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FX/為替予想「米中金利差の逆転で再び意識される人民元安」プロが解説 人民元見通し 戸田裕大

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本では情報の少ない人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第12回は「米中金利差の逆転で再び意識される人民元安」といたしまして、相場見通しをお伝えいたします。

結論から申し上げますと、現在のレンジ水準を意識しつつも、基本的には人民元安を想定しトレードしていく方針です

順に見ていきましょう。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.米中金利差の逆転はドル高・人民元安要因
3.経済指標も芳しくなく緩和は長引きそう
4.対ドルはレンジ想定、対円は押し目買い

1.人民元相場の定点観測

まず簡単に足元の人民元相場を振り返ります。

人民元相場の変化
人民元相場の変化

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(5月17日)と比べて997Pips下落しました。急激なドル買いが進んでいましたが、5月13日に6.8386の高値をつけたあとは6月3日に6.6178の安値をつけ、現在はこの2点をレンジの上下限として推移しています。

USD/CNH 日足
USD/CNH 日足

CNH/JPYはこの間、1.18円上昇しました。ドル円が5月中旬から下旬にかけて調整し下値を試す中でCNH/JPYは一時18.70円レベルまで下落しましたが、5月末からのドル/円の反発に連れて再び20円台を超える水準まで上昇しています。

CNH/JPY 日足
CNH/JPY 日足

2.米中金利差の逆転はドル高・人民元安要因

米国が急ピッチの利上げへと舵を切る一方で、中国は緩和的な金融政策を継続しており、両国間の金利差が急速に縮小しています。

金融市場で取引される金額の大きい3ヵ月の金利で比較してみると既に米国の金利水準が、中国の金利水準を上回っていることが見てとれました。

3M USD LIBOR と 3M CNY SHIBORを参照して筆者作成
3M USD LIBOR と 3M CNY SHIBORを参照して筆者作成

これは人民元のスワップポイントが対ドルでマイナスに転じてくることを意味します。特に人民元はその通貨管理制度上、ある程度ドルに連動しやすいこともあって、ことさらにドルとの金利差が意識されています。したがって米中金利差の逆転は大きな人民元安要因と言えます

またドル金利が上昇することによって先物市場のドル価格は低下します。詳細な計算は省きますが、為替の先物市場では高金利通貨の運用益を加味した価格形成が成されるためです。ドルの先物が安いのであれば、現在のドル高・人民元安の相場状況において、なおさら人民元を売ってドルを買うリスクヘッジ取引が行われる可能性が高まります。これも副次的な人民元安要因と言えます

3.経済指標も芳しくなく緩和は長引きそう

中国では2022年6月1日より上海のロックダウンが解除され、また新型コロナウイルスの感染状況も落ち着いたことで、少しずつ経済活動が元に戻ってきていると聞いています。他方でロックダウン中の経済指標を眺めてみるとやはり影響が少なくないように見えます。

購買担当者へのアンケート調査であるPMIは基準の50を下回っており、また21年からじりじりと低下傾向にあることも気になります。米国と比べても弱く、先行きの景気に不安が残ります。

中国と米国のPMI
中国と米国のPMI


また経済活動の勢いを示す鉱工業生産の伸びもあまり芳しくありません。前年同月比で2022年4月は▲2.9%、5月は+0.7%とそれぞれ弱い数値が続いています。

中国の鉱工業生産
中国の鉱工業生産

その他、小売や貿易に目を通してみても、多少持ち直しの動きがみられるものの、あまり力強いものではありません。

こういった経済活動の状況と、あまり高くない国内のインフレ圧力を考慮すると、中国は引き続き緩和的な政策を採るでしょう。したがって、ことさらに米国の金融政策との対比が意識される展開になりそうです

4.対ドルはレンジ想定、対円は押し目買い

対ドルですが、6.60~6.80をコアレンジと想定しています。ドル高・人民元安の材料は多いですが、一方で米国の金融引締めも2023年前半までに4.00%弱まで引き上げるシナリオがある程度共有され、材料の出尽くし感もありますので、まずはレンジ想定としています。

方向感で言えばこのレンジを上抜けるイメージですが、このあたりは今後発表される米中の経済指標を細かくみていく時間帯になると考えています。したがってまずはレンジの下で買い、上で売り、このオペレーションのパフォーマンスが良いと考えます。

USD/CNH 日足
USD/CNH 日足

対円は押し目待ちの方針です。意見の分かれるところではありますが、私は円買いの為替介入を警戒していますので、下がったところを買うのが無難と考えています。

人民元が対ドルで急激に強まることは考えにくいので、ドル円さえ下落すれば十分に押し目のチャンスはあります。目安は18.70円から20.20円を結んだ、フィボナッチの38.2%戻しである19.63円あたりを目安としたいと思います。

CNH/JPY 日足 ピンクの丸が押し目の目安
CNH/JPY 日足 ピンクの丸が押し目の目安

丁度、直近の安値を更新するレベルですので、ストップロスも概ね引っ掛かるでしょうから、その後に買っていくのは勝率が高いと思います。

問題はそこまで下落しない可能性も高いことです。その場合には私は無理せず様子見すると思います。

以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。


戸田裕大


<参考文献>
各種為替データ:
CNH/JPY:外貨ネクストネオ
USD/CNH:investing.com

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【「なっとく 豪ドル見通し」はこちら】

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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