先週もドル・円相場は小動きに終始し、安値107.29、高値108.03の値幅74銭に留まった。
面白いことに日中は多少動いてもニューヨーク・クロージングでは東京の始値に戻ってきており、結局は“終わってみれば殆ど動かなかった。”と言う日が多かった。
週明けの今日も107.51で静かにオープンしている。
何だか“為替も不要・不急の動き無し。”と言うところか?
先週の始値と終値は以下の通りである。
始値 終値 値幅
20日(月) 107.55 107.64 9銭
21日(火) 107.59 107.76 17銭
22日(水) 107.70 107.72 2銭
23日(木) 107.77 107.63 14銭
24日(金) 107.59 107.49 10銭
25日(月) 107.51
先週の高値の108.03は23日(木)の午後10時半頃に示現したが、この動きも我が国のディーラー諸君が不要・不急の取引を控えている狭間の虚を突かれた感が有る。
当日は107.77でオープンした後ドルがじり安となって当日の安値107.35で取引されていた日本時間の午後10時半頃に海外のニュース・メデイアが、“日銀は新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急速な悪化を受け、27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策を打ち出す最終調整に入った。国債の購入額は現在年80兆円としているめどを撤廃し、必要な量を制限なく買えるようにする方向で議論する。企業が資金調達で発行するコマーシャルペーパー(CP.)や社債については購入上限額を倍増する見込みである。”と報じてあっと言う間に約70銭急騰して高値108.03を付けた。
このニュースは東京時間に既に流れていたのだが、市場の反応は“足元では長期金利が誘導目標に近い水準で推移し、実際の国債購入額は年80兆円ペースを大幅に下回っている。CP.と社債の購入に関しても、実際にお金を必要としているのはCP.や社債を発行出来る体力を持たない中小企業であってアナウンス効果しか期待出来ない。”と言う事で全く反応しなかったのである。
“何だ、そんなことに反応したのか?”とドル急伸の理由が分かると市場は落ち着きを取り戻してドルは再び107.40迄売り込まれ、結局は107.63で引けることになった。
実はこのドタバタ劇の前に、珍しい事が起きていた。
前週に1バレル20ドルの大台を割っていたWTI.原油先物価格(5月渡し)が月曜日大暴落し、一時マイナス40ドルを割り込んだ後マイナス37.63ドルで引けた。
マイナス40ドルという事は原油の売り手が買い手に40ドル支払うことで、市場原理の観点からは考えられない現象だ。
何が起きたかと言うと新型コロナ危機による需要急減を受けて原油在庫が増え、米オクラホマ州クッシングの原油受け渡し場所の貯蔵施設が間もなく満杯になる懸念が台頭し、買い手不在の中投げ売りが殺到した為である。
今や世界最大の産油国である米国のシェールガス業者の採算価格は40~50ドル程度と思われ、一気に大手石油会社の経営危機懸念が台頭して株が売られて安全資産の債券が買われた。
ダウ30種平均株価は月・火曜日の二日間で合計1,200ドル以上の下げを演じ、10年債の利回りも0.64%から0.57%へ低下した。
それにも拘わらず、ドル・円相場は上で述べた様に全く動意を見せない。
前週の目を覆う様な米国経済減速の兆候を見ても動かず。
先週の前代未聞の原油価格の動きを見ても動かず。
今週は本日日銀政策決定会合、28日~29日にFOMC.、30日にECB.理事会が開催されるが、日米欧の中央銀行が“なりふり構わず”緩和政策を続けるのは承知の上である。
何か驚く様な追加緩和策が出ない限り市場の反応は小さいであろう。
下値の107.00、上値の108.50が切れない限り、暫くは大人しくしていなさい、という事か?