Brexitの現状と為替相場
英最高裁が「議会閉会は違法」との判決を下し9/25に議会は再開された。議会ではBrexitに関するEUとの協定案について審議再開となるが、今の議会は離脱反対派も多く、一致団結して協定案を纏めようとする姿勢が欠如しており、協定案が議会を通過する可能性は依然として低い状態にある。また仮に協定案が議会を通過した場合でも、アイルランド国境問題の解決策がない協定案であった場合、EUからの承認が得られない可能性が高いことからその場合は、イギリスはBrexitの期限を来年1月末までさらに延長するか、合意無き離脱に突入するかの二者選択となる。EUが認めるBrexit延期の場合は猶予期間が生じて足元の為替市場が落ち着きを取り戻す可能性があるが、“合意無き離脱”に突入した場合は、アイルランド国境における通関問題、物流の混乱、景気への影響などの懸念材料が一気に表面化してポンドはさらに売り込まれる可能性が高くなるし、また、離脱延期の場合でも3ヶ月でEUとイギリスが協定案に合意できるかは不透明であることから、引き続きポンドはポジション調整的な戻しがあっても大幅なポンド反騰には繋がらない可能性が高く、下落リスクにより警戒する必要がありそうだ。
短期は戻り高値を付けて反落
チャートを見ると、日足は7/25に付けた135.67を起点として上値を切り下げて来た流れから9/5の日足が上抜けて上値トライの動きが強まったが、9/20に付けた135.75を直近高値として反落、上値を切り下げ始めている。現状は132.53に位置する21日移動平均線を守って調整下げの範囲内に留まっているが、7/25の135.67との二番天井となった可能性が生じており、また、120日、200日線の下に入り込んでおり、中期トレンドも弱い状態にあることから、下値リスクにより警戒する必要がある。132円割れで終えた場合は一段の下落リスクに要注意。但し、128~130円ゾーンに強い下値抵抗が散在しており、調整的な押しに留まるならこれを大きく割り込まない可能性が高い。短期トレンドは“ポンドやや弱気”の状態にあるが、135.80超えで終える事が出来れば“ポンドやや強気”に変化して一段の上昇に繋がり易くなる。逆に128円割れで終えた場合は、調整下げの可能性が消滅、126円割れで終えた場合は、新たなポンド下落トレンド入りの可能性が高くなる。
(日足)
中期は“ポンド安/円高”に変化なし
週足でもう少し中期的なトレンドを見ると、2018年2月に付けた156.61を起点として上値を切り下げる流れの中にあり、長期トレンドは145円超えで越週しない限り、ポンド弱気の流れに変わりない。また、2019年3月に付けた148.88を起点とする中期トレンドラインの上値抵抗が139円台にあり、中期トレンドもポンド安の流れを変えていない。さらに、2016年10月に付けた124.85と今年1月にアジア市場で付けた133.89を結ぶ長期的なサポートラインを、7月第3週足が完全に下抜けており、このレジスタンスラインの上値抵抗が137円台にあることや、今回の反発局面でもこれに到達できずに反落しており、中期トレンドは非常に弱い状態にある。この週足の上値抵抗は137.30~137.80にあり、これをしっかり上抜けて越週するまでは下値リスクにより警戒する必要がある。また、31週、62週移動平均線は138.20と141.08に位置しており、中期トレンドは“ポンド弱気”の流れに変化が認められない。
(週足)
長期トレンドもポンド安/円高の流れ
最後に月足で長期的なトレンドを見ると、2015年6月に付けた195.88を起点とする長期的なポンド安の流れは変わらないが、2011~2012年に付けた116~118円台は超長期的な下値抵抗ポイントであり、ここでは大底を見た可能性が高い。この下値抵抗は9月現在130円近辺にあり、月足の終値ベースでは何とか守った状態にある。しかし2016年4月に付けた124.85を起点とする中期的なサポートラインを下抜けた位置で推移しており、140円台を回復して越月するまでは中・長期トレンドは大きく変化しない。また、126円割れで越月した場合は一段の下落リスクに注意が必要となる。
(月足)
外国為替ストラテジスト
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤の1980年より、テクニカル分析の第一人者、若林栄四氏の下でテクニカル分析を研究、習得する。同行退職後、1998年まで在日米銀などでカスタマー・ディーラーや外国為替ストラテジスト、資金為替部長を歴任。現在は外国為替ストラテジストとして、テクニカル分析に基づく為替相場レポートを発信中。各種メディアへの出演も多数。