先週のドル・円相場は金曜日にドルの安値104.19まで円高が進み、円高に成り易いと言われている8月(機関投資家の対外投資の果実の円転とお盆を控えての輸出筋のドル売り)に向かって“思った通りの動き”になるかと思われたが、欧州市場が始まった突端に急激なドルの買い戻しが入り、高値106.05まで大きな抵抗も無くドルが急伸した。
これはドル・円単体の問題ではなく、殆ど抵抗無しに急騰(ドルは急落)していたその他主要通貨の反落(ドルの反転)と言ってもよかろう。
6月30日から7月31日のひと月間の高値までの主要通貨の対ドルでの上昇率はユーロが6.0%、ポンドが6.2%、豪ドルが4.7%とややスピード違反気味であり、週末と月末を控えてある程度の水準訂正が起きても不思議ではない状態であった。
6/30 7/31(ドルの安値、通貨の高値) 変化率 7/31終値
ドル・円 107.92 104.19 3.5% 105.93
ユーロ・ドル 1.1233 1.1908 6.0% 1.1771
ポンド・ドル 1.2400 1.3169 6.2% 1.3080
豪ドル・ドル 0.6904 0.7226 4.7% 0.7141
依然として燻る新型コロナ・ウィルス問題の他に当面の注目すべきポイントとして、
-アメリカ大統領選の行方。
-朝鮮半島の地政学的リスクの増大。
-安倍首相の支持率下落。
などのリスク・オフ要因の他に俄かに緊迫感の増した
-米中関係悪化の可能性。
などを考えると、この104円台から106円台までの水準訂正はドル・円の絶好の戻り売りと考えて身構えて週を迎えたが、月曜日早朝にびっくり仰天のニュースが飛び込んできた。
日経新聞電子版が“セブン&アイ・ホールディングスが米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンス・ストア併設型ガソリンスタンド部門スピードウェイを買収する。”と言うニュースを流した。
この事案は2月の独占交渉では買収金額で折り合いが付かず一旦はご破算に成ったと理解していたが、業績不振に陥ったマラソン側が実施した入札に改めて応じてセブン&アイ・ホールディングスが競り勝った。
買収額は約2兆2千億円で、新型コロナ・ウイルスの感染拡大後で世界最大規模のM&A.案件になる。
2兆2千億円と言うと我が国の2ヶ月分の経常収支黒字に匹敵し、巨額である。
ドル・円相場に与える影響も大きなものに成ろう。
このニュースを受けてドル・円相場は取引開始直後に106.42まで急騰した。
ただ問題はこの内一体幾らが買収資金用の手当てのドル買いの円売り材料となるかが分からないことである。
セブン&アイ・ホールディングスが世界中に展開するセブン・イレブンのロイヤリティー(商標権)は莫大で、ある程度の部分は外貨のままで蓄積されているかも知れないし、ある部分は為替が発生せずにドルで調達されるかも知れない。
こう言ったM&A.事案は昨晩の日曜劇場“半沢直樹”でも垣間見ることが出来たが、取引が極めて秘密裏に行われて資金調達の方法や為替の有無などの詳細を知る由も無い。
今迄幾つものM&A.事案が有ったが、結局は“どの程度外貨転されたか?”が詳らかにされた例は少ない。
106.42まで急騰したドル・円もお昼過ぎには105.80まで反落した。
今朝のこのニュースが無ければ8月のアノマリーと新型コロナ・ウィルス問題プラス上述の四つの要因により、ドルの戻り売りを推奨する積りでいたがこのセブン&アイ・ホールディングスのM&A.案件の詳細がもう少し明らかに成るまで様子を見たい。
中長期的なドル安&円高の流れは変わらないと見る。