
大波乱となった2020年、マーケットも大混乱に陥りました。
そこで今回はマーケットで話題になった出来事や影響力の大きいニュースなどをトップ10のランキングにしました。
さらに3位~1位については外為どっとコム総研の神田調査部長に解説して頂きます。
2020年の主なトピックス
英EU通商交渉、数ヶ月にわたり難航
米大統領選、バイデン氏が勝利
人類初の世界的な危機、新型コロナウイルス感染拡大
2021年の注目ポイント
2020年の主なトピックス・トップ10
10位 原油急落、一時マイナス価格も
3月にNY原油が20ドル台へ急落。投げ売りが進む中、4月に史上初のマイナス価格まで暴落した。
9位 米国株、過去最大の下げ幅を記録
2月、新型コロナウイルスの感染が世界的脅威になるとの見方から、NYダウ平均が1200ドル続落して過去最大の下げ幅を記録した。
8位 米雇用統計、過去最悪を記録
5月、米4月雇用統計の非農業部門雇用者数が2053.7万人減と過去最大の落ち込み、失業率は戦後最悪の14.7%に上昇した。
7位 NYダウ、史上初の3万ドルを達成
11月、米大統領選でバイデン氏優位となったことなどを受けて、NYダウ平均が史上初めて3万ドルの大台に乗せた。
6位 新型コロナウイルスワクチンの開発進む
7月、製薬大手のファイザー、モデルナ、アストラゼネカがコロナウイルスワクチンの開発で大きく進展すると米国株が急騰した。
5位:主要国で相次いだ緊急利下げ
3月、新型コロナウイルスの感染の拡大を受けて、米連邦準備制度理事会、FRBが3日に0.5%ポイントの緊急利下げを決定。さらに11日にはイギリスの金融政策委員会が0.5%ポイントを利下げ。16日にはFRBがさらに1%ポイントの追加緊急利下げを決定した。
4位 過剰なリスクオフで基軸通貨・ドルに買いが殺到
3月18日、NYダウ平均やNY原油が急落する中でパニック的な動きが波及。基軸通貨のドルに買いが殺到した。
3位 英EU通商交渉、数ヶ月にわたり難航
3月、欧州連合、EUとイギリスが自由貿易協定、FTAなど将来関係を議論する会合をスタート。ところが漁業権や競争条件などで折り合いがつかず、交渉は難航。その後も本格的な進展はなく、12月後半に至るも土壇場の交渉が続いた。
2位 米大統領選、バイデン氏が勝利
11月4日、米大統領選の開票作業が始まり、重要州と目されるフロリダ州でトランプ氏が一時優勢。しかし、その後は激戦州のひとつウィスコンシン州でバイデン氏がリードするなど、接戦の中でもバイデン氏が優位に。その後、トランプ氏が選挙の不正を訴えましたが、いずれも裁判所は門前払い。バイデン氏の大統領就任はほぼ確実となった。
1位 人類初の世界的な危機、新型コロナウイルