“ドル安予想。”

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先週のレポートで大手米銀の幾つかが来年大幅なドル安進行を予想していると書いたが、似た様な論調を展開する銀行(証券も含め)の数は更に増えている。

天邪鬼の筆者としては市場参加者の多くが殆ど同じ予想をしていることを潔しとしないが、突飛な意見に基づいての議論ではなく、ドルが下落する理由として
-米新政権の財政支出拡大。
-FRB.による金融緩和政策の継続。
と言う極めて真っ当で経済的理由で論じているので抗いようが無い。
むしろ、“そうだよな。”と同調せざるを得ない。

この他にも、
-アメリカの財政・貿易赤字の拡大懸念。(双子の赤字の再来。)
-同時に日本の貿易黒字拡大の兆候。(別に懸念ではない。)
などのドル安・円高要因が目立ち始めた。

先週もダウ30種平均が初めて3万ドルを突破し、ナスダックとS&P.が高値を更新してリスク・オンが続く。

今まではリスク・オン相場で株高&ドル安、株高&円安の傾向が有り、弱い通貨同士のペアーであるドル・円相場は中々動き難かったが、今後株高のリスク・オンが続く中ドル安が続き、円安から転じて円高となればドル・円は下がらざるを得まい。

今年のドル・円相場はコロナショックで3月に安値101.17を付けた後は急激に値を戻して104~108円のレンジ内に留まっており、我々の多くがドル安&円高の相場に目が慣れていないが安部政権が発足する前の2010~2012年にはドル・円相場は80円前後で低位安定していたことをすっかり忘れてしまっている。

結局その後アベノミクスの三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)とやらが功を奏して低金利のまま円安が進んだが、来年に掛けてドル安が進めば2010~2012年から比べて30%も安くなった現在の円相場がSustainable.=(持続可能)かどうかは分からない。

一時、次期財務長官候補と目されたブレイナード現FRB.理事の目がなくなり、前FRB.議長のイェレン女史が有力視されて我が国金融当局はホッとしたかも知れないが、油断は禁物。
(注:ブレイナード現FRB.理事はドル安論者で円安には反対しており、彼女が新財務長官に就任するとドル安&円高が進行するであろうとの思惑が存在した。)

バイデン新政権の為替政策については知る由も無いが、双子の赤字が懸念される中アメリカがドル安を望む、或いは100歩譲ってドル安を容認するであろうと考えるのは極めて自然である。

レーガン政権下で財政拡大が内需を支えて輸入が増えて貿易赤字が膨らみ、大型減税で財政赤字も膨らんで双子の赤字となり、1985年ドル高是正の“プラザ合意”に至った構図と似てはいまいか?

実際にプラザ合意の折にFRB.と日銀のドル売り介入のお手伝いをした元ディーラーとしてはアメリカ政府がドル安を望むという事は決して荒唐無稽な話ではないのだ。


来年の相場の話をするのには未だちと早いが、個人的な意見として来年は猛烈なドル安&円高シナリオを想定しておくのも必要かなと感じている。

ドルの上昇局面では躊躇なくドル売りを進める積りでいる。

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