先週名付けたウィルス・リスクが益々猛威を振るっている。
1週間前に聞いた2千人弱の患者数と死者数56名は2月3日朝の時点でそれぞれ約1万7千人と360名に膨れ上がった。
現在は間違いなくその数字はもっと増えていることであろう。
潜伏期間が長いと言われている新型コロナ・ウィルスであるが、始末が悪いのは果たして公表されているこれらの数字が正確かどうかよく分からないことである。
2次感染、3次感染が指摘される中、素人目にも"こんなものでは収まらないだろうな。"と感じざるを得ない。
中国に対する忖度で対応が後手に回った世界保健機関(WHO)がやっと30日に国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言したが、貿易や渡航制限は推奨しないとしており、実情との認識の差が感じられる。
少なくとも金融市場は拡大し続ける新型コロナ・ウィルス被害に震撼し、ダウ平均株価は先週28,990ドルから28,256ドルまで約2.5%下落し、日経平均株価も23,827円から23,205円まで同じく約2.6%下落した。
週明けの東京株式市場でも下げ幅を広げ、一時400円以上も下げる場面が有った。
米国債券10年物利回りも1.685%から1.505%まで下落しており、リスク・オフの動きが顕著である。
リスク・オフの動きが続けば円高が続く可能性が高いがもう一つ懸念されるのは中国経済減速による中国からの資本流出である。
そしてその流出先は?
米国に流れるとドル高&元安となり、これはアメリカが許さない。
となると消去法として円が選ばれる可能性は極めて高い。
当然結果として元安&円高となり、ドル・円相場もドル安&円高となろう。
中国と輸出入共に依存度の高いオーストラリアへの影響も大きいと思われる。
こちらも豪ドル安&円高となる可能性が高かろう。
今迄はドル安&円高になれば本邦機関投資家が米債を購入してドル買いに走ると言うパターンが続いており、先週のレポートで1月第1週(1月5日~11日)は2兆円を超える米国中長期債券を購入したが翌週(1月12日~18日)は約2千億円と激減したと述べたが、何と翌々週(1月19日~25日)は約5千5百億円の売り越しに転じた。
因みにこの間のドル・円相場の動きは、
1月第1週(1月5日~11日)、始値107.85、安値107.66、高値109.68、終値109.50で、塾長の解釈は"108円割れの安値で始まり、本邦機関投資家の旺盛なドル買いにより109円ミドルまで値を戻し、米中長期債も2兆3千億円の買い越しとなった。
ドル・円相場は高値引けとなった。"
第2週(1月12日~18日)、始値109.50、安値109.50、高値110.28、終値110.16
で、"ドル・円相場は110円台を回復したが本邦機関投資家は流石にドルの高値追いはせず、米中長期債の買い越しも2千億円に留まったがドル・円相場は一段と高値引けとなった。"
第3週(1月19日~25日)、始値110.07、安値109.18、高値110.22、終値109.28で"本邦機関投資家は110円越えでドルの利食い売りに走り、米中長期債も一転して5千5百億円の売り越しとなり、ドル・円相場は安値引けとなった。"
これらを総合判断するとドル・円相場が108~109円で米債利回りが1.85%の頃、本邦機関投資家は旺盛なドル買い意欲を見せたが、ドル・円相場が110円以上となり米債利回りが1.6%台に低下するとむしろドル・円、米債共に売却に走ったのではなかろうか?
さて現在はドル・円相場が再び108円ミドルに下落したものの、米債利回りは1.5%台に下落している。
今日も機関投資家のドル買いが散見されているが、ウィルス・リスクを目の当たりにしてその買い意欲はかなり及び腰と見る。
これまでの"値ごろ感"であった108~108.50辺りでの買いが一巡すれば、思わぬ円高に成るリスクが存在しよう。
今月はドル・円と豪ドル・円のダウンサイド・リスクに留意したい。