ドル・円相場は今月に入ってから月初に高値108.16を付けた後は一時安値106.64を付けた後動意が無くなり、107円丁度を挟んで上下1円の間を行ったり来たりする膠着状態が続いているが、ニューヨーク株式市場のナスダック総合指数の騰勢は目を見張るものがある。
3月のコロナ・ショックの折にはダウ30種平均やS&P.と共に大きく調整が入ったがコロナに対しての楽観論が台頭するにつれて大きく値を戻し、先々週は連日史上最高値を更新した。
GAFA.=(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される多くのハイテク株によって構成されるナスダック指数は、多くの景気関連株によって構成されるダウ30種平均に比べてコロナ問題に対して悪影響を被らなかったどころか、在宅が多くなることによって増えたネット関連事業や家庭内消費の増大によって“たなぼた”の様な感じでナスダック指数構成企業の業績が好転したとも言えまいか?
アメリカ各州で新たなコロナ・ウィルス感染者が増加する中、ナスダック総合指数の3月からの回復ぶりは少々過熱気味と言えよう。
一つの例として電気自動車のテスラ株の動きを見てみよう。
テスラ株は昨年の秋までは一株250ドル前後で安定していたが、原油価格下落の逆風にも拘わらずコロナ・ショックの前に一株1000ドル近くまで上昇し、コロナ・ショックで一時半値近くまで下落した後あれよあれよと言う間に急騰し、先週高値1800ドル近くを付けてトヨタの時価総額を超えた。
たった1年足らずで株値が7倍以上にもなったのである。
とは言え、その後はあっと言う間に18%も下げて週末は一株1500ドルで引けたが..
未だ通年では利益を計上したことも無く、年間販売台数がやっと36万台と言う電気自動車メーカーの時価総額が、年間利益が2兆円を超えグループ傘下のダイハツ工業と日野自動車を加えた年間販売台数が凡そ1000万台を超えるトヨタのそれを超える?
これは何かおかしいぞと思うのは塾長だけだろうか?
テスラに乗ったことが有るが、動力源がモーターなので加速は素晴らしい。
モーターは電源をオフからオンにするだけでいきなり動力の100%を出せるが、内燃機関は回転数を上げないと動力が上がらない為、既存の自動車メーカーはターボ・チャージャーやスーパー・チャージャーを付けて成るべく短時間でエンジンの回転数を上げて出力増大を図る。
その技術向上の為にF1.とか各種のモーター・レースに参戦するのだ。
車好きにとっては電気自動車はモーターを載せた静かな車に過ぎない。
今迄の内燃機関が付いた自動車が50年以上の長きにも渡って技術革新の粋を集めた本当の車なのだ。
ちょっと話が逸れたが、テスラの株価やナスダック総合指数の動きを見ると危うく感じて仕方ない。
FRB.による金融緩和で余った金が株式市場に流れる。
給与保護プログラム(PPP.)によって俄かに懐が豊かになった個人が在宅でインターネットを駆使して株を買う。
買うから上がる。
上がるから買う。
又上がる。
と言う株価にとっては“正のスパイラル。”を見ている様な気がしてならないが、何かのきっかけでセンチメントが変化すれば一溜りも無いのではなかろうか?
そのきっかけが何に成るのかは分からない。
ー大統領選挙に関しては未だどうなるかよく分からない。
ーコロナ騒動に関してもワクチン開発や経済活動再開に対する楽観論と新規感染者数増大に対する悲観論が交錯する。
では、
ー米中問題の激化?
ー最近頓に話題に成りだした中国の三峡ダムの決壊の可能性?
注)三峡ダム問題。
ウィキペデイアによると、以下の説明がある。
ダム決壊の危機
2019年、中国国内のダム専門家がGoogle earthで2009年に撮影したダムの基礎部分の写真と2018年に撮影した写真を比較した際「2009年にはダムの基礎部分はまっすぐな直線になっているが、2018年には数ヶ所が湾曲している」と発表したことで、三峡ダムに決壊の危機が迫っているとする声が高まった。中国当局はこの指摘に対して事実を否定している。
2020年7月の段階でGoogleアースの航空写真では歪みは修正された。
なお、万が一決壊した場合は上海市や武漢市などの下流域の大都市に大きな被害をもたらし、中国経済に大ダメージを与えるとともに、中国国内の電力供給がストップすることで大規模な停電を引き起こす可能性がある。
洪水の危機
2020年6月22日に、重慶市(直轄市)の水利当局は、長江水系の河川・綦江(きこう)の上流側での急激な増水によりダムの水位が危険な状態となったことを知らせる最高級水位の「洪水紅色警報」を出した。その「史上最大規模の洪水」に見舞われるとの警告により市民4万人が避難した。
(余談であるが、アメリカ軍の有事における中国への最大攻撃目標の一つが三峡ダムであることは良く知られている)
今月になって北九州地方を豪雨が襲って多大な被害が出たが、同じ様な現象が長江上流で起きており三峡ダムの決壊の危険性が更に増加したと言われている。
三峡ダム問題に関しては実際にそれが起きると未曽有の災害となり、迂闊には話題にすることは出来ないが、市場関係者の間ではブラックスワン(めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象のこと)となるリスクについて考え始めている向きもある。
何れにせよ過熱気味のバブル株式相場が何かをきっかけとして大きく下げに転じる可能性について留意しておくことは極めて大事であると痛感する。
株価下落はリスク・オフとなりドル・円相場を下げることとなろう。