こんにちは、戸田です。
本シリーズでは「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替ディーラーとして様々な失敗を経験してきた私が、どのように工夫して少しずつ上達していったのか体験談をお伝えしていきます。新人ディーラー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策などを通じて、読者のみなさまの実力UPの参考にして頂ければ幸いです。
第13回目は「トレード前に確認すべき3つのこと」です。早速みていきましょう。
1.トレードの根拠を明確に
2.取引を始める前に損益をイメージ
3.取引の属性やリスクリワードを確認
4.おわりに
1.トレードの根拠を明確に
FXの良い点でもあり、また悩ましい点の1つに、あまりにも簡単に注文が出来てしまうと言うことがあります。これはインターバンクのディーラーも同じ悩みを抱えており、ついついなんとなく取引を開始してしまうことがあると思います。
ところが根拠薄く、雰囲気でトレードを開始すると、利食いのポイントや、損切りのポイントが定まっていないために、ズルズルと負けを引きずったり、利食いを逃してしまったりということもあります。またそういう時に限って相場は自分の思いとは反対に動くことも多々あります。
ちょうど5年前くらいでしょうか。某有名銀行のトレーディング部門で取引前に必ず「トレードの狙い」や「損切りポイント」などをまとめた「報告書」を提出することを義務づけたと言う噂が耳に入っています。内部情報ですし、真偽はたしかではないですが、これくらい徹底した方が収益も改善するだろうと考えると、納得の対応と思います。
私もなるべく雰囲気で取引をしないように、取引をするときには必ずその根拠を書き記しています。その根拠が覆った時には損切り、根拠が覆らない時には定めた範囲や金額の中でナンピンをしたり利食いをしたりしています。
そこまで徹底して取引するのは「ちょっと面倒くさいなぁ」と思うかもしれませんし、その気持ちは十分に分かります。ですので、とにかく勝ちたいと言う方で、まだ取り入れていない方は試して頂ければ良いのではないかと思います。
2.取引を始める前に損益をイメージ
私がディーリーングルームに移ってまだ数年と経たないころ、先輩ディーラーが電卓を片手に何やら計算をしていました。何をしているのですか?と聞いたところ、最大損失を計算しているとのこと。
当時の私や先輩を含め、「ボードディーラー」と呼ばれる若手の為替ディーラーは、巨額の利益を残すよりも、まず実務であるお客様の注文を遅滞なく正確に執行しつつ、着実に月間、年間の利益を残すことが求められている仕事です。そういった意味で、自分の相場観で持つポジションについて、ブックを分けて(別管理して)、且つ最大の損失や想定利益額などを計算しておくことは利に適っていました。
さてこれを私も含む個人投資家の投資行動に当てはめてみたいと思います。調子がよくなってくるとついつい金額を大きくして、さらに上を狙いにいくことがあると思うのですが、利益を残し続けるには守りも必要ですから、1トレードにおける損益額を絶えずイメージしておくことは重要だと思います。損益をイメージすることは、そこまで深く考えなくても習慣として身につけてしまえば防御力(守備力)が高まると思いますので、こちらはまだ取り入れていない方は、ぜひ試しに取り入れてみて頂けると良いと思います。
3.取引の属性やリスクリワードを確認
トレードにはさまざまなスタイルがあります。週をまたいで保有するポジションもあれば、デイトレとして数時間以内に決済するポジションもあるはずです。
それからトレードを振り返ってみて7勝3敗に落ち着く人もいれば、5勝5敗に落ち着く人もいます。前者はリスクリワード(1トレードあたりの損失と利益の割合)が低めになりやすいですし、後者はリスクリワードを高めに設定しないと勝つことは出来ません。
ここで伝えたいのは、自分がこれからするトレードはどういった属性(期間)のトレードなのか、またリスクリワードはどの程度なのか?これを明確にすることが重要ということです。属性やリスクリワードを明確にイメージすることでまた一歩違った景色が見えてくると思います。
4.おわりに
FXの楽しみ方は人それぞれです。ですから本日お伝えした3点についてもどこまで取り入れるかはその人のFXに対する考え方に依ると思います。
楽しんでトントンであればOK、ちょっとした損失なら受け入れられると言う方には、まずは2でお伝えした「取引を始める前に損益をイメージ」を心掛けて頂ければ良いと思います。
どうしても勝ちたい、なんとか年間収支をプラスに持っていきたいと言う方は、ぜひ1「トレードの根拠を明確に」と3「取引の属性やリスクリワードを確認」を取り入れてみてください。きっと試してみる価値はあると思います。
色々と試してみて、自分に合ったトレードスタイルを確立されてください。
それでは本日はここまでとなります。
引き続き一緒に学んでいきましょう。
戸田裕大
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