総括
6か月ぶりの月足陽線後は低迷、需給面ではまだ弱い
(通貨10位、株価6位)
予想レンジ トルコリラ/円 15.5-16.20
(ポイント)
*6か月ぶりに月足は陽線となった(対円)
*米トルコ首脳会談あり。ギュレン派逮捕
*今週は4月経常収支や鉱工業生産、小売売上、失業率の発表がある
*5月消費者物価は上昇
*シリアやリビアでロシアと敵対関係にあり
*外貨取引税を引き上げ
*6月1日より経済活動再開
*トルコの株価はそれほど弱くはない
*5月製造業PMIは改善も50割れ
*リラ売り銀行の取引停止、外貨購入税の引き上げ、輸入関税でリラ安阻止
*1Q・GDPは前年比4.5%とまずまず
*政策金利は0.5%の引き下げに留まった
*フィッチこれ以上の格下げはないと表明
*追加輸入関税を実施
*通貨スワップ締結交渉が進んでいる
*観光業も悪化
*民間の成長予想は弱気、政府予想は強気
*コロナウイルス感染拡大で総額1000億リラの経済対策を発表
*19年4Q/GDPは前年同期比6.0%増
*非居住者との間の為替スワップを制限
(6か月ぶりに5月は月足陽線、その後伸びきれず)
5月に対円で6か月ぶりの月足陽線となった後も力強さはないが小幅上昇している。1Q・GDPが、前年同期比4.5%増となったことも好感された。5月の製造業PMIは40.9と、前月の33.4から上昇したが、好不況の分かれ目となる50は依然として下回った。生産と新規受注が再び急減。雇用と購買も縮小した。新型コロナウイルス流行の影響で事業が混乱し、需要が低迷した。
(需給面は弱い)
需給面ではまだ弱い。5月の貿易統計は輸出が前年同月比40%以上減少し、赤字が大幅に膨らんだ。新型コロナウイルスの影響で欧州と中東の主要国との取引が低迷した。輸出は前年比40.8/%減の94.3億ドル、輸入は28.2%減の127.9億ドル。貿易赤字は33.6億ドルと前年比78.7%増加した。ただペクジャン貿易相は、5月の輸出は前月比では営業日が少なかったにもかかわらず10.8%増加したと指摘し、「輸出の最悪の時期は脱した。回復が始まっている」と述べた。
(物価上昇)
また5月の消費者物価指数上昇率は前年比11.39%と、予想を上回った。景気減速にもかかわらず、インフレが進行していることが浮き彫りとなった。中銀は過去9回の政策決定会合すべてで利下げを実施。食品・コモディティー価格の下落を理由に年間インフレ率が年央までに鈍化し、年末には7.4%になるとの見通しを示している。
今週は4月経常収支や鉱工業生産、失業率の発表がある。
(経済活動制限が緩和、飲食店再開)
新型コロナウイルスの感染者が中東で最も多いトルコでは、感染の拡大が一時よりおさまったことを受け、6月1日から経済活動の制限が本格的に緩和され、飲食店が通常どおりの営業を再開した。
都市間の移動の制限も解除され、航空便の国内線の一部で運航が再開されるなど、経済の立て直しに向けて動き始めたが、トルコ政府は警戒を緩めておらず、手探りでの制限緩和が続いている。
(米トルコ首脳会談)
トランプ米大統領と電話会談の詳細について説明したエルドアン大統領は、「アメリカに逃亡したフェトフッラー派テロ組織のメンバーらの名前を先方に伝えた。先方も、『送っていただいた情報を受け取り、必要な活動をする』と言った」と語った。
リビアの移行プロセスについてもトランプ大統領と話し合ったと述べたエルドアン大統領は、「会談の後に、アメリカとトルコの間でこのプロセスに関して新たな時期が始まる可能性がある。我々が合意した事柄がある」と話した。
エルドアン大統領は、リビア情勢についてはロシアのプーチン大統領とも話し合うと、語気を強めた。
尚、トルコ当局は6月8日、2016年に起きたクーデター未遂事件を起こした組織に関与した疑いがあるとして警察関係者ら149人を拘束した。エルドアン政権は米国在住のイスラム教指導者ギュレン師がクーデター未遂事件の首謀者だと主張し、関係者への取り締まりを続けてきた。ギュレン師は事件への関与を否定している。
(リビア情勢は、ロシアが増派)
リビアでシラージュ暫定政権と対立する有力軍事組織リビア国民軍(LNA)を支援するロシアが、5月に入って元シリア反政府勢力の一部で投降したシリア兵を傭兵として投入する作戦を活発化させ、数百人と契約を結んでいる。 ロシアはシリアのアサド政権の強力な後ろ盾で、アサド大統領による国内反政府勢力の掃討に手を貸している。さらにリビアにも関与しているのは、東地中海に影響力を拡大する狙いだ。ただロシア政府は、リビアにおける軍事力行使を否定している。LNAはロシアのほか、エジプトやアラブ首相国連邦(UAE)の支援も受ける。両国がともに敵視するエジプト発祥のイスラム組織「ムスリム同胞団」とシラージュ暫定政権が関係していると疑っているからだ。
一方、リビアの首都トリポリに拠点を置く暫定政権は、トルコが軍事的な支えになっており、トルコはシリアの別の反政府勢力、シリア国軍(SNA)兵士をリビア入りさせている。
リビアにおけるロシア対トルコの構図は、シリア内戦がそのまま投影された形。アサド政権に味方するロシアに対して、トルコがSNAに肩入れしている構図だ。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
6月2日の大陽線の後は伸び悩んで下落
日足、6月2日の大陽線の後は高値遊びも上抜けず。6月4日-5日の上昇ラインを下抜いて下落。5月29日-6月2日の上昇ラインがサポート。6月2日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。ボリバン上位、雲中
週足、4週連続陽線。5月18日週-6月1日週の上昇ラインがサポート。2月17日週-24日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、5月は6か月ぶり月足陽線。ボリバン内へ戻る。20年3月-4月の下降ラインを上抜く。2月-3月の下降ラインが上値抵抗。
年足 5年連続陰線、今年は陽転して始まるも陰転。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
米ジンガがトルコのゲーム会社を買収、18億ドル
米国のソーシャルゲーム会社ジンガジボー代表は、トルコのソーシャルゲーム会社ピークを18億ドルで買収すると明らかにした。
ピークは、2010年10月にイスタンブールでスタートアップとして設立され、トイブラストやトゥーンブラストといった爆発的な人気を誇るスマートフォンゲームを作った会社。
18億ドルのうち9億ドルを現金、残りの9億ドルをジンガの株式で支払うとし、買収は2020年第3四半期に完了すると述べた。この買収案件が完了すると、ピークはトルコ初のユニコーンとなる。
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