先週のドル・円相場は前週から沸き起こった米中通商交渉に対する楽観的な意見が台頭してリスク・オンによるドル買い&円売りとなり、週明けもその流れを引き継いで一時週の高値である109.72を示現したが、米国11月のISM製造業景況指数が48.1と予想を下回り、4カ月連続で50を下回ったことからドルは反落し、またトランプ米国大統領が“中国との貿易協議の合意は、2020年の大統領選挙後の方が良いかもしれない。”と発言したため一気に前週の楽観が消え去り、今度はリスク・オフの動きとなって週の安値108.43迄下落した。
ただ108.50を下回ると本邦の機関投資家やM&A.絡みの旺盛なドル買い意欲が見られ、中々下げ切ろうとしない。
大手邦銀の話によると“4日(水)から5日(木)に掛けて顧客のフローはドル買いばかりだった。”と言うことでドルはじり高となり109円に近付くのだが今度は“目に見えない大きなドル売り。”が存在し、中々上げ切ろうとしない。
これ等の見えるドル買いと見えないドル売りに阻まれて4日の安値は108.43、高値は108.95で値幅は52銭、5日の安値は108.66、高値は108.99で値幅は33銭と狭いレンジ内に留まったが、極めつけは11月の米雇用統計の発表があった金曜日である。
雇用統計の中身は失業率が3.5%と1ポイント好転し、非農業部門雇用者数が市場予想の+18万人を大きく上回る+26万6千人となり発表前の週のレンジの底値に近い108.55付近からレンジの上値に近い108.92迄急伸したが、再び109円丁度の壁に阻まれてまた直ぐに108.60迄戻し、結局は金曜日のレンジも安値108.52、高値108.92で値幅40銭の狭いレンジ内に留まった。
週明けの本日のドル・円相場は午後4時現在で安値108.55、高値108.65で何と10銭幅。
これは何を意味するのであろうか?
今週はイベントがてんこ盛りである。
10日~11日、FOMC.。
12日英国総選挙。
12日ラガルドECB.総裁定例記者会見。
そして週末15日には注目の米国による第4弾対中追加関税が課せられるか否かの発表がある。
先ずFOMC.であるが今回の雇用統計から判断出来る様に、この雇用環境の好調さから考えて追加利下げは有り得ない。
そして英国総選挙。
現状ではジョンソン首相率いる与党・保守党が過半数を占めて離脱の条件について何も決めずにEUと別れる“合意なきブレグジット”は回避され、来年1月末に“合意ある離脱”に向かう可能性が高かろう。
ラガルド総裁の会見はドラギ氏から交代して初めてのもので、どの様な所信を表明するのか注目されるが大きな波乱は有るまい。
そして今年最大で最後の大イベントは週末の米中通商交渉であろう。
果たして15日に第4弾の追加関税が課されるか否かは全く分からない。
個人的に米中交渉に悲観的な筆者は香港問題に加えて先週米議会が可決したウイグル人権法案に対して再び“内政干渉”と反発する中国の出方が注目される。
出方によっては通商交渉が決裂する可能性も無きにしも非ずであろう。
北朝鮮の長距離ミサイルと思われるロケットのエンジンの燃焼実験も気になる。
これらの来たるべきイベントへの不安感や地政学的リスクの増大が今日の驚くべき静かな相場展開の理由であろうが、動くに動けない参加者が多いのだろうか?
市場は恐らくドル・ロング(ドルの買い持ち)であろうが、今暫く107.50~109.50のレンジを大きく逸脱することは無いであろう。