先週は、恐らく今年最後となるであろう幾つかの大きなイベントを熟し、ドル・円相場は108円台ミドルの膠着から抜け出して高値109.70まで上伸したが110円の壁を破る程の勢いは無かった。
市場の予想通り、FOMC.、ECB.理事会では政策金利の変更は無く、相場への影響は無かった。
英国の総選挙であるがこちらも市場の大方の予想通りジョンソン首相率いる与党・民主党が過半数の席を確保して来年1月末のEU.からの波乱無き離脱に向かって進むことになったが、市場の反応は凄まじかった。
日本時間金曜日の午前7時頃から開票速報が入り出し、与党・民主党の優勢が伝えられるとポンド・ドルは1.3150近辺から1.3510まで(+2.8%)、ポンド・円も143.70近辺から147.80まで(+2.9%)急騰した。
恐らく市場はポンドのショートで捕まっていたのだろう。
確かにシカゴ・IMM.の投機筋の12月10日(火)時点のポジションを見ると、随分減ったとはいえネットで2万2千639枚のショート・ポジション(約14億ポンド相当)が存在しており、その巻き戻しが入ったのであろう。
14億ポンドは巨大な外国為替市場の取引規模から考えると微々たるものであろうが特に流動性の低いアジア時間早朝で、同じく流動性の低い通貨ペアーであるポンド・ドルが買われると値が大きく飛ぶことは考えられる。
そして半日後の日本時間金曜日の夜半にはポンド・ドルは1.33、ポンド・円は145.50近辺まで丁度半値を戻しており、これからの英国の政治・経済情勢の行方への市場の期待の複雑さを見せつけた。
EU.離脱による英国・EU.の通商交渉、俄かに巻き起こったスコットランドの独立機運の高まりなど今から英国が直面する問題を考えるとそうすんなりとポンド買いに走るわけにはいくまい。
ドル・円相場は先週央から米中通商交渉に対する楽観的なコメントが聞かれだし、木曜日には109円台を超えるドル高&円安となっていたが、英国総選挙の結果ポンドが急騰してリスク・オンの動きとなり一時109.70の高値を示現したがポンドの反落につられて109.30近くまで戻して週を超えた。
懸案の米中通商交渉は貿易協議の“第一段階”と呼ぶ部分的な合意に達し、15日に予定されていた第4弾の制裁・報復関税の発動は見送られたが、依然としてドル・円の頭は重い。
今回の合意は来年の大統領選挙での再選を控えて何とか目に見える成果をアピールしたいトランプ大統領と、経済減速に歯止めを掛けたい習近平主席とのぎりぎりの妥協と思われるがこのレポートでも何回か指摘した様に今や米中協議は通商問題に留まらず、中国が内政干渉と決めつける香港やウィグル自治区の人権問題にまで広がっておりそう簡単に両国が政治的判断で手打ちを行うほど簡単な問題ではない。
どうやら合意無き離脱であるHard Brexit.が避けられ、報復合戦の様を呈していた米中通商交渉が取り敢えずの終息を見たことで世界経済を巡る当面の不透明さは軽減されたが、安心してリスク・オン相場に飛び乗る状況ではないと考える。
今年も残りあと2週間となり市場参加者の減少と共に市場の流動性も減り、同時に市場のボラティリティ(変動率)が増えることも有ろうが、“常に其処に在るリスク・オフ要因”には留意したい。