恐らく今年の最大イベントであったであろう米大統領選挙が終わった。
選挙が終わって1週間弱が経とうとしているが、未だはっきりとした決着は付いていない。
現時点ではバイデン候補が勝利に必要な270人の選挙人を上回る290人を獲得し、トランプ
大統領の214人を大きく引き離しており、多くのメディアがバイデン候補の当選確実を報じた。
バイデン候補は正式な勝利宣言はしていないが、ハリス副大統領候補と共に“勝利を確信している。”と述べ、“もう民主(ブルー)、共和(赤)などと主義主張の諍いを止め、共に団結(unite)してUnited States of America.(アメリカ合衆国)を作ろう。”と呼びかけたが、中々感銘深いスピーチであった。
方やトランプ大統領は依然として敗北宣言をしておらず、郵便投票に不正が有ったとして幾つかの州で提訴した。
此処まではシナリオ通りであったのだが、全く予期せぬことが起きた、いや起きつつある。
バイデン候補勝利のケースとして、
―上院共和党過半数維持、下院民主党過半数維持。
これで議会は現状維持となり、大統領と下院が推すであろう大規模財政支出案と増税案の審議が遅れて株価は大きくは変化せず(少なくとも大きくは上がらない。)、債券が売られて金利は上昇してドルは下落する。
―上院で民主党が過半数を占め、下院も民主党過半数維持で所謂トリプル・ブルーとなる。
大統領案、上下院民主党案の可決が容易となり、大規模財政支出と増税が行われるが株価は両者をオフセットして大きな波乱無し。
債券が売られて金利は上昇、ドルは下落する。
現時点では未だ上院の選挙結果も確定しておらず、共和党48議席、民主党48議席と全く拮抗している。
要するに、大統領選挙結果はバイデン候補の当選が確実視されてはいるが、上院の過半数を占めるのが果たして共和党か民衆党かが分からない内に、株価が大暴騰しそれに伴ったリスク・オンの動きでドルが主要通貨に対して大きく売られた。
最後の株価の調整が行われた10月30日(金)と1週間後の11月6日の株価、米債10年物金利、ドル・円、ユーロ・ドル、そしてポンド・ドルの価格変化を見ると以下になる。
日経平均 ダウ ナスダック S&P. 30年債利回り
10.30. 22,977.13 26,501.60 10,911.59 3,269.96 0.873%
11.6. 24,325.23 28,323.40 11,895.23 3,509.44 0.820%
(+5.9%) (+6.9%) (+9.0%) (+7.3%) (-0.053%)
ドル・円 ユーロ・ドル ポンド・ドル
10.30 104.67 1.1645 1.2950
11.6. 103.36 1.1874 1.3147
(-1.3%) (+2.0%) (+1.5%)
ニューヨーク市場の株価は3指数とも大きく値を上げ、それにつられて日経平均株価も29年ぶりの高値を更新するほど大ラリーが起きた。
週明けの本日もその騰勢は衰えを見せず、日経平均株価は金曜日比約+515円の24,839円で引けて25,000円に迫らんとし、午後3時現在ダウ先物も約240ポイント高の28,550ドルで取引されている。
全く驚きを隠せない。
トランプ大統領が未だ負けを認めず、法廷闘争に持ち込もうとしている今、投資家(投機家?)が積極的にリスクを取る姿勢が不思議で仕方ない。
それともやはりバイデン候補勝利を確信しているのであろうか?
そう言えば我が国の菅総理も早々とバイデン候補にSNS.で“ジョー・バイデン氏及びカマラ・ハリス氏に心よりお祝い申し上げます。日米同盟をさらに強固なものとするために、また、インド太平洋地域及び世界の平和,自由及び繁栄を確保するために、ともに取り組んでいくことを楽しみにしております。”と祝意を述べたが、未だ選挙結果が確定しいていない中、これちょっとフライングではなかろうか?
万が一、トランプ大統領が大方の予想を裏切って勝ってしまったらどうするのだろうか?
ところで、バイデン候補優勢の中、気になるのはこれからの金融市場の動向である。
取り敢えず株式市場は上げで答えた。=株価上昇。
債券市場は今のところまちまちであったが、何れ売られるであろう。=利回り上昇。
為替市場ではドルが売られた。=主要通貨が軒並み上昇。
選挙後のこれ程までの株価上昇には違和感が有るが、ドル下落は予想通りである。
但し、その下落幅は株価の上昇率に比べて甚だ小さい。
4年前のトランプ新大統領の折は、ドル・円相場は102円から118円までの16円の大幅上昇を演じた。
バイデン新政権の財政拡大策、FRB.による積極的な金融緩和姿勢の継続、バイデン氏のこれまでの為替に対するスタンス(ドル安派とみなされている。)から鑑みるに、大きなドル・ベア・トレンド(ドルが大きく下げるトレンド)に陥るリスクを考えておきたい。
短期的には株式の調整売りが起きる可能性が有り、その時にはリスク・オンの解消と共にドルの買戻しも見られようが、中・長期的なドルの下落に留意しておきたいと思う。
余談であるが、ある大手米銀は来年の中・長期的な為替予測としてドル・円89円(現状から14%ドル安)、ユーロ・ドル1.39(現状から17%ドル安)、ポンド・ドル1.43(現状から8%ドル安)と言う大胆な予測を顧客向けのレポートに書いたと聞く。
100円の大台を切るほどのドル安&円高が進むかどうかは分からないが、トランプ大統領誕生の折の16円上げは忘れないでおこう。