読む前にチェック!最新FX為替情報

読む前にチェック!
最新FX為替情報
CFD銘柄を追加!

スプレッド
始値比
  • H
  • L
FX/為替レート一覧 FX/為替チャート一覧 株価指数/商品CFDレート一覧 株価指数/商品CFDチャート一覧

FX/為替予想「対日本円で高値を更新し続ける人民元とどう向き合うべきか?」プロが解説 人民元見通し 戸田裕大

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本では情報の少ない人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第13回は「対日本円で高値を更新し続ける人民元とどう向き合うべきか?」といたしまして、相場見通しをお伝えいたします。

結論から申し上げますと、対米ドルではドル高を、対日本円では人民元高を想定していますが、順に見ていきましょう。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.人民元を取り巻く環境
3.対ドルはレンジ切り上げ、対円はじり高を想定

1.人民元相場の定点観測

人民元相場の変化
人民元相場の変化

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(6月21日)と比べて530Pips上昇しました。引き続き4月後半から長らく続いている6.60~6.80レンジの範囲内ではありますが、ドル高の勢いが強く、上を試している状況です。

CNH/JPYはこの間、0.29円上昇しました。ドル/円の力強い上昇に連れ高となった格好です。なお現在の水準20.45円は2005年7月に中国が管理変動相場制(管理しつつも基本的には市場の需給に委ねる)へと移行してから、現在までの最高水準です。円安人民元高のトレンドは根強いと言えます

2.人民元を取り巻く環境

現在の相場のテーマは「ウクライナ戦争」「高止まりする資源価格」「グローバルなインフレ」「各国の金融政策の変化」、これらを受けた「ドル高と円安」と考えています。

このような中で人民元の位置づけは日本円に近いです。中国のエネルギー自給率は80%前後と見られており日本(2020年で11%前後)と比べれば高いものの、それでも資源高は資源輸入国である中国経済に負荷が掛かりますし、金融緩和に舵を切らざるを得ない状況は日本に近いと言えます。

それから非常に重要なファクターなので毎月とり上げていますが、米中金利差が逆転しており、米ドル高圧力が加わるのはある種、必然の状況となっています。このような状況下では、少なくとも対米ドルに対しては、大きな人民元高は望めない状況と言えます

米中金利差の推移を表すグラフ/Investing.com, Iborate.com よりデータ取得し筆者作成
米中金利差の推移を表すグラフ/Investing.com, Iborate.com よりデータ取得し筆者作成

また中国の外貨準備高が減少に転じています。ドル高が進んでいるにもかかわらず外貨準備高が減少しているということは、おそらくは通貨当局が為替介入を実施して、ドル高の勢いを抑えているからでしょう。それほどまでに現在のドル高圧力は強いと見ることができます

中国の外貨準備高の推移を表すグラフ/Investing.comよりデータ取得し筆者作成
中国の外貨準備高の推移を表すグラフ/Investing.comよりデータ取得し筆者作成

では人民元が対米ドルで買い戻される理由はないのか?とみていくと、真っ先に挙げられるのは米国の対中国関税の引き下げ議論です。バイデン米大統領の発言を追っているとややトーンダウンした印象も受けますが、国内のインフレ圧力が高い今の状況なら対中関税を見直す機会は残されていると考えます。

それから中国内の経済指標に持ち直しの動きが見られている点も、人民元にポジティブな材料と言えます。中国の購買担当者のマインドを図る景気指数は2カ月連続上昇となり基準の50を上回っていますし、小売売上高も同じく2カ月連続上昇し絶対値も悪くない水準まで戻してきています。

米中の購買担当者景気指数を表すグラフ/Investing.comよりデータ取得し筆者作成
米中の購買担当者景気指数を表すグラフ/Investing.comよりデータ取得し筆者作成

中国の小売売上高を表すグラフ/中国国家統計局よりデータ取得し筆者作成
中国の小売売上高を表すグラフ/中国国家統計局よりデータ取得し筆者作成

さらに為替レートへの影響度の高い貿易についても2カ月連続上昇。こちらも絶対値としても直近では最高に近い水準になっています。

中国の貿易量を表すグラフ/中華人民共和国海関総署よりデータ取得し筆者作成
中国の貿易量を表すグラフ/中華人民共和国海関総署よりデータ取得し筆者作成

このように日本と比べれば中国のファンダメンタルズは良好ですので、そこまで大きくは崩れないように思いますが、それでもドル高圧力に引きずられてしまっているというのが現在の正しい状況把握かと思います

3.対ドルはレンジ切り上げ、対円はじり高を想定

対ドルは4月後半から6.60~6.80のレンジ推移が続いています。現在はレンジの上限付近に位置し、また米ドルが買われやすい状況を考慮すれば、レンジ切り上げの可能性が高いと判断しています。

厳密には6.82を超えると明確な高値更新となるので、その後に買いでエントリーする、これが一つのトレードアイデアです。もしくはレンジの上限で一旦は売りから入って行く戦略も考えられますが、現在のファンダメンタルズを考慮すれば、どこかで上抜けするように思いますので、個人的には前者のトレードアイデアで相場と対峙する方針です。

USD/CNH 日足チャート/ Investing.comより
USD/CNH 日足チャート/ Investing.comより

対円はドル/円を見ながらの取引を推奨しますが、CNH/JPYだけでみれば20日の移動平均線がサポートとして機能しているようにも見えますので、参考にして良いと思います

歴史的な高値をじわりと更新していますので、基本的には買いで入っていき、しばらくの間は保有するというのが基本戦術となります。人民元金利が低下したとは言え、対日本円ではスワッポポイントも付きますのでその点でも買い持ちから入って行くのが勝ちやすいはずです。

CNH/JPY 日足チャート/オレンジ線が20日移動平均 /外貨ネクストネオ
CNH/JPY 日足チャート/オレンジ線が20日移動平均 /外貨ネクストネオ

以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。

戸田裕大


<参考文献>
文中に記載


<最新著書のご紹介>

不安定な金融情勢の今、資産を増やす・守るために投資すべき金融商品、銘柄、通貨とは?
元・在中国 金融アナリストがチャイナ&世界情勢から読み解く

【インタビュー記事】

【「FX実力アップ教室」はこちら】

【「なっとく 豪ドル見通し」はこちら】

【「プロが解説 人民元見通し」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
●免責事項
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。