先週のレポートで、“落ち着いたかに見えた米中貿易戦争再発のリスクが生じつつある。”と述べたがその可能性が益々高くなりそうである。
先週トランプ大統領がコロナ・ウィルスに関して中国に対して発した罵詈雑言は尋常なものではなかった。
“中国の欧米に対するプロパガンダ攻撃と誤報は恥ずべきもの。”
“中国は簡単に新型肺炎を防ぐことができたが、上からの命令でそうしなかった。”
“中国は自分たちが世界中に広めた痛みや大虐殺から必死に逸らそうとしている。”
“中国は大規模な偽情報キャンペーンを展開している。”
最新の調査によると民主党のバイデン候補に大統領選予想で5~6ポイントの差をつけられて後塵を拝しているトランプ大統領は相当焦っている模様である。
これまではトランプ大統領の言動に対して眉をひそめるものの“景気は良いし、株価が堅調なんだから良いだろう。”と言っていた共和党贔屓のエスタブリッシュメントも、トランプ大統領のせいではないにしてもこれだけ景気が減速して株価が下落している現状を見て、そろそろ愛想を尽かせつつある。
とは言え、バイデン勝利では株価下落の可能性が高く、“ちょっとお灸をすえるべきかな?”と言う程度のものだろうが..
こういう場合(支持率が下がる。)、時のリーダーは何をするか?
大衆の心を外に向けたがる。
歴史的に見てもそう言ったケースは幾つも有るし、最近ではお隣の韓国や中国がそうだ。
再選を目指すトランプ大統領は景気減速と株価下落を導いたコロナ・ウィルス騒動を中国のせいだと糾弾し、更なる中国バッシングに邁進するだろう。
折しも現在中国では日本の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が開催され、台湾に関しては統一を巡って“平和的”の文言が削除され、香港に関しては香港自治を阻害する国家安全法の導入が示唆された。
この週末、香港で国家安全法に反対する数千人規模のデモが発生し多数の学生や市民が拘束された。
トランプ大統領は中国が香港に対して国家安全法を導入すれば極めて強硬に対応すると警告したが、米中対立が激化する中面子を貴ぶ中国がおめおめと引き下がることは考えられない。
昨年の米中貿易戦争で共産党からその弱腰な態度を詰られた習近平国家主席が面目挽回の為にトランプ大統領と同じ様な強硬な態度を取ることには驚かない。
東の窮鼠(習近平)と西の窮鼠(トランプ大統領)がお互いにかみ合う様なことになれば穏やかではない。(共食いか?)
アメリカでは50州で経済活動再開の動きが進み、我が国でも明日あたりから非常事態宣言の撤廃が噂され“コロナ後”の経済動向についての議論が始まりつつあるが米中対立が激化すれば当然リスク・オフの動きが高まろう。
昨今のリスク・オフの動きではドルと円が同方向に動き、ドル安と円安、ドル高と円高の動きとなって結局ドル・円のペアーは余り動ない状況が続いているが、中期的なトレンドとしてはドル安&円高となる可能性が高まりつつあるのでは無かろうか?
ドル・円相場は106円~108円のレンジに約ひと月留まっているが、このレンジが大きく破れるとしたら下サイドではなかろうかと思いつつある。
先週コロナ・ウィルスに対するワクチン開発成功のニュースで一時108.08の高値を付けた後、それに否定的なニュースに反応して再び107円台に戻ったドル・円相場であるが、そろそろ“戻り売り”のスタンスに復帰しようかと考えている。