総括
最弱通貨。いい材料なし、地中海緊張 リラ安抑制意欲無し
(通貨最下位、株価9位)
予想レンジ トルコリラ/円 13.8-14.5
(ポイント)
*油田探査問題でギリシャとの緊張が高まる
*CPIは11%高止まるも利上げは行われていない
*貿易赤字拡大、外貨準備減少
*日足、週足、月足ですべてボリンジャーバンドの下限
*実質マイナス金利
*黒海で油田発見
*東地中海ではギリシャと海底の天然ガス資源をめぐり対立
*2Q・GDPは前年比9.9%減で、約10年ぶりの縮小
*株価指数がプラス圏グループから脱落
*政府と民間の成長予想に差異
*リラ売り銀行の取引停止、外貨購入税の引き上げ、輸入関税でリラ安阻止
*VWは工場建設をコロナ感染で延期
*カタールの枠増加に続きに続き中国ともスワップ協定締結
*非居住者との間の為替スワップを制限
(地中海緊張、トルコの言い分)
トルコとギリシャが東地中海の海底資源を巡り対立している問題で、トルコのエルドアン大統領は、EUの政治家による挑発的な言動はこの問題を解決する手立てにはならないと主張。「EUが国際法と地域の平和という観点から、東地中海でどのような態度を示すのか、誠意を問われることになる」と述べた。
(地中海緊張、ギリシャとEUの言い分)
ミシェルEU大統領は、今月24-25日のEU首脳会議でトルコに対する「アメとムチ」のアプローチを打ち出す方針を示した。
トルコは先月、東地中海に探査船を派遣。NATOのストルテンベルグ事務総長は、偶発的衝突の回避に向けた協議に両国が合意したと発表した。ギリシャのミツォタキス首相は4日、トルコが挑発的な言動を止めれば、協議を開始すると表明している。
(市況、外準減少、金融政策への不信)
日足、週足、月足ですべてボリンジャーバンドの下限に張り付いている弱さがある。2019年12月13日以降ずっと一目均衡表の雲の上に出ていない。トルコからは上述の地中海での油田探査問題でのギリシャとの緊張を含めいい話が一切出てこない。
20世紀ではまだどこの国もインフレ懸念で通貨高を目指したこともあったが、昨今のデフレでは当局も通貨安を放置しがちだ。トルコは世界でもまれなインフレ国だが、大統領の命でなかなか利上げは出来ない。外貨準備は減少し続けている。リラ安防止のためのドルが枯渇する。2Q・GDPは大幅悪化、貿易、経常赤字も続く。コロナ感染者も増え続いている。外交では多くの国と対立している。シリア、リビアでは内戦に関わっている。
今週は失業率、外貨準備、経常収支の発表がある。
(金融の裏口引き締めに批判)
トルコリラは対ドルで6営業日連続で下落し最安値を付けた。根強いインフレ圧力が近く和らぐとの期待が後退している。資金調達コスト引き上げという「裏口引き締め」によるリラ下支え効果ではインフレ高進が止まらない。月内にも利上げが必要との見方が強いが「利上げより利下げでインフレ抑制」が持論のエルドアン大統領を説得できるか
(8月消費者物価(CPI)は高止まり)
8月消費者物価(CPI)は前年比+11.77%に高止まり 伸び率は前月から横ばい。予想は11.91%。前月比では0.86%上昇。予想は1%。CPIは2011年以降、目標の5%を上回っている。中銀は年末時点のCPIを8.9%と予想。市場の予想は11%。インフレ率と為替レートのスパイラルが悪化している。8月の生産者物価指数(PPI)は前月比2.35%、前年比では11.53%上昇。
(8月貿易赤字拡大)
8月貿易収支は、赤字が前年同月比170%拡大して63億1000万ドルとなった。ここ数カ月は、新型コロナウイルス感染拡大で主要貿易先である欧州・中東との貿易が打撃を受けている。
輸出は前年同月比5.74%減の124億6000万ドル。輸入は20.64%増の187億8000万ドルとなった。今夏に記録的水準となった金輸入は394%増加し、1989年以来最大の40億8000万ドルた。
ペクジャン貿易相は、リラ相場の低迷はEU市場の需要減と自動車生産の一時停止が反映されたものと指摘。「わが国の貿易は今後、国内政策と、EUを中心とする主要市場における正常化に伴い、勢いを強めていくと思う」とした。ただ地中海問題でEUから制裁を受けると大打撃となる。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
下位低迷
日足、急落はしないが下位低迷は続く。8月28日-9月4日の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限は14.18。5日線下向き。
週足、ボリバン下限に張り付く。8月24日週-31日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、5月-6月の上昇ラインを下抜く。7月-8月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限
年足 5年連続陰線、今年は陽転して始まるも陰転。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
トルコの外貨準備は減少中
トルコ中銀はリラ安抑制でドル売りリラ買い介入を行っているのだろう。ただ外貨準備は枯渇しつつある(単位 百万ドル)
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