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FX/為替予想「ドル円相場の変動要因を把握し、相場観の形成に役立てる」元大手邦銀ディーラーが教える FX実力アップ教室  戸田裕大

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、新人トレーダー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策を通じて、読者のみなさまの実力UPに役立つ内容をご報告します。

第18回目は「ドル/円相場の変動要因を把握し、相場観の形成に役立てる」です。

このテーマに決めた理由は、SNS等を通じて、「相場観を形成するのが難しい」「相場観をどのように養ってよいか分からない」と言ったご意見を頂戴したからです。なぜ難しいのか?掘り下げて考えてみると、相場の変動要因を正しく理解していないことに起因しているのではないかと考えました。相場の変動要因の理解がすっぽりと抜けていれば、相場観を持つことは出来ません。

そこで本日はFXの中で最も馴染みのある通貨ペア、「ドル/円」の変動要因の把握を通じて、ドル/円の相場観を持てることを目標にしたいと思います。

目次

1.実需に基づくドル/円の動き
2.投機に基づくドル/円の動き
3.まとめ

1.実需に基づくドル/円の動き

1つ目の変動要因は、「実需」と呼ばれる、実際の需要に基づく売買のことです。具体的には以下のような取引が実需に該当します。

● 日本人が海外旅行に行くための両替
● 外国人が日本を訪れて日本円で買い物をするインバウンド
● 日本企業や個人の輸出入取引
● 海外企業とのサービス契約
● 海外子会社からの配当金、日本子会社からの配当金
● 海外企業との投融資取引

これらをリアルタイムで把握するのは難しいです。ですが過去の数値は公表されており、財務省が毎月公表する「国際収支統計」に全て記載されています。ですからまずは国際収支統計を正しく見ることが重要です。

添付の棒グラフは国際収支統計を構成する「経常収支」と呼ばれる項目で、特に実需取引が多く記載されており、この数字が黒字であるか赤字であるかが、中長期的なドル/円相場に大きな影響を与えます。実際に見てみると長らく黒字であった日本の経常収支が2022年1月に赤字へと転落していることが分かります。

日本の経常収支
日本の経常収支/財務省よりデータ取得し筆者作成

日本の経常収支が赤字に転じ始めていると言うことは、貿易やサービス、配当金などを通じて日本の海外との取引が赤字化し、日本の外貨支払いが多くなっているということです。

特に貿易の赤字が目立ちますが、これは商品市況、すなわち原油価格などが上昇したことで海外への輸入代金支払いが多くなったことが主因です。ロシアによるウクライナ侵攻後の世界では資源価格が高止まりしていますが、これが円安の大きな要因になっているということです。

もう一つは第一次所得収支が悪化していることです。これは日本企業の海外子会社からの配当が少なくなっていることを示唆しています。つまり海外での競争が激化している可能性があります。もちろん単月の数値を切り取って判断するのは時期尚早ですが、傾向として黒字幅が減ってきているのは見逃せないポイントです。

このように日本の受取が少なくなり外国への支払いが多くなると、円を売って、外貨を買う取引が多くなります。したがって構造的にドル高円安へと動きやすくなるわけです。

これが今回の円安が根深いのではないか?と言われる大きな要因です。日本の実需構造を抑えることで、円安が傾向として続きそうなことが見えてきます

2.投機に基づくドル/円の動き

次に投機の動きをみていきます。

投機の動きに特に影響を与えるのが「日米の金融政策」です。緩和的な金融政策は通貨安に、引締め的な金融政策は通貨高に作用します

では日米の金融政策はどのように決まるのでしょうか?

まずは「景気」が中央銀行の政策に影響を与えます。景気が悪い場合には緩和的に、景気が良い場合には引締め的な政策を行うことで、中央銀行が金融面で経済をコントロールします。

また「インフレ」も政策に影響を与えます。インフレが上昇してくると引締め的な政策を採らざるをえず、逆にインフレが低下すれば緩和的な政策を採ることができます。

緩和と引締めは、「金利」と「通貨供給量」を調節することで行われています。利上げや利下げ、量的緩和や量的緩和の縮小と言った用語で表されます。

日本は景気が悪く物価上昇圧力が低いので緩和的な金融政策を採り続けていますが、米国は景気がよく物価上昇圧力が強いので引締め的な金融政策へと舵を切っています。これが直近のドル/円の大きな上昇要因になっています

また市場参加者の心理や予測、織り込み、期待も投機に影響を与えます。年初来の高値や安値などのチャートポイントや、CMEのFEDウォッチツール(シカゴ・マーカンタイル取引所が公開している将来の米金利水準の織り込みをビジュアル化した表)などはここに該当します。

ここで大事なことは市場参加者の心理や予測だけを頼りに値動きを推測すると、本質を見誤り、大きな方向感やトレンドを無視してしまうことになりかねないことです。市場参加者の心理や予測は大切ですけれども、それだけで相場は動いておらず、むしろ方向感やトレンドはそれとは別の理由で形成されていることが多い点に留意が必要です。

3.まとめ

実需と投機(金融政策、投資家心理)に分けてお伝えしました。

ずっとチャートを見ているとチャートがドル/円レートを作っているような感覚に陥りますが、それはまやかしに過ぎません。実需や投機の動きがドル/円のチャートを形成しています

ですからチャートから離れて、なぜいまドル円は上昇しているのか?これからも上昇していくのか?と考えることもとても重要なことです。

なぜそうなるのか?と一つ一つの出来事を深堀して、ドル円が上昇している理由を考えていくことで、相場への理解を格段に深めると共に、大きなトレンドを捉えられるようになります

FXは株と違い実需の取引があり、また最低でも2通貨の特徴を抑えないといけないので変数は多いです。ですが世界でもっとも流動性の多いプロダクトであり、且つ世界経済や政治に精通することが出来ますので、順を追って1つずつ理解を深めていけばきっと役に立つと思います。

引き続き、一緒に相場を見ていきましょう。

それでは本日はここまでとなります。

戸田裕大

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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