総括
停戦合意、経済指標改善、ボリバン上限へ
(先週=政策金利→今週=貿易収支、製造業PMI 通貨最下位、株価12位)
予想レンジ トルコリラ/円 18.5-19.5
(ポイント)
*ロシアがトルコ政府とシリアのクルド族の停戦を仲介
*SDFは撤退
*米銀はISの指導者、バグダディ容疑者の死亡を確認
*政策金利は三たび予想を大きく上回る下げ幅となった
*先週の経済指標は改善
*9月CPIは2017年7月以来の一桁台となった
*イランからの原油輸入は続ける
*経常収支は改善中
*今年はプラス成長に転じるか
*エルドアン大統領は政策金利が一桁台になることを示唆
*来年は5%成長を目指す
*EUとの間で難民問題あり
*観光業は好調
*海外からトルコ国内への投資は増加
*トルコは軍事でよりロシアに接近している
(停戦の合意はロシアが仲介)
米軍のシリア北部からの撤退をきっかけにトルコ軍はシリアのクルド人テロリストへの攻撃を進めたが、停戦の仲介をしたのはロシアであった。ロシアとトルコがシリア北部のクルド人勢力の退去で協力することで合意した。ただまだ小競り合いが続いているという報道がある。
(ISの指導者、バグダディ容疑者が死亡)
トランプ大統領は、米軍がシリアで行った軍事作戦の結果、過激派組織ISの指導者、バグダディ容疑者が死亡したと発表した。
(シリア民主軍(SDF)撤退)
クルド人主体の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」は10月27日、トルコとの国境から30キロ以上シリア側に離れた地点まで撤退することに合意したと明らかにした。シリアのアサド政権はこれを歓迎し、トルコはシリア北東部での「攻撃」を停止すべきだと訴えた。
シリア外務省筋の話として、「トルコが(シリア)領内での凶悪な攻撃の大きな前提」を失うことになるとしてSDFの撤退をシリア政府は歓迎すると伝えた。
トルコとロシアの首脳合意によると、両国の軍は29日から、シリアのトルコ国境から10キロ圏内の地域を共同で警備する見通し。
(政策金利)
トルコ中銀はまたもや予想を超える利下げを決定した。政策金利の1週間物レポレート を2.5%引き下げ、14.0%とした。予想は1.0%の引き下げであった。物価上昇ペースが落ち着いたほか、米国がトルコ軍のシリア侵攻を巡る対トルコ制裁を解除したことでトルコリラが安定し、金融緩和の余地ができた。エルドアン大統領は、持論であるが「中銀の主要政策金利が1桁台になれば、インフレ率は一段と低下する」との考えを示した。また中銀の独立性について、「どのような政策手段をとるかはともかく、目的に関する独立性は認められないとし、その理由として、政府が経済について責任を負っている」ことを挙げた。
(経済指標改善)
先週は10月消費者信頼感指数が前月の55.8から5.70へ、企業信頼感が同じく98.8から100.9へ改善したこともトルコリラを支えた。トランプ米大統領も、停戦でトルコに対する制裁をすべて解除すると発表した。 今週は貿易収支や製造業PMIの発表がある。インフレ低下と他の経済指標の改善、需給的には経常収支の改善が続けば利下げとなってもリラは底堅く推移しよう。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
雲の上維持してボリバン上限へ
日足、10月24日-25日の下降ラインを上抜く。ボリバン上限に近づく。10月22日-28日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。
週足、9月30日週-10月7日週の下降ラインを上抜く。10月14日週-21日週の上昇ラインがサポート。7月29日週-9月30日週の下降ラインを上抜く。
月足、19年5月-7月の上昇ラインを下抜く。19年8月-9月の下降ラインが上値抵抗。8月は陰線であったが下ヒゲを残し9月は上昇。10月は下落スタートも巻き返している。
年足 4年連続陰線、今年も陰線。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
トルコ建国96周年、1923年10月29日
19世紀、衰退を示し始めたオスマン帝国の各地ではナショナリズムが勃興して諸民族が次々と独立した。オスマン帝国は第一次世界大戦で敗北、英仏伊、ギリシャなどの占領下に置かれ、完全に解体された。中でもギリシャは、自国民居住地の併合を目指してアナトリア内陸部深くまで進攻した。これらに対してトルコ人ら(旧帝国軍人や旧勢力、進歩派の人)は1919年5月、国土・国民の安全と独立を訴えて武装抵抗運動を起こした(トルコ独立戦争)。1920年4月、アンカラに抵抗政権を樹立したムスタファ・ケマル(アタテュルク)のもとに結集して戦い、1922年9月、現在のトルコ共和国の領土を勝ち取った。1923年、アンカラ政権はローザンヌ条約を締結して共和制を宣言した。翌1924年にオスマン王家のカリフをイスタンブールから追放し、西洋化による近代化を目指すイスラム世界初の世俗主義国家トルコ共和国を建国した。シャリーアは国法としての地位を喪失した。トルコは大陸法だけでなく、アメリカ合衆国などからの直接投資も受け入れることになった。
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