総括
南アランドの回復は鈍い。通貨最下位、株価11位
予想レンジ 南アランド円 7.0-8.0
(ポイント)
*米イラン緊張は後退したが、南アランドの回復は遅い
*経済指標は停電の影響もあり弱い
*低成長と財政赤字が問題
*ムーディーズが格付けすれば全社ジャンク債級の格付けとなる
*今週の政策金利は据え置きか
*ムーディーズの次期格付け見直しは3月
*3QGDPは前期比マイナスとなった
*経常収支・貿易収支は改善
*11月消費者物価は低下
*10月小売売上は弱い
*民間部門PMIは弱い
*2019年の証券売り越しは増加
*大統領の財政改善や海外からの投資呼び込みの効果が出るか
*ムーディーズはエスコム社を格下げ
*世銀は成長見通しを下方修正
*移民排斥運動が勃発
*中銀はランドの平均的な水準を1ドル14.5としている
(市況、南アランドの回復は鈍い)
米・イラン緊張でのリスクオフや原油高で南アランドは年初下落した。その後、米・イラン緊張がやや後退し世界的にリスクオンに戻りつつあるが、南アランドの回復は鈍い。電力大手の計画停電はまだ続いており、経済活動を阻害している。先週発表された12月製造業PMI、スタンダードバンク民間部門PMIや11月製造業生産は悪化した。南ア産出のパラジウム価格は高騰し貿易収支を黒字化させているが、対外債務に関わる金利負担が大きく経常収支は赤字のままであることも売り材料となる。
(格付け問題)
このところ落ち着いている格付け問題だが、低成長と財政赤字が続く限り、格下げの可能性は残る。唯一投資適格級に格付けしているムーディーズの格付け見直しは3月である。
(格付け整理)
現在、ムーディーズ社だけが投資適格級に格付けしている。他の大手2社は既に、ジャンク債級に格下げしている。ムーディーズ見直しは3月である。
*ムーディーズ=Baa3 見通しネガティブ
*フィッチ=BB+ 見通し ネガティブ
*S&P=BB、見通し ネガティブ
(政策金利は)
今週は政策金利決定だがインフレはやや低下しているが、ランドが安いこともあり据え置きか。ただ中東での緊張緩和にもかかわらず、停電や弱い製造業指標が圧迫材料になっている。エスコムは、発電所の一部稼働で計画停電の規模を縮小したが、引き続き稼働状況は脆弱で停電の可能性は残るとしている。
(パラジウム価格急騰)
パラジウム価格高騰を続けている。2019年は53.63%上昇し1268ドルから1948ドルとなった。2020年も1月10日で2120ドルととなり年初来8.8%上昇している。パラジウム生産シェアはロシアが44%、南アが40%、カナダが6%、米国が5%。
パラジウムは歯科治療のインレー、自動車の排気ガス浄化用の触媒、ジュエリーにも使用されている。悪い材料が多い中で、南アの好材料の一つだが、南ア自らのストや停電で鉱山操業縮小となり値を吊り上げている結果ともなっている。
テクニカル分析(ランド/円)
1月9日の上ヒゲで反落
日足。ボリバン下限から反発も1月9日の長い上ヒゲで下落。1月8日-10日の上昇ラインがサポート。1月9日-10日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。
週足。一時ボリバン上限に到達。12月9日週-16日週の上昇ラインを下抜く。12
月9日週-1月6日週の上昇ラインがサポート。12月30日週-1月6日週の下降ラインが上値抵抗。
月足。4か月連続陽線から今月は陰線スタート。11月-12月、8月-10月の上昇ラインがサポート。18年12月-19年12月の下降ラインが上値抵抗。
年足、16年-18年の上昇ラインを下抜く。16年19年の上昇ラインがサポート。
15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
喜望峰
エスコムに新CEO
国営電力エスコムの最高経営責任者(CEO)に1月6日、アンドレ・デロイテル氏が就任した。ラマポーザ大統領が昨年11月に任命し、1月15日着任の予定だったが、直近の週末も続いた大規模停電に対処するため前倒しになった。会社運営の効率化のため発電、送電、配電の3社に分割する政府計画を監督する任務を引き受けるが、この計画は大規模な整理解雇を恐れる労組からの反対が強い。
エスコムは国内電力の90%以上を発電しており、同社の経営問題は南アの経済成長の最大の阻害要因とみなされている。
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