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【市場概況】東京為替見通し=FRB・BLSの後任人事に注目、米指標信頼性失いインフレ低下も

昨日の海外市場でドル円は、欧州市場では148.09円まで値を上げたものの、前週末に発表された7月米雇用統計の弱さを受けて米早期利下げ観測が高まる中、次第にドル売りが優勢となり一時146.87円と日通し安値を更新した。ユーロドルは新規材料に乏しい中、米金利動向を睨みながらの狭いレンジ内(1.15ドル半ばから後半の間)での値動きに終始した。

 本日の東京時間でのドル円は、国内外からはイベントが少ないものの、先週末の雇用統計のダブルショック(大幅な下方修正と局長解任)で、引き続きドルの上値が限られるか。

 本日は中国から7月のCaixinサービス部門購買担当者景気指数(PMI)が発表されるものの、市場への影響は限定的となるだろう。市場の注目は、先週発表された米雇用統計について米連邦準備理事会(FRB)関係者がどの程度、FRBの2大責務(物価の安定と雇用の最大化)のうちに雇用を重視する方向に傾くのかが注目される。しかし、アジア時間では発言が伝わる時間帯ではないことで相場の主導権が米国市場入り後になりやすそうだ。また、米政権による新たな人事(FRB理事と労働省労働統計局・Bureau of Labor Statistics=BLS局長)についての報道なども、市場を動意づける要因になるので警戒したい。

 人事指名の1つ目は8日に辞任するクーグラーFRB理事の後任。昨日トランプ大統領は数日以内に候補を発表すると述べている。FRB理事は任期が14年もあることで、今後の米金融政策に大きな影響を与えることになる。すでに7名の理事のうち2名(ボウマンFRB副議長とウォラーFRB理事)はハト派だが、今回の後任もハト派理事が指名されることは確実で、これでFRB理事は3名がハト派になる見込み。来年5月にFRB議長の任期が満了するパウエルFRB議長が、議長退任とともに理事職も辞すれば過半数がハト派になる可能性が高まる。

 2つ目は週末に解任されたマッケンターファーBLS局長の後任人事。ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は「大統領は自分の部下をそこに置きたい」と主張しているように、政策立案や経済のさまざまな側面の指標として利用されている統計が政治化される可能性がある。ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン氏は、今後は統計局の数値を信じることができなくなると批判しているように、今後はBLSが発表する経済指標は透明性と信頼性を失いそうだ。BLSは雇用統計だけでなく、消費者物価指数(CPI)も発表することで、雇用指数は良好でもCPIは低下する結果になり、FRBに一層の利下げ圧力をかけることになりそうだ。なお、個人消費支出(PCE)は商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis=BEA)が発表することで、CPIとPCEの結果にかい離が生じる可能性も出てきそうだ。

 なお、ブルームバーグの5日付の記事(インタビューは1日)で、三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤社長が、日銀が9月か10月の金融政策決定会合で次の利上げを決める可能性が「十分にある」との見解を示したと報じている。海外投資家が、このような記事で円買いを仕掛けることもあり注意しておきたい。


(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