こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替ディーラーとして様々な失敗を経験してきた私が、どのように工夫して少しずつ上達していったのか体験談をお伝えしていきます。新人ディーラー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策などを通じて、読者のみなさまの実力UPの参考にして頂きたいと考えています。
第6回目は「テイク・プロフィット・オーダー(指値注文)の活用方法について」です。早速みていきましょう。
目次
1.はじめに
2. 短い「滞在時間」で活躍! TP(指値注文)の意義とメリット
3.TP(指値注文)のデメリット
4.TP(指値注文)の活用方法
5.おまけ
1.はじめに
前回号では「ストップ・ロス・オーダー(逆指値注文)の活用方法」についてご説明をしました。
そこで今回はストップ・ロス・オーダー(以後SLと記載)と対となるテイク・プロフィット・オーダー(指値注文)(以後TPと記載)の活用方法を中心にお伝えしていこうと思います。
TPとSLはセットで覚えてしまうのが、効率が良いです。また実際にセットで取引に活用することが多いです。
相場に張り付いていられない状況、たとえば勤務時間中などの自己防衛策として活用できる非常に便利な手法ですし、使い方によっては大きな武器にもなります。改めて活用方法について経験や体験をもとに解説していきますので、ご参考にして頂ければ幸いです。
2.短い「滞在時間」で活躍! TP(指値注文)の意義とメリット
テイク・プロフィットと言う名の通り、いわゆる「利食い」に使われることが多い注文方法です。実際にチャートをみながら解説します。
上のグラフは9月6日(火)執筆時点のUSD/JPYレートです。現在レートが109.83で、概ねのレンジとして109.20と110.20の目安を赤い水平線で記載しています。
例えば現在の水準109.83でUSD/JPYを買い、レンジの上限付近である110.20前後でTPを入れるのが一つの戦略になります。
またプレイヤーによっては先週末の米8月雇用統計前後でドル円を買って持ち越していることも想定されます。上で掴まされている方にとっては110.20のTPは「建値前後」の決済または「損切」となることもありえます。もちろん下で買えている方にとっては「利食い」のTPということになります。
上のグラフから110.20前後の滞在時間が「短い」ことが見てとれます。これは市場参加者が110.20前後をチャート・ポイントと捉え、その前後では売り注文が優勢になって押し戻されてきたことを示しています。
この短い滞在時間の110.20、ここに達した瞬間に売りを成約させる、これこそがTPの意義でありメリットと言えるでしょう。
3.TP(指値注文)のデメリット
ではTPのデメリットとは何でしょうか?
一言でいえば利食いが浅くなることです。さきほどのグラフでは綺麗に110.20で跳ね返されていることが多いですが、当然、上に抜けていく可能性もあるわけで、そうなったときに既にUSD/JPYの買いポジションはなくなっているわけですから、機会損失とでも言いますか、TPを入れずにそのまま保有しておけばさらに利益を計上出来たはずが、出来なくなってしまうことがあり得ます。
より踏み込んだ状況を想定してみましょう。先週末は菅首相の自民党総裁選不出馬に市場の注目が集まりました。幸い為替の反応は薄かったので問題なかったですが、大きく円安に反応して急に1円以上の円安が進みドル円が111円台まで上昇したと仮定します。
この場合、110.20のTPオーダーはどうなったでしょうか?串刺しと言う訳ではないですが、極めて安い水準で利食わされてしまう可能性が高かったわけです。
こういったあまりにも安い水準でTPが成約してしまう可能性についても意識しておく必要があるということです。
4.TP(指値注文)の活用方法
では実際にどのようにTPを使っていくべきか、少し一緒に考えてみましょう。
4つのパターンを解説していきますが、いずれかがベストの手法ということではありません。臨機応変に使用していく能力が試さることになりますので、その点はご了承ください。
A) 重要イベントの際に、ここまで行けば「僥倖」という水準にTPオーダーを入れて置く
B) 時間に余裕がない時、他に仕事がある時に、利食いのポイントとしてTPを活用する
C) 割り切ってディールしたいのでTPを置く
D) 部分的に利食いを入れたいのでTPを活用する
Aについては、例えば米雇用統計をイメージしてもらえば良いと思います。どの程度の数値が出てくるか予測するのも大切ですが、合わせて、出てきた数値に対する備えも重要になります。強い数値が出てきた時にこの辺りで利食いを入れよう、その水準にTPを入れて置くことは効果的と言えます。またTPをエントリー代わりに使って頂くのも、もちろん全く問題ないです。
Bは、どうしてもはずせない予定や、自分のポジションよりも優先度の高い事項がある時に活用すると良いです。例えば私の場合ですと、執筆中は執筆に集中したいとか、法人の面談やセミナー中はさすがに注文を見れないとかありますので、そう言うタイミングでTPとSLも併せて活用しています。みなさんにはみなさんの状況があるはずですので、それに合わせてご活用するのがおススメです。
Cは、自分のポジションの利益最大化を図ることを捨て、決定した地点で必ず利食うことを徹底する戦略です。個人的には週をまたぐような中長期ポジションに対する戦略としては好ましくないと思っていますので取り入れていませんが、検証した結果としてそれがワークするのであれば、そちらの方が正しいです。機械的にやりたい方は取り入れてみると良いと思います。
Dはいわゆる「部分利食い」と言う手法です。自分のコア・ポジション、例えばUSD/JPYのロングならロングを軸に戦うのですが、この水準では一旦利食いを入れて、下がったら買い増したいと言った時に使います。インターバンクでは「回転売買」などと呼ばれ、良く用いられる手法ですので、活用しても面白いと思います。私もこう言った形で使うことは多いです。
5.おまけ
さて2回連続で注文方法、「TP」と「SL」について見てきましたがいかがだったでしょうか?
一言でFXと言ってもその戦術は大きく異なるものです。ある程度のロットを抱えて中長期で攻めていくのか、それとも細かく利食いや損切を入れていくのか、はたまたそれに適した通貨ペアは何かなど、なかなか一言では語りつくせません。
今回お伝えしてきた「TP」と「SL」は特に短期売買で勝敗を分ける大きな要因のひとつになります。なんとか売り買いを上手くなって、短期で稼ぎたいという方は、エントリーポイント、利食いポイント、損切りポイントがとても重要になりますので、「TP」「SL」をスキルとして磨いていくと必ず役に立つと思います。
短期売買はオペレーションの巧拙が極めて重要になります。外為どっとコムでは高機能チャートやIMM通貨ポジションなど短期売買に役立つツールも充実していますので、それらも活用しながら、一緒に相場と対峙しましょう。
また中長期のお話もぜひ共有させて頂きたいと思っています。引き続き一緒に学んでいきましょう。
引き続き、みなさんのレベルアップに役立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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