依然としてコロナ・ウィルスが全世界で猛威を振るう中、株価、債券価格、そして金価格が落ち着くにつれて先週のレポートで述べた猛烈なドル需要は減退し、先週は一転してドルが売られる(その他通貨が買われる。)展開と成った。
終値ベースで3月20日(金)と3月27日の値を比べると、
ドル・円 ユーロ・ドル ポンド・ドル ダウ平均株価 日経平均 金
20日 110.84 1.0695 1.1600 19,173.98 16,887.78 1,484.6
27日 107.95 1.1141 1.2480 21,636.78 19,389.43 1,625.0
+2.6% +4.2% +7.6% +12.8% +14.8% +9.5%
(円高) (ユーロ高) (ポンド高)
FRB.が新型コロナ・ウイルスへの対応として無制限のQE(量的緩和)を行い、米国債や住宅ローン担保証券(MBS.)を必要なだけ買い取ることを全会一致で決定したり、5中銀との週1回のドル資金供給オペを1日1回実施することを決定したほか、パウエル議長が“まだまだ行動する余地がある。”との見解を表明して市場にドル流動性に関して安心感が広がり、前週までの“闇雲になんでも売り払ってドルを確保する。”必要性が無くなったこともドルの売り戻しに拍車をかけたことであろう。
ドル・円相場はこの3週間で安値101.19、戻り高値111.71、そして今日は107円台のLow.まで反落と目まぐるしく動いているが、未だその動きは落ち着きそうにない。
米労働省が26日に発表した21日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比300万1000件増の328万3000件と、過去最多となった。新型コロナ・ウイルスの感染拡大を抑えるための厳しい対策によって経済活動が急停止し、レイオフが急増した為だが、恐らくアメリカの失業者数はこれから益々増えていくことは間違いあるまい。
今週末発表の3月の米国雇用統計が注目されるが、調査対象がアメリカで新型コロナ・ウイルスが爆発的に蔓延する前の3月12日週の数字が元になっている為、数字そのものはびっくりするようなものではなかろうが4月の雇用統計は相当酷いものになるであろう。
勿論ドル安要因である。
アメリカの景気減速も気になるが、我が国も酷いことになりそうだ。
日本経済は、2019年10-12月期GDP.(実質国内総生産)の前期比年率-7.1%に続き、2020年1-3月期GDPは新型コロナ・ウイルス、4-6月期GDPは東京オリンピック延期によるマイナス成長の連続が予想されており、リセッション(景気後退)に陥る可能性が高まっている。
こちらは円安要因である。
少し気になる事が有る。
先週末東京と神奈川は外出自粛要請があり、塾長も大人しく家で過ごしたが期明けの4月1日に東京都の封鎖(ロック・ダウン)が行われるかも知れないと言う風評が有る。
風評だけであって欲しいが、もし封鎖が行われればその経済的ダメージは相当なものになるであろう。
株価は当然下げるであろうが、ドル・円相場がどうなるかが良く分からない。
日本株が下げれば円安と言うイメージが浮かぶが、リスク・オフとなって円へのレパトリ(Repatriation.= 外貨資産を引き揚げて自国内での資産に移したり、自国通貨に換金したりすること.)が起きれば円高となる。
ところで今回のコロナ・ショックでトランプ大統領再選に注意信号が灯りだしたかも知れない。
米国の大統領選挙での再選に向けた選挙期間中にリセッション(景気後退)に陥った例は過去2回あるが、どちらも現職が敗北している。
1度目は1980年で、イラン革命による原油価格の高騰で米国はリセッションに陥り、カーター大統領は再選されなかった。
2度目は1992年で、ジョージ・W・ブッシュ大統領(父)は湾岸戦争による景気減速で再選を妨げられた。
今回のコロナ・ショックで米国がリセッションに陥る可能性が大だと思われるが、America first !を標榜していたトランプ大統領が再選されないと株価は下がり、ドルも下がるであろう。
最新の調査によると現職のトランプ大統領とバイデン前副大統領の支持率はそれぞれ47%、49%と拮抗する。
両者の差は統計上の誤差内と言え、どちらが勝っても不思議ではない状態だ。
大統領選の行方も目が離せなくなったが、どうもドルを買う気がしない。
暫くはドル安と円安の綱引きになるのであろうか?
今週は期末を控えてレパトリと輸出筋の円転玉=(円高要因)や、期末の仲値を上げる為のお化粧買いと外債の持ち分が増えたGPIF.のドル買い=(円安要因)が入り乱れて、落ち着きのない相場展開が予想されるので気を付けたい。