「外為のトリセツ!」は外為どっとコムの膨大な情報とツールの効率的な使い方をご紹介するシリーズ企画です。
今回は通貨の変動率の推移を表示できる「ボラティリティツール」を解説します。
ボラティリティツールとは
「ボラティリティツール」とは、通貨の値動きの強さをはかり、その推移を表示させることができるツールです。
チャートを見るときに合わせてチェックすることで、その通貨が本当に強いのか弱いのかを知ることができます。
「ボラティリティツール」は外貨ネクストネオ・リッチアプリ版で使えます。
※プレミアム会員サービス「シルバーランク」以上で利用できます。
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ボラティリティツールの起動方法
ボラティリティツールは『外貨ネクストネオ・リッチアプリ版』のタブのひとつ、「情報」から「ボラティリティツール」をクリックして起動できます。
外貨ネクストネオ・リッチアプリ版の「情報」→「ボラティリティツール」から起動できる
ボラティリティツールでは右側に各通貨のボラティリティの推移が表示されます。
ボラティリティは±0.0から上が強気(買いの勢いが強い)、下が弱気(売りの勢いが強い)と判断します。
また左側には各通貨とボラティリティの強さが数値で示されます。
デフォルトでは8つもの通貨が同時に表示された状態なので慣れないうちは難解に見えるかもしれません。
そこで通貨を選んでチェックをつけることで、注目したい通貨のみに絞ってチェックすることができます。
ここではドル/円に注目したいのでドル(USD)と円(JPY)を選択します。
ドルと円を表示させたいときは「USD」と「JPY」にチェックをつける
変動のパターンを知る
ボラティリティツールを活用することで大きく2つの局面を有利に導ける利点があります。
①動意を素早くつかみ、取引チャンスにつなげる
為替差益をねらう取引の場合は相場の動意が頼りになりますが、ボラティリティツールを使うとその予兆をつかみ、エントリーポイントをより精確に捉えることが可能になります。
たとえばドル/円の取引を検討するときはドルと円の2つの変動率を表示したうえで判断します。
②リスクオフ局面をつかみ、損失を回避する
為替相場はエントリーチャンスを捉えることも必要ですが、それ以上にいま持っているポジションの損失を軽減することも大切です。
ポジションが損失に傾く要因には予期しない急な変動もありますが、ボラティリティツールを使うことでその予兆を察知して素早い損切りを可能にします。
主な変動パターン
為替変動を的確に捉えるためにはどの通貨が相場を主導しているかを見極める必要があります。
たとえばドル/円を例に挙げると、下落といっても「ドル売り主導」によるもの、もしくは「円買い主導」によるものや、同時に主導しているパターンもあります。
それでは実際のボラティリティツールを紐解きながらみていきましょう。
ボラティリティツール(ドル&円を表示)
上の図ではオレンジのラインがドル、グレーのラインが円のボラティリティの推移を表しています。
ラインが上にいくと強気(買いの勢いが強い)、下にいくと弱気(売りの勢いが強い)であることを示しています。
これだけでは実際の値動きが分かりづらいので、ドル/円のチャートも合わせてみてみましょう。
ドル/円チャート&ボラティリティツール
上の図はドル/円相場との関係性がより分かるようにドル/円チャートと重ねたものです。
オレンジ色のドルのボラティリティを見てみると、ドル/円の上昇局面で上向き(ドル買い)、下落局面で下向き(ドル売り)に傾いていることがわかります。
またグレー色で表示された円のボラティリティは、ドル/円の上昇局面で下向き(円売り)、下落局面で上向き(円買い)に傾いています。
この一連の動きをまとめたものが上の図です。 ①~③の時間帯に分け、ドル/円の動きとその背景について示しています。
①ドル買い+円売り
ドル買いと円売りが同時に起こり、ドル/円が上昇しています。
このときは米国の複数の経済指標がいずれも予想を上回り、ドル買いを誘発しました。
また、それ以上に大きく円が売られていることがわかります。
今までのパターンではリスク回避局面のときは円買いで反応することが常でしたが、このときは日本での感染拡大が「日本売り(円売り)」になったとも言われました。
②ドル横ばい+円買い
円独歩高となったケースです。
新型コロナウイルス感染拡大への懸念を背景にNYダウ平均を筆頭として世界的な株安の流れが止まらず、ドル/円は2日間で2円超の下落となりました。
株安→円買いの流れがわかりやすく現れた例といえるでしょう。
③ドル売り+円買い
ドル売りと円買いが同時に起こり、ドル/円が急落しています。
新型コロナウイルスの感染拡大により欧米株が下落すると米長期金利が低下してドル売りが強まりました。
また同時に原油が急落したことが世界経済下振れの思惑を呼び、リスク回避の円買いも激化したのです。
このときドル/円は前週末の105円台から101円台まで急落し、強力なドル売り・円買いが起きていることがわかります。
このように、ボラティリティが強まる局面では「一方のボラティリティが強まる場合」と「双方が強まる場合」があり、双方のボラティリティが強まるときにより大きな動きが発生しやすいことがわかります。
変動時の主なパターンは6つ
