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人民元見通し「香港株の持ち直しと中欧金利差の逆転を考慮したトレード戦略」FXレポート 2022/11/15

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本では情報の少ない人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第17回は「香港株の持ち直しと中欧金利差の逆転を考慮したトレード戦略」といたしまして、相場見通しとトレード戦略をお伝えいたします。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.香港株の持ち直しの動きに注目
3.金利差が示すのは人民元安、ユーロ高
4.人民元は対ドル、対円ともに見極めの時間帯に

1.人民元相場の定点観測

まずは簡単に直近の人民元の動きを振り返っていきます。

人民元相場の変化
出所:Investing.com

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(2022年10月17日)と比べて1,523 Pips下落し1ドル=7.0560人民元となりました。

10月下旬まではドル高、人民元安が進み、現在の通貨制度である「管理変動相場制」へと移行して以後の最高値7.3750を記録しました。ところが、その後は日銀の為替介入などドル高に対して各国政府の政治的介入が入る中で徐々に上値を切り下げ、最終的には米10月CPI(消費者物価指数)の鈍化を受けたドル売りにより大きく下落してしまいました。

CNH/JPYも前回の寄稿時と比べて0.84円下落し、1人民元=19.79円となっています。ドル円の上昇につれて一時は20.90円の史上最高値を記録したのですが、日本政府による為替介入が実施されると上下動を繰り返しながらも次第と上値が重くなり、現在までじり安の展開が続いています。

2.香港株の持ち直しの動きに注目

さて、人民元をトレードする上で必ず押さえておきたいポイントがいくつかあります。そのうちの1つが「香港株」です。

香港株式市場には多くの中国本土企業が進出しています。そのため香港株式市場は中国に対する投資家心理を色濃く反映した市場と言えます。

今年は世界の株式市場全体が軟調に推移していますが、その中でも香港株は日本や米国、中国と比べてさらにアンダーパフォームしていました。

ところがここにきて香港株は急反発しています。

各国の株価比較
各国の株価比較 緑:香港ハンセン、青:米S&P500、赤:上海総合、ピンク:日経平均株価
出所:Investing.com

私は、これは先日に公表された中国中央政府による地方政府の行き過ぎたコロナ対策を是正するルール「九不准」が影響していると考えています。「なっとく豪ドル見通し」2022年11月8日寄稿にて詳しく解説していますので詳細はこちらをご参考ください。

徹底したゼロコロナ政策にて国民の命を守る方針と、併せて経済面での再開を狙った「九不准」、これが短期的に香港株式市場を支えるとすれば、人民元も底堅く推移すると思います。

したがってこのリバウンドがどこまで続くのか、本流となるのか、ここは1つの大きな注目点となります。

3.金利差が示すのは人民元安、ユーロ高

さて人民元を見ていくうえで特に重要なのは金利差(≒スワップポイント)です。なぜなら人民元は通貨設計の思想上、変動率がある程度抑えられており、ゆえに金利差に注目が集まるからです。

こういった中で2022年3月下旬から発生した米中金利差の逆転は、足もとに至るまで、USD/CNH相場を一方向のドル高、人民元安へと導きました。そして今もう一つの金利差逆転が発生しようとしています。それが中欧金利差(欧州は複数国で構成されるためドイツを参照)の逆転です。

各国の2年債利回りの比較
各国の2年債利回りの比較 緑:中国、青:米国、黄土色:ドイツ、赤:日本
出所:Investing.com

現時点では中国の利回りと同水準までドイツ利回りが上昇していることが見て取れると思います。しかも2022年10月のユーロ圏の消費者物価指数は年率で+10.7%ですから、ECBが追加で引締め的な政策を採るであろうことを考えると、中欧金利差の逆転が起こる可能性は高いと思いです。

したがってこれが少なくとも人民元売り、ユーロ買い圧力に繋がってくると見ています。さらに言えばユーロは世界二位、人民元は世界4~5位の通貨取扱量がありますから、こうしたメジャー通貨間での力関係の変化はその他の通貨市場への影響も大きい、すなわち単一通貨としての人民元安材料、ユーロ高材料になりうると見ています。

この点も加味して外国為替市場を見ていくとよいでしょう。

4.人民元は対ドル、対円ともに見極めの時間帯に

対ドルはしばし様子を見たいと考えています。人民元の金利低下に一服の兆しがみられており、且つ米金利の上昇にも陰りが見え始めてきたからです。

そこに加えて香港株の持ち直し動きも見られています。どちらに攻めるか読みづらいところがありますので、積極的にトレードするならばレンジを想定して機械的に上で売り、下で買いを選びます。

USD/CNH 4時間足チャート
USD/CNH 4時間足チャート 出所:Investing.com

レンジは6.98~7.37を想定します。現在の水準は大分と下、つまりドル安水準にきましたので、一旦は押し目買いも狙っていけそうです。

CNH/JPYも今は動向を見極める方針です。

直近3カ月の動きでは下押し圧力が優勢です。ですが日本で為替介入もあって過度に円高に振れ過ぎた可能性も見ておいた方がよいでしょう。目先は反発優勢になると見ています

CNH/JPY 4時間足チャート
CNH/JPY 4時間足チャート/外貨ネクストネオ

ですがファンダメンタルズに基づいて考えてみると、香港株が強い点はプラス材料ですが、人民元金利の絶対水準が低いこと、またユーロ金利が人民元金利を上回るであろうことなどを考慮すると、状況をしばし見極めた方が無難なように思います。

日米の金融政策、中国株の動向、中国金利、ドイツ金利などを総合的に見て判断しようと思います。

以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

【「FX実力アップ教室」はこちら】

【「なっとく 豪ドル見通し」はこちら】

【「プロが解説 人民元見通し」はこちら】

 
株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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