専門的にテクニカル分析を学んだわけでもなく、ファンダメンタルズの情報収集に労力を割いているわけでもない。しかし、社会科教師としての知識を生かした情報収集・分析とチャートに基づく予測で、小さな利益を確実に積み重ねてきたYさん。FXを始めて間もなく、保証金の100万円を失ったとき、「FXはあくまでも余裕資金で楽しむ」という“マイルール”から、一度は潔く撤退し、その後、500万円を貯めて再びFXに挑んだ。高級車が欲しいわけでも、家を建てたいわけでもなく、ただ「月10万円の利益」を目標にしてきたY氏の堅実な投資スタイルはどのような結果を生んだのか、直接聞いてみた。
(この記事は2020年12月8日に掲載した記事名『私立学校教員 Yさん「知識を生かした情報収集・分析とチャート予測で利益を獲得」トップトレーダーに聞く!(前編)』を一部修正したものです)
Yさん プロフィール
年齢性別 :40代男性
職業 :私立学校教員
収支 :単月約360万円超 (2020年10月収支)
通貨 :米ドル、豪ドル、NZドル
趣味 :海外旅行
▼目次
1.一年で100万円の損失を負い苦いスタート
2.保証金を抑えて、心に余裕が
3.政治や経済の動向を踏まえてチャートを読む
4.大きな指標発表を機に相場の方向性を考える
5.為替情報は報道レベルで十分
6.取引環境はスマホとノートPCだけ
一年で100万円の損失を負い苦いスタート
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編集部: - FXを始めたきっかけは何でしたか?
Yさん:- 10年前にFXのネット広告を見て、お金を増やす手段のひとつとして検討したのが始まりでした。100万円でスタートしましたが、1年足らずで保証金が10万円を切ってしまいました。FXはハイリスク・ハイリターンであることは重々承知していましたが、そのインパクトの大きさと速さは想像以上でした。
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編集部: - 1年間で90万円以上の資金を失った後、どうしましたか?
Yさん:- いったん撤退することにしました。口座に入れた資金以上の投資はしないと、始めるときに決めていましたので。
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編集部: - それから再びFXを始めるまで、期間はどのくらいですか?
Yさん:- 4〜5年ですかね。その間に約500万円の資金を貯めることができました。やりたい気持ちも再燃して、1年前から本格的に取り組むことにしました。
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編集部: - 本格的に取り組むようになったのは、気持ちや環境に変化があったからでしょうか?
Yさん:- うちは妻も仕事をしている共働き家庭です。私はこの4月から1年間ですが、休職することになったんです。やっぱり、自分が自由になる時間ができたこと、気持ちの踏ん切りがついたことが大きかったですね。FXは経験を重ねるほどに、“勝手”が分かるだろうと思っていたので、本格的にトレードすることにしました。
保証金を抑えて、心に余裕が
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編集部: - FXを始める前に、デモトレなどで試されましたか?
Yさん:- まったくしなかったですね。もういきなり本番です。
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編集部: - 初心者の方の中には、口座を開設したものの、使い方が分からず、取引の開始方法が分からなかったという人も少なくありませんが、そのあたりは大丈夫でしたか?
Yさん:- ああ、アプリの操作方法のことですね。私は触ったら直感的に操作ができたので問題はありませんでした。
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編集部: - 再チャレンジされてから、以前とやり方を変えましたか?
Yさん:- 一番は資金的に多少の余裕を持って運用するようにしたことでしょうね。強制ロスカットになると、精神的にちょっとやられてしまうので。入金額に対して必要保証金額をちょっと抑えておけば、多少の変動があっても、保証金維持率が少し下がるだけで、マイナスが大きい時期があっても、強制ロスカットになる可能性は低くなります。少し待てば相場が戻ってきてくれるということを考えるようになりました。
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編集部: - なるほど、FXを始めたころは、資金を“100%出動”させるような高レバレッジでトレードしていたんですね。今は、保証金維持率何%ぐらいを維持されるようにしたのでしょうか?
Yさん:- 相場が大きく動いたときでも、140%は下回らないようにしています。もし“フル”トレードをしていたら、私はまた失敗していたと思います。
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編集部: - ロット数を抑えるようにしたのは、最初の失敗が生かされたということですね。
Yさん:- 精神的に慌てないようにするためです。マイナスが大きくなっても、強制ロスカットにはならないだろうと思えると、日常生活に支障は出ませんし、ちょっと遠くから状況を眺めていられるぐらいに、心に余裕を持たせたいなと思ったんです。
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編集部: - 相場が急変して強制ロスカットになってしまったこともあるんですね?
Yさん:- ええ、初心者のときは、そういう“負”の連鎖に陥っていたように思います。
政治や経済の動向を踏まえてチャートを読む
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編集部: - 資金的な余裕を持つこと以外に、改善されたことはありませんか?
