“見くびるなかれ、菅新首相。”

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先程、総裁選挙を経て菅新首相が誕生した。


2週間前の8月28日(金)の安倍首相による突然の退陣表明で、市場は“金融緩和、財政出動、成長戦略”の3本の矢の効果で金利安、株高、円安を演出したアベノミクス終焉と判断して当日こそ株安と円高が進んだが、その週末の菅官房長官の総裁選出馬の意思表明で市場のセンチメントは変った。
菅さんの“安倍路線踏襲。”の発言により市場は菅新首相が誕生しても、大きな路線変更無しと読んで米国株式市場、特にナスダック指数の乱高下にも拘わらず日経平均株価は23,000円台をキープし、円相場も基本的には106円を中心に不気味なくらいな静けさを保った。

菅さんは7年8ヶ月の長きに渡って官房長官職を務めあげ、安倍政権下でもどちらかと言うと黒子の様な存在で、失礼ながら“どうせ短命政権なのだから、多くは期待出来ない。”と思っていたのだが、ところがどっこい、この1週間の発言を振り返ると“相当なやり手”の片鱗を見せた。

最近メディアでの発言が目立つが、幾つかピックアップすると、
⁻組閣に当たって派閥からの意見は聞かない。
(実際の組閣に当たってはそうも言ってはいられまい。
但し菅政権誕生に尽力したと勝手に思っている政治家はぎょっとしただろう。)

⁻政策に反対する官僚は異動させる。
(菅官房長官になってから内閣人事局が新設され、官僚の幹部人事に色々と口を挟んできた。これから霞が関は益々永田町を意識しての政策運営をせざるを得まい。)

⁻日韓関係は先の請求権協定が元になっており、安倍政権時代といささかも違いは無い。
(全くブレが無い。他の総裁候補は“国際協調が必要だ、とか歴史認識に鑑みて譲歩すべき点はそうするべきだ。”と述べるが、菅さんは“我が国はやるべきことはやっており、それを守らない国との交渉は有り得ない。”と付き放つ。)

⁻遅かれ早かれ消費税再引き上げは必要となる。但し来る10年はそれは無い。
(景気低迷の現在、増税の話はタブーの筈だが、よくぞ言った。財政垂れ流しの現在、将来増税をしなければこの国は潰れる。)

これらの発言が直接市場に大きな影響を与えるとは思わないが、実は菅さんの“ここぞ。”と言う時の行動力は素早い。
少し円高に振れると三者会合と称して財務省、金融庁、そして日銀が集まって協議をすることが多いが、これを主導していたのは菅官房長官と言われている。
菅官房長官はかつて、“私の重要な危機管理の一つに為替がある。財務省、金融庁、日銀による3者会合を開かせている。日本企業が間違いなく国内で経済活動できるような環境をつくる。”と述べている。
そして妙な事にこの三者会合が開かれた後はドル・円相場は上昇しているのだ。
恐らく公的年金などがドル買いを行っているのであろう。
直近では7月31日に104.19のドルの安値を付けた日にこの三者会合を開催し、当日の終値は105.93と1円70銭近くの上げを演出した。

我が国の経常収支が大幅な黒字から均衡に近付きつつある今、何故円高が悪いのかと思うのだが、どうやら菅さんは105円以下のドル安&円高をお嫌いな様である。

因みにそれ以降、ドル・円相場が105円を割ったことは一度も無い。

では菅新総裁が誕生したら為替相場はドル高&円安に動くか?
世の中、そんなに甘くはない。

安倍-トランプ関係は極めて密で、トランプ大統領は中国をバッシングする中我が国の対米国貿易黒字に対して際立った批判はしなかったが、安倍さんの様な個人的に緊密な関係を持たない菅さんとどうなるかは分からない。
少なくとももし菅さんが大っぴらにドル高&円安政策を標榜しようものなら、しっぺ返しを食らうリスクは大きかろう。

菅新首相が所信表明演説で何を言うかは知らないが、今までのイメージとは違う“Tough Politician.”=(手強い政治家)としての菅さんを見ることが出来るのではなかろうか?

長続きするとは思えないが、アベノミクスを踏襲するであろうスガノミクスに敬意を表して短期的なドル高&円安に賭けてみたい。

ソフトバンク・グループによる400億ドル以上とみられる英半導体設計企業アームの米エヌビディアへの売却話なども有り、思わぬ円買いに遭う事が有るかも知れないが突然の円高局面での菅新内閣の対応ぶりにも興味が有る。

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