇の図式に戻るのか否かがよく分からない。

少し気になるのは今まで米国株価上昇を支えてきた財政出動とFRB.の金融緩和政策に対して、後者に慎重な意見が出始めたことである。
数人のFRB.地区連銀総裁が資産バブルを警戒してテーパリング(量的緩和の縮小)の早期の可能性について述べ始めた。
確かにこの株価の騰勢は現在超金融緩和政策を遂行中の中央銀行にとっては看過出来ない事であることは想像に難くない。

只もしFRB.が本気でテーパリングについて述べ始めたら、ニューヨーク株価は一溜まりも有るまい。
2013年5月に当時のバーナンキFRB議長がテーパリングを示唆し、市場が大混乱に陥って以後4週間で、世界の株式市場からは2兆ドル以上が消滅した“バーナンキ・ショック”は未だ記憶に新しい。

コロナ対策を最優先し、2023年末までは緩和姿勢を変えないと断言するパウエルFRB.議長はどう考えるか?

1月14日にプリンストン大学でウェブ・セミナーを通してパウエル議長の講演が予定されているが、その講演内容が注目される。

我々の最大の関心事はもし株価に大きな調整が起きた場合、ドルはどう動くかである。

昨年のパターンだとリスク・オフとなってドルが買われるが、今年のパターンだとリスク・オフと共にドルが売られる可能性も有るのではなかろうか?

先週起きた前代未聞の共和党支持者による議会占拠などを見るにつけ、“分断”と言う新たなアメリカの問題を意識せざるを得ない。

大きくは保守民主党と野党に成り下がった共和党との分断。
民主党内部の穏健派と極左の分断。
共和党内部のトランプ支持派と不支持派との分断。
これらに感化されたアメリカ国民の政治的分断と貧富の差の拡大によるアメリカ国民の経済的分断。


やはりドル・ベア(ドルに弱気)としてはドルを買う気にはなれないのだが、リスク・オン、リスク・オフ時の市場の反応の変化には留意しなくてはなるまい。

ドル・円相場の104円超えは絶好のドルの売り場と見るが104円ミドル辺りで頭を打つかを確認してから再び売りに参加しても遅くはあるまい。

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