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FX/為替予想 【人民元FX】上海のロックダウンを警戒しつつ実弾介入があれば押し目買い「プロが解説 人民元見通し」戸田裕大

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本ではまだまだ情報の少ない中国経済や人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第10回は「【人民元FX】上海のロックダウンを警戒しつつ実弾介入があれば押し目買い」といたしまして、相場見通しをお伝えいたします。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.米中金利差の縮小は大きなドル高・人民元安要因
3.上海ロックダウンの影響は限定的もリスク要因として認識
4. ドル円は実弾介入が入るまで上を目指すのではないか
5. 対ドルでは人民元高を想定も、対円は横ばいを想定

1.人民元相場の定点観測

本文

まず簡単に足元の人民元相場を振り返っていきましょう。

<USD/CNH(ドル/人民元)日足>
2022年4月18日の為替レート:1USD = 6.3835CNH

USD/CNH(ドル/人民元)日足

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(1月前)が1USD = 6.3639CNHでしたので、そこから200Pipsほどドル高、人民元安に動いたことになります。後ほど詳しくご説明しますが、上海のロックダウンや、預金準備率の引き下げ、米中金利差の縮小などが嫌気された格好です。

<CNH/JPY(人民元/日本円)日足>
2022年4月18日の為替レート:19.84円

CNH/JPY(人民元/日本円)日足

CNH/JPYは1月前と比べて1.32円上昇しました。まったく止まる気配はなく、大台の20円台へまっしぐらといった状況です。背景にはドル円の急ピッチの上昇があります。

2.米中金利差の縮小は大きなドル高・人民元安要因

これはとても重要なのでほぼ毎月お伝えしているのですが、人民元相場を見ていく上でとても重要なファクターが「米中の金利差」です。人民元はそれ単体の要因でも動くのですが、ある程度は米ドルと連動するように(通貨バスケットと呼ばれるレート調整弁の2割程度に)設計されていますので、米中金利差はとても重要になります。なぜならば市場参加者はある程度、米ドルと人民元が似たような動きをする傾向があることを知っているので、どうせなら高金利の通貨で運用したいからです

アメリカが利上げに向かう一方で、中国の金融政策は引き続きやや緩和的とあって、ここにきて米中金利差が一気に縮小しています。

米中の金利差(中国3カ月物・米国3カ月物)

※人民元金利は横ばい推移であるが、米金利は上昇しており、結果として米中金利差は縮小している

投資家にとって、人民元投資の大きな魅力の一つは他の先進国対比で高金利なことです。ですから米ドルと人民元の金利が近づけば近づくほどに人民元の魅力は薄れていくことになります。ゆえに米中金利差の縮小は人民元売り圧力に繋がる可能性が高いので警戒しておきましょう。

また中国の物価上昇圧力が徐々に和らいできていることも人民元の金利低下要因となります。

中国3月物価指数

特に「川上」とも呼べる生産者物価が落ち着いてきており、であれば中国は引締め的な運営をする必要はありませんので、景気を下支えすべく、金融緩和的な運営を続ける可能性が高いと考えます。

実際に今月15日に預金準備率と呼ばれる民間金融機関の中央銀行に対する準備金率を0.25%引下げ8.10%に設定しました。これは民間金融機関の預金を0.25%返却することであり、実質的に小幅な量的緩和となります。中国人民銀行は段階的にこの準備金率を引き下げているのですが、現状を物価上昇に拍車が掛からないタイミングと判断したのでしょう。

こういった緩和的な動きはじわりと人民元安圧力として掛かっていくことになります

3.上海ロックダウンの影響は限定的もリスク要因として認識

2点目は「中国で新型コロナウイルスが蔓延」していることです。1日あたりの感染者数は5,000人を切っているとは言え、ここにきて急増している点は見逃せません。

中国の一日あたり感染者数の推移

中国の一日あたり感染者数の推移

先日、中国外務省(外交部)と交流のある方とお話をしたのですが、おそらくは政府が恐れているのは、規制を緩めた途端に人流を抑制できず感染が急拡大して、それが現政権に対する支持率の悪化につながることではないかと教えてくれました。たしかにそれは理に適う考え方と思います。

