トランプ大統領が11月19日、20日に上下両院で圧倒的な賛成多数で可決された香港・人権民主主義法案に27日署名し、同案が成立した。
上下両院で可決されたこの法案はトランプ大統領が署名を拒んで拒否権を行使したとしても、上下両院がそれぞれ3分の2以上の賛成で再可決すれば法案は成立することになっていた。
同法案が成立して米国が香港の人権、自由、民主主義を守る姿勢を明確にしたが、当初トランプ大統領は習近平中国国家主席に遠慮してかその態度は煮え切らないものだった。
そもそもこの法案は与党・共和党のマルコ・ルビン上院議員が主導してとりまとめたものであり、ウクライナ疑惑による弾劾問題で苦境に立つトランプ大統領は大多数で法案を可決した共和党に楯突くわけにはいかないことも事実であろう。
そしてこれに対して中国が猛反発したことには驚かない。
法案成立は“重大な内政干渉で、あからさまな覇権の行使だ。米国が独断専行をやめなければ中国は必ず報復措置をとる。一切の悪い結果は米国が負うことになる。”と強調し、これでは期待されている米中通商交渉における第一段階合意も心もとないと思っていたのだが、市場の認識は違うようだ。
相変わらず株価の上昇が続き、じわじわと円安が進んで昨日の東京市場では一時高値109.72と5月30日以来凡そ半年ぶりのドル高&円安水準を付け、米中問題に関しての楽観的なムードは変わらないかに見えた。
それに冷や水を浴びせたのは再びトランプ大統領の昨日の遠吠えで、ブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼とアルミニュームの輸入に対して追加関税を掛けると表明し、これもFRB.による低金利政策がドル高をもたらして米国の競争力を殺いでいる結果だと八つ当たりして突然リスク・オフとなり、株価は急落しドル・円相場も安値108.93迄急落した。
そもそも米中関係に極めて悲観的な塾長にはこの株高と円安進行が中々理解出来ないのだが、中国がこのまま黙っている事は無く、やはり何らかの報復行動に出て来る可能性は高かろう。
既に米軍艦船の香港寄港を拒否したらしい。
中国政府は来年の台湾総統選挙を控えて香港情勢で弱気には出られまい。
Worst case scenario.=(最悪のケース)で米国による中国政府高官に対する入国禁止や資産凍結、また香港に対しては関税・ビザ発給優遇措置の見直しが行われ、それに対して“極大憤慨”という聞き慣れない言葉で強く非難している中国政府が貿易協議の終了通告や北朝鮮問題で米国に協力しない姿勢への転換、駐米大使の召還などの強硬な報復措置を取る事も考えられる。
今日の東京株式市場では一時役343円安となった日経平均株価は午後1時半現在で約150円安の23,380円まで持ち直し、ドル・円相場もそれにつられて安値108.95から109.20まで戻した。
よく分からない動きだ。
狼少年には成りたくはないが、“恐ろしい事が起きるリスクは其処に在りますよ。”と常に考えておきたい。