まんがでお届けするFX。
今年の総仕上げに振り返りたい話題をお届けします。
ミスター米ドル
知らない者はいない基軸通貨・米ドルの精でリーダー的存在
世界180通貨をけん引する重責に、疲れる夜だってある
おなべさん
冬季限定の小料理店女将。いろいろあって今の店に落ち着いたらしい
ミスター米ドルが通いだしてから為替に詳しくなった
上げて、下げて、元へと返す・・・諸行無常のFOMC
やるなら今だ!イケイケ利上げ全開モード(17年12月~18年6月)
まだいける?でもちょっと不安かも(18年7月~18年12月)
ちょっと待って、利上げ継続に疑問符か?(19年1月~19年6月)
いや、むしろ利下げだ!急ブレーキ(19年7月~19年12月)
- (ガラリ)
女将、一本つけてよ - アラめずらしい
今夜は他通貨 を連れてないのね - まあ、一人になりたいときもあるさ
- うかない顔ね、なにかあったの?
- ナニ、あれやこれや振り返ったらいろいろ考えることがあってね
女将、FOMCって知ってるかい? - 米連邦公開市場委員会(FOMC)でしょ
日本でいう日銀会合みたいなものね - 年に8回、米連邦準備制度理事会(FRB)の連銀総裁が集まって米国の金融政策を決めるんだが、ここ最近は特に感慨深かったのさ
- なにがあったの?よかったら聞かせてよ
(コトリ) - (グイッ)
期待されたって、色気のある話じゃねえぜ
いいから話してみろって?
そうかい、それじゃまあ、これを見てくれよ
FOMCのとても大ざっぱな流れ(17年12月~19年12月)
上げて、下げて、元へと返す・・・諸行無常のFOMC
- これァ2年前からの米金融政策をグッと縮めたやつなんだが・・・
女将、どう思うよ? - よくわからないけど、利上げと利下げが左と右でかたよっているような・・・
- そうさ
2年前、FRBはリーマンショックからの回復に自信を深めていた
景気が加熱するとインフレ率が高くなりすぎるから利上げをして金融を引き締めていたんだが・・・ - 2019年になってずいぶん利下げしてるのね
- といっても米国の景気は悪くないんだ
雇用情勢もとてもいい状態でね - なにがあったの?
- じゃあ詳しくみていこうか
ちょいと長くなるぜ・・・
FOMCの大ざっぱな流れ①(17年12月~18年6月)
やるなら今だ!イケイケ利上げ全開モード
- 2017年12月、FOMCは政策金利を0.25%利上げして1.25-1.50%とした
まあ、メンバーのうち2人は反対していたがね - 利上げは予想どおりだったの?
- そう、この年はハリケーンの被害がひどかったんだが、それでも米国の経済指標や株価は堅調だった
年明けの2018年2月にはパウエルの旦那も議会証言で「利上げペースを速める必要がある」なんて言って、景気の加熱の方を心配していたくらいさ - 旦那ってのはパウエルFRB議長のことね
それじゃァ、万々歳じゃないの - 慌てるなって、問題はここからだぜ
2018年3月、トランプのとっつぁんが鉄鋼輸入に25%、アルミ輸入に10%の関税を課す方針を発表
その後に最大600億ドル規模の中国製品に対し関税を課す覚書にも署名したんだ - とっつぁんって・・・トランプ米大統領のことかしら
これが「米中貿易戦争」のはじまりなのね - そう、なが~い戦いのはじまりさ
ただ、このときはまだ景気に安心感があったんだ
同じ月のFOMCではまた0.25%利上げして、次の年の利上げ回数の予想も2回から3回に引き上げた - そりゃまあ、景気がいいんだからねえ
- まァな
18年の6月にはさらに利上げして、政策金利は1.75-2.00%になった
FOMC声明も「経済は堅調な速度で拡大」なーんて上方修正して、年内の予想利上げを4回に引き上げたのさ
FOMCの大ざっぱな流れ②(18年7月~18年12月)
まだいける?でもちょっと不安かも
- 2018年7月、半年に一度のFRB議長による議会証言が行われた
パウエルの旦那は落ち着いたもんで「利上げ継続は景気拡大を持続させる手段」などとかなり楽観的な見方を示したんだ - まァ落ち着いた大人のいい男、アタシ好みよ~
- そりゃよかったな
ただし、ここからパウエルの旦那に試練が訪れるのさ - あらァ、いい男には試練がつきものじゃない
- そりゃ恋愛小説の読みすぎじゃねェか?
で、この議会証言のすぐあとに、トランプのとっつぁんが「利上げは好ましくない!」「利上げ継続は気に入らない!」って例のツイート発言をぶつけてきたんだ - ずいぶんストレートなのね
でもいちおう大統領のいうことだし、ねえ・・・ - ところが、だ
9月のFOMCでは全会一致で利上げをして、声明も「緩和的」の文言を削除、景気の先行きにも自信を示した
パウエルの旦那は大統領に決して阿 らないことを示したんだ - もう、パウエルったらやるじゃないのう~
- 12月もトランプのとっつぁんが「FRBが利上げを検討しているということだけでも信じがたい!」とけん制したにもかかわらず、その後のFOMCで堂々と利上げを決めたんだぜ
- 不屈の男ね!
- おっと、惚れ直すのもいいが、まだ続きがある
たしかに利上げはしたんだが、このときの声明に異変があったんだ - どう変わったの?
- なんといっても利上げ意欲のトーンが一段下がったし、「世界経済と金融の動向を引き続き監視」という文言も加わって黄信号が灯った
パウエルの旦那も「金利の道筋を巡り、かなりの不透明感がある」なんて言い始めて急に弱気になってしまったんだ - イヤ~な予感がするわね
- イヤな予感ほどよく当たるってね・・・
(グビッ)
FOMCの大ざっぱな流れ③(19年1月~19年6月)
ちょっと待って、利上げ継続に疑問符か?
- 2019年早々、金融市場で大事件が起きた
何が起こったか、わかるかい? - 新元号の発表とか?
- そういう平和なニュースならよかったんだがね
金融市場で1月の大事件といったら、アップルショックが引き起こした「フラッシュ・クラッシュ」のことをいうんだよ - ショックだのクラッシュだの不穏な響きね
- 不穏なんてもんじゃない
アップルが売上高を下方修正したことで株も為替も大混乱さ
市場心理の悪化にも拍車がかかって、予想金利は年内の利下げを織り込むところまでいってしまった - ンもう、極端なんだから!
- 市場なんてそんなもんサ
そして、1月のFOMCでは今までヨイヨイ利上げしてきたムードが一転、「利上げ」の文言が削除されてしまった
代わりに加えられたのが、政策金利の調整に「忍耐強く」なるだろうというやつだ - 忍耐?タカクラケンみたいにひたすら耐え抜くってことね
- なんだいそりゃ
これはな、要は政策スタンスが「利上げ」から「様子見」に切り替わったことを意味しているんだ - ならハッキリそういえばいいのにねえ
- 中央銀行ってのはそういう独特な表現が好きなのサ
そして3月のFOMCでは景気判断をさらに下方修正、トランプのとっつあんの発言も「FRBは利下げをすべき」とどんどんエスカレートしていった - パウエルさん・・・
- それでも5月のFOMCでいったん中立な立場を示したんだが・・・
6月、ついに決定的な声明が出ちまった
景気拡大を維持するために「適切に行動する」ってやつだ - ?そんなの当たり前じゃないのさ
- 中銀は独特な表現をするって言ったろう
こいつは「次の行動は利下げ」ということをほのめかしているのさ
ついでに「忍耐強く」の文言まで取っちまった - 短い忍耐だったわねえ
- 当時の議事録をみると多くのメンバーが早期利下げの必要性を指摘していたことがわかっている
利上げのサイクルが終わって、ここからFRBは急激にハト派(※1)へ傾いていくことになるんだ
※1 ハト派=金融市場では金融緩和を積極的に行う姿勢のことをいう
FOMCの大ざっぱな流れ④(19年7月~19年12月)
いや、むしろ利下げだ!急ブレーキ
- 2019年7月、パウエルの旦那は議会証言で「FRBは米経済成長の下支えに向け適切に行動」と発言した
6月のFOMC声明を引き継いだ格好だが、改めて表明することでじわじわ緩和ムードを織り込ませようとしていることがわかるな - 議会での証言といいながら、実はいろんな人に向けて話しかけているのね
- そして7月末のFOMCで、ついに0.25%の利下げを決定した
ただ、パウエルの旦那は「利下げは緩和サイクルの開始を必ずしも意味しない」と釘を刺すことも忘れなかったんだ - なぜそんなことを?
- 考えてもみなよ、ほんの半年前までFRBは利上げイケイケでやってきたんだ
いきなり本格利下げで冷や水を浴びせたら、市場がビックリしてまた混乱しちまうぜ - だから発言でチクチクけん制するのね
- ところが次の9月!FOMCは連続で追加利下げを決めたのさ
政策金利は1.75-2.00%と18年6月の水準まで逆戻りしたわけだ - アラ!さっきは利下げしない感じだったのに
- 利下げしないなんて言ってないぜ?
パウエルの旦那によるとな、利下げは「米景気見通しを支え、リスクへの保険になる」ということらしい - えー、ズルくない~?
- ズルいものかよ
こういうのを、オレの国ではクレヴァーっていうんだぜ
利下げしても市場を逆なでせず、最小限の影響ですませる・・・最適解というやつだ - 納得いかないわぁ
- 納得いかないのはトランプのとっつぁんも同じさ
もっとも、やつの場合はもっと利下げをしてほしかったらしく「ガッツがない!」なんて文句言っていたけどな - いまどきガッツって・・昭和の人なのねえ
- さらに10月には三連続で利下げを決定!
ただし、声明では「適切に行動する」の文言を削除したんだ
絶妙だろう? - どこがゼツミョウなのよ
ぜんぜんわからないわよ! - さっき「適切に行動する」は利下げを意味していると言ったろう?
これを消すことで「次も必ず利下げするわけじゃないよ?」というメッセージを発したのさ
米中協議やらブレグジットやらの進展をみながらどうにでも対応できるようにしたんだ
こういうの、日本じゃタマムシイロっていうんだっけな - マァ、世の中あいまいにしといたほうがいいことも多いわよね
- で、先日12月11日には今年最後のFOMCがあったわけだが、これは予想どおり金利据え置き
さらに2020年いっぱいの金利も据え置き予想ときているから、建前的にはいまの政策を維持するということだな - パウエルさんはなんて?
- 「利上げには著しく持続性のあるインフレ加速が必要」といって、
利上げ のハードルがすごく高いことを強調しているぜ - え、もう利上げの話!?
利下げしたばかりなのに・・・ - 「利上げが難しい」と宣言したということはな、どちらかというと「利下げの可能性の方が高い」というメッセージになるんだよ
わざわざ利上げを引き合いに出したのは、暗に利下げをほのめかすためともいえるわけだな - もう、最後までニクい
男 !
でもクレヴァーなパウエルさんのことだから、来年どうするかアタシには見当もつかないわ - そんなのオレだってわからねェさ
・・・と、まあ話はこれで終わりだ
短い間に上へ下へと、オレもちょっと疲れてね、グチっぽくて悪かったな
(グビッ) - (コトリ)
- オヤ、まだ徳利が空いてないぜ
- アタシも一杯いただくわ
- そうかい、好きにしなよ
今夜は冷えるしな - 雪が降るかもね
・・・ことしはまだ働くの? - 明日は休場だし、年末に向かって取引も細くなる
せいぜいゆっくりさせてもらうさ - というわけで今回は外為どっとコム総研レポートの集大成、「外為白書」最新号より、これまでのFOMCの流れをお届けしたのだ~
ベレーちゃん
為替大好きなノマド宇宙人
通貨のいるところ神出鬼没
- なんだ、迷子か?
- きのこのお嬢さん、うちはもう看板よ
- 外為どっとコム総研の看板といえばコレ!
「外為白書2018-19(第10号)」はただいま発売中なのだ!(※2)
主要通貨ペアの1年間の経緯のほか、FOMCなどの特集記事まで揃う特盛白書なのだ~ - テンション高いわねこのコ
- どれ?ふ~ん、オレも載っているのか
- バッチリ載っているのだ~
- アラ!アタシにも見せて~
外為白書2018-19(第10号)内「マンガで解説!ベレーちゃんのイヤリービュー」より
- なかなかいいじゃねェか
今夜はこいつを肴にして過ごすとするかな - なんだかしっぽりじゃなくなったわねえ
- しっぽりもいいけれど、じっくり読むのもいいものなのだ~
一部の図書館にも置いてあるから、ぜひ手にとってほしいのだ!
※2 Amazon.co.jpで販売中。書店での取り扱いはございません。
米連邦公開市場委員会(FOMC)のおさらい
◎米連邦公開市場委員会(FOMC)とは米国の政策金利などの金融政策を決定する会合
◎米連邦準備制度理事会(FRB)の連銀総裁が年に8回集まって具体的な方針や声明などを決める
◎基軸通貨・ドルの将来の金利を決定づけるため、市場の注目度はかなり高い
◎政策金利は基本的に景気が加熱したら引き締め(利上げ)、景気が悪化したら緩和(利下げ)で対応する
◎2018年までは景気に過熱感が出ていたため年4回もの利上げを実施
◎2019年になると米中貿易戦争、ブレグジットなどのあおりで世界景気に不透明感が現れ、FRBは「予防的に」政策金利を3回引き下げた
◎政策金利とともに発表されるFOMC声明は、前回の文言との差異が市場への重要なメッセージとなる
◎市場はこの声明のわずかな差異をウォッチしており、その解釈によって相場に大きな影響を与える