一方で、今問題になってきているのは逆にロックダウンを強化しすぎることで、国民の不満が明らかに高まっていることでもあります。

中国では言論統制のために、インターネットの閲覧や投稿に制限が設けられています。しかしその制限を超える量の不満を載せた画像や動画があふれかえっており、かなりセンシティブな状況になっていることもうかがえます。参考文献にBBCが作成した動画を載せておきますのでもしご興味があればご覧になってみてください。

グローバルには新型コロナウイルスの感染者数は明らかに減少傾向ですし、予防接種や飲み薬の普及により致死率も低下しています。そしてそれはインターネットの閲覧制限がある中国でさえ手に出来る情報です。

社会主義も民主主義も基本的に国民の声を上手く政策に反映していかないと成り立たない仕組みになっています。国民の声にこたえる形で徐々に制限を緩和していくのであれば政府に対して国民の声が届いているとして国民の不満も多少は和らぐのかもしれません。と考えるとなんとか人民に納得してもらう形で徐々に緩和していくような気がします

現時点ではそこまで相場への影響はありませんが、大きな火種になりうる材料であることを頭の片隅に入れておくと良いでしょう

4.ドル円は実弾介入が入るまで上を目指すのではないか

実質的に大きくCNH/JPYに影響を与え続けているのはドル円の急ピッチの上昇です。

現状は鈴木財務相から「急な円安は好ましくない」と口先介入が入っています。しかしそこで下がったところは押し目となり買われてしまっている状況です。

では実弾介入はどうかと言うと、直近の「ドル売り・円買い」為替介入実績は、1998年6月17日の2,312億円の円買いで、この日は高値144円台から136円まで押し下げられました。やはり為替介入の効果は大きいと思います

実は過去の介入履歴をすべて手元で集計しているのですが、1992年まで遡ると120円台後半での為替介入もみられます。ただ、データをみていくとおそらくは130円~140円台がドル売り為替介入のひとつの目安になっているように思います

ドル売りの介入は貴重な外貨準備を使うことになりますので、リソースも限定的です。2022年3月末における日本の外貨準備高は1.36兆ドルと豊富にありますが、米金利上昇局面で中国が資金流出を食い止めるべく使った資金が1兆ドルを超えていたことを考えると、油断はできない水準と思います。早めにアメリカなど他国の支援を取り付けることが重要かもしれませんね

5.対ドルでは人民元高を想定も、対円は横ばいを想定

想定しているシナリオは以下の通りです。

今後1ヵ月の人民元相場見通し
対ドル:6.3500~6.5500 上目線
対円:19.25円~20.50円 上目線

まず対ドルですが、先に述べた「米中金利差の縮小」や「新型コロナの感染拡大」などファンダメンタルズ要因でみても人民元売りが連想されます。それからチャートを見てもドル買い圧力が強まっていますので、次第に6.40を上抜けてさらに一段と上昇する相場を想定しています。ただし対ドルで買い持ちから入るのはスワップポイントがきついので、短期決戦で勝負した方が良いかも知れません。

USD/CNH 日足

対円については押し目があれば買おうと考えています。基本的には上目線で、20円を超えていく相場を想定しています

CNH/JPY 日足

ただ短期で売買するのであれば、現状はドル円のスプレッドが狭いですし、ドル買い相場でもありますので、ドル円で攻めていこうと思います。

つまり仮に介入が入ったなどで大きく下がることがあれば、そこで拾ってあとはスワップポイントを活かしながらしっかり運用していきたいという考え方です


以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。

引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。


戸田裕大


<参考文献>

BBCニュース:上海ロックダウン、市民の抗議動画次々と拡散 検閲追い付かず
https://www.bbc.com/japanese/video-61125391

各種為替データ:
CNH/JPY:外貨ネクストネオ
USD/CNH:https://investing.com

米国の3ヵ月物金利:https://iborate.com/
中国の3ヵ月物金利:https://investing.com

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【インタビュー記事】

【「FX実力アップ教室」はこちら】

【「なっとく 豪ドル見通し」はこちら】

【「プロが解説 人民元見通し」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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