Yさん:- 以前は「今日から明日にかけてどうなるか」ということだけを考えて、“短期的”にトレードしていたのですが、今は長期的なトレンドも念頭にトレードするようになりました。例えば、「直近で円高になるだろう」と思って、売りポジションをたくさん持っていたとしても、流れが変わって円安に振れても、慌てないで済むようになりました。
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編集部: - ミクロとマクロの両方の目線から、複眼的に相場を考えるようになったということですね。ちなみに相場分析はテクニカルですか?それともファンダメンタルズですか?
Yさん:- 大きな動きがありそうなときは、ファンダメンタルズを気にしますが、基本的にはテクニカル重視です。長期でじっくり利益を出そうというよりも、その場でちょっとずつ利益が増えたらいいなという感覚ですね。テクニカル分析と言っても、チャートを見て「そろそろ動きがあるのかな」と読む程度ですよ。
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編集部: - 一目均衡表やボリンジャーバンド、RSIなどを使って詳しく分析するというよりも、チャートの動きで相場のトレンドを読みながらトレードするという感じですか?
Yさん:- そうですね。もちろん大きな指標の発表前はどういう数字になるのかと気にしますし、長期的に見た場合は、政治や経済ニュースも考慮しています。
大きな指標発表を機に相場の方向性を考える
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編集部: - テクニカル分析はルーティーンで行なっているのでしょうか?
Yさん:- それは特にしていないですね。先にも話した通り、金融政策や雇用統計などで大きな発表があったタイミングで相場の見通しを修正します。「直近はこうなる」「長期的にはこうなる」と予想しています。
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編集部: - 予測したことや分析したことをグラフにしたり、エクセルで記録したりしていますか?それとも脳の中だけで整理するやり方でしょうか?
Yさん:- 頭の中にしまっています。長期的な見通しをしていても、相場は急に変わることがありますので、あまり考えを固めすぎずに、臨機応変に対応したほうがいいと思っています。とにかく、必要保証金を作りすぎないということですかね(笑)。
為替情報は報道レベルで十分
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編集部: - ニュースはどの程度チェックされていますか?
Yさん:- 新聞とネットだけですね。テレビはあんまり見ないんです。ただ、普通に“流れてくる”ものだけで、専門的に調べるところまではしないです。
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編集部: - Twitterなどの情報は参考にされますか。トップトレーダーたちもいろいろ発信しています。
Yさん:- 見たことはありますが、「本当にそうなるのかな」と疑っています。株式投資だったら、企業の動きが事前に察知できると有利でしょうね。しかし、為替はそういうミクロな動きに影響されないですよね。政府や中央銀行レベルの話ですから、そういう情報は個別にリークされるというよりも、報道で一斉に出てくると思っています。
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編集部: - 例えば、私たちの「マネ育チャンネル」や「情報ナビ」を参考にされることはありますか?
Yさん:- 定期で見ているわけではありませんが、経済指標カレンダーなどで、今後の経済指標の予定などを確認しています。
取引環境はスマホとノートPCだけ
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編集部: - どんな環境でトレードされていますか。
Yさん:- ノートパソコンかスマホでトレードしています。トレードのためにいくつも画面を開くことはありません。アプリにログインした画面からたどって見に行けるようなものをチラチラ見ています。
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編集部: - それでYさんのようなトレードができるのなら、初心者でも十分にFXで利益が出せそうですね。ちなみにトレード時間はどの程度なんでしょうか?
Yさん:- 今は時間がたっぷりとあるので、いつでもトレードOKですが、相場がよく動く日本時間の9時から12時にログインしていることが多いですね。夕方からヨーロッパが始まりますが、子どもの相手をするので、チラチラ見る程度です。夜はニューヨーク市場が10時、11時からですので、多少でも増やそうとか取り戻そうとか思って、張り付いちゃいますけれど、そこは生活が乱れない程度で抑えるようにしています。売買注文を入れておくこともあります。コンピュータに指示を出しておいて、寝ている間に1回でも取引が成立していればラッキーぐらいに思っています。
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編集部: - 今後、本業のお仕事とFXとの両立をどのように考えられていますか?
Yさん:- 来年4月からは本業の都合で相場をチェックできる時間が激減するので、FXのための時間と本業のための時間を分けるしかないと思っています。朝、出勤前にちょっと見て、帰宅してからちょっと見て、寝る前にちょっと見てというような時間の使い方になると思います。
(後編に続く)
FXにはチャートに関する専門知識よりも、世界の政治・経済に対する基礎的な知識を身につけるべきだとするYさん。保証金維持率がギリギリにならないように余裕を持った資金運用以外に何か秘策はあるのでしょうか。後編では取引スタイルや取引目標、後輩トレーダーへのアドバイスを伺います。
【トップトレーダーに聞く!インタビュー記事まとめ】