ボラティリティの動きにはいくつかのパターンがあります。
ドルと円の動きでみられるパターンを6つ挙げてみましょう。
①ドル横ばい・円買い
こちらは主要国株の急落などに反応してリスク回避の円買いが起きたケースです。
上図のようにすぐ収まることもありますが、長期化やさらなるリスクオフに傾く危険性もあります。
ポジションを持っている場合は注視して対応しましょう。
②ドル買い・円横ばい
米経済指標の好結果などに反応してドル買いの反応が起きたケースです。
指標の好結果が米株上昇につながればドル/円続伸もありうるため、取引を検討してみてもいいでしょう。
③ドル買い・円買い
ドル買いと同時に円も買われているケースです。
株価下落などによる「リスク回避の円買い」と、リスク資産売却などによる「有事のドル買い」が同時に発生していることが考えられます。
ドルと円が同方向に動いているため値動きは限られるものの、リスクオフの局面にある場合はここから大きく動く可能性も高く注意が必要です。
④ドル売り・円売り
ドル売りと円売りが同時に発生しているケースです。
安全通貨のドルと円が同時に売られているため、リスクオンの局面であることが考えられます。
また、ドルや円以外の通貨の動きが波及している可能性もあります。
こちらも同方向に動くため値動きが限られるため、ほかの通貨ペアに目を向けてみてもいいかもしれません。
⑤ドル買い・円売り
ドル買いと円売りが同時に発生しているケースです。
米国景気拡大などを受けたドル買いとともに、株高などに支援されたリスクオンムードで円が売られることでドル/円が大きく上昇しやすい形です。
実際のチャートを確認しながら買いでエントリーすることを検討してもいいでしょう。
⑥ドル売り・円買い
ドル売りと円買いが同時に発生しているケースです。
景気縮小や利下げなどによるドル売りと、リスク回避ムードで円買いが強まることでドル/円が急落する危険な形です。
買いポジションを持っている場合は損切りを検討する必要があるかもしれません。
相場急変をつかむ!角度には要注意
ボラティリティツールは左軸の0.0から上にあるか下にあるのかをチェックして通貨の強弱を判断します。
基本的に15.0以上、または-15.0以下にある場合は強い勢いが生じているとみられますが、その角度も重要な情報です。
角度が急な局面が現れたときは相場が急変する可能性があるので、次の動きに備える必要があるでしょう。
なお、デイトレなどで相場急変をつかみたいときはボラティリティツールの足種を短いものに変更してください。
右上のMENUから「ボラティリティツールの足種」をクリックすると他の足を選べる
相場の急変を示すパターンはいくつかありますが、ドル/円の場合は下記の3つを覚えておくといいでしょう。
急なドル買い
ドルのボラティリティがプラス方向へ急上昇しています。
要因はさまざまなものが考えられますが、米経済指標の改善や米株価の回復などを受けてドル買いが強まることもあります。
例外もありますが基本的にはリスクオンの状態と考えられ、ドル買いの機会到来の可能性があります。
急なドル売り
ドルのボラティリティがマイナスの方向へ急に動いた形です。
米国景気の悪化やFRBの利下げ、ドルストレートでドルが売られた(他通貨が買われた)などの理由でドル売りとなったことを示しています。
こちらはシンプルにドル売りの取引を検討するか、売り一巡を確認してからドル買いを検討してもいいかもしれません。
急激な円買い
円がプラスの方向へ急激に上昇したケースです。
株価の急落や地政学的リスクなどが高まり、急にリスク回避ムードが高まると円高が急進することがあります。
この例ではわずか5分で+20.0近辺まで上昇していることからも、市場がリスク回避へ一気に傾いていることがわかります。
いま円売りポジションを持っているときにこのようなパターンが生じたときは、場合によっては損切りなど速やかな判断が必要です。
円売り・他通貨買い
慣れてきたら他の通貨のボラティリティも表示させて判断していきましょう。
このケースではわずか5分で円が-20.0まで下降し、NZドルが+25.0近くまで上昇しています。
短時間でリスクオンムードが高まり、またその通貨独自の材料も加わることで大きく円が売られ、他通貨(例ではNZ)が買われたことを示しています。
もちろん円売り持ちのパターンですが、動きがあまりに短時間すぎるとその後にパッタリ動きが途絶える可能性もあります。
このようなときは経過観察のうえ、チャートも併用してエントリーを再検討しましょう。
より詳細な数値を確認する
慣れてきたらより詳しいデータを調べてみましょう。
左側の▶ボタンをクリックすることでさまざまな情報を参照することができます。
データには下記の数値などを確認できます。
MID:対象通貨ペアの仲値
Ticks:各通貨ペアの指定期間内のレート変動幅(絶対値)の累計
Z値:価格変動を標準化した値
HV:直近の変化率を年率換算した値
これらはある数値を超えたら色が変化、またアラートが鳴るなどカスタマイズをすることができます。
カスタマイズは右上の「MENU」→「ツール・デザイン設定」をクリックして設定画面を起動させて行います。
なお、Ticksは設定したしきい値を超えたらアラート音が鳴るように設定できます。
これを利用して、ほかの作業しながら相場急変を察知するといった使い方も可能です。