昨日の海外市場でドル円は、米金利低下に伴う円買い・ドル売りが先行し一時153.63円付近まで下押しした。ただ、ベッセント氏が米メディアとのインタビューで示した「大型減税などが一番のプライオリティである」「ドルは世界の基軸通貨としての地位を維持していく」との見解をドル高容認と受け止める向きもあり、154.52円付近まで持ち直した。ユーロドルは一時1.0530ドルと日通し高値を付けたものの、2時前には1.0467ドル付近まで押し戻された。ただ、米2年債入札をきっかけに米長期金利が低下幅を拡大すると再び強含んだ。
本日の東京時間のドル円も154円台でのもみ合いになりそうだ。昨日の東京時間は、週末にベッセント氏が次期トランプ政権の財務長官に指名されることが発表されたことで、財政赤字の削減を目指す期待感が高まり、米金利低下でドル売りとなった。同氏は2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比3%に削減することを含めた、「3-3-3」と呼ぶ政策を推進する政策を提唱している(他の「3」は日量300万バレル相当の原油増産、GDP成長率3%の実現)。
ただし、財政規律がある程度守られるとの憶測があるものの、同氏は「政策上の優先事項はトランプ大統領のさまざまな減税公約を実現すること」と述べているように、米国の財政赤字が急速に減少するのを期待するのも難しいかもしれない。米商務長官には財務長官の最有力候補であったラトニック氏はじめ、多くの政権スタッフには国内での大幅減税と他国への高関税というトランプ次期大統領の意向を組んだメンバーで固められ、財務長官もトランプ氏の意向を組んだ政策を推し進める可能性が高い。
昨日のNY時間でも米債は買われ、米金利が低下したが、今週は28日木曜日から米国は感謝祭休場になることで、米債市場は通常よりも早めに、過度に反応していることが低下幅を広げたともいえそうだ。また、ユーロ圏の景気指標が大幅に悪化し、明日のNZ準備銀行(RBNZ)・金融政策委員会(MPC)では大幅な利下げが予測されているなど、対円以外ではドル買い意欲が根強いこともドル円の支えとなりそうだ。
一方、ドル円の上値も限られている。上述のように米金利が低下していることに加え、12月の日銀政策決定会合での利上げの可能性もドル売り・円買い要因になる。昨日のオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では12月利上げが50%を上回るなど、昨年12月のように日銀がタカ派に傾くことを期待する声が多い。この流れは、本邦の経済指標が利上げを促すほどの結果になっていないのにも関わらず、植田日銀総裁の発言がタカ派に傾いたのは、総選挙が終わったことで石破政権も利上げを容認しているとの憶測もある。他中銀の利下げ路線にかかわらず、日銀が利上げを行えば、中銀間の方向性の違いがドル円の重しになりそうだ。
様々な憶測が流れる中で、本日は大きな値動きを期待するのが難しいのは、明日以後に多くのイベントを控えていること。上述のようにアジア時間にはRBNZのMPCだけでなく、豪州からは10月の消費者物価指数(CPI)が発表される。また、米国からは10月の個人消費支出(PCE)デフレーターが発表されることもあり、相場は明日までは大きくトレンドを作るのは難しそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
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