昨日の海外市場でドル円は、高市政権の積極財政姿勢を背景とした財政悪化懸念から円売りが出やすく、6時前には一時155.75円と日通し高値を更新した。ユーロドルは、欧州市場序盤には一時1.1703ドルまで下落したものの、NY市場では買い戻しが目立った。
本日の東京時間でのドル円は、本日から始まり明日結果が公表される日銀の金融政策決定会合の結果や、NY時間の11月米消費者物価指数(CPI)発表を控え神経質な動きになると思われる。昨日のドル円は米株の下落にもかかわらず、ドル高・円安が進んだが、ポジション調整の動きが強く、この地合いが継続すると考えるのは時期尚早だろう。
日銀の金融政策決定会合については25ベーシスポイントの利上げは織り込み済み。注目は今後の金融政策の展開を植田日銀総裁がどのように説明するかになる。
市場は2022年4月以後すべて、日銀の目指す2%の物価安定を超えるインフレ率(生鮮食品を除くコア指数)に達していたのにも関わらず、利上げ回数が限られていたことで、これまでは、来年以後も利上げスピードは緩やかとの認識が強かった。しかし、ここ最近の植田日銀総裁の会見で来年以後の継続利上げの予想も出てきている。本日の日経新聞でも「利上げ後も市場に『打ち止め感』が広がらないように配慮する」と報じている。
植田総裁は、現在は1.0%から2.5%の間に分布していると幅を持たせている中立金利について、11月4日の参院財政金融委員会では狭めることはできれば公表したいと述べた。また、12月1日の会見でも「もう少しはっきりと明示したい」と言及していることで、中立金利については否が応でも注目度が増している。ただ、中立金利については日銀内ではまとまりにくく、曖昧な姿勢のままになるのではないかとの予想が多い。
一方で、実質金利の算出方法のインフレ率基準を、これまでの日銀の予想物価から消費者物価指数(CPI)に置き換える発言をしていることは、追加利上げの布石となる発言とも捉えられる。高市首相は、昨年9月にはインフレが進んでいたにも関わらず「金利を今、上げるのはあほやと思う」と非難していた。しかし、10月28日の日米財務相会談で米国から利上げ圧力をかけられたことで、「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべき」とトーンダウンした。金融政策への言及を避けているのは、利上げは本意ではないものの、米国の圧力を受けて利上げを容認し、仮に景気に悪影響を与えたとしても、その責任を日銀に押し付ける姿勢を取っているとも一部では噂されている。
なお、上述のように米国からは米政府機関の閉鎖の影響で延期されていた11月CPIのほか、雇用関連含め複数の経済指標が発表される。また、欧州時間には欧州中央銀行(ECB)定例理事会、英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)が結果を発表することで、アジア時間よりも欧米時間に相場展開が急変するリスクが高そうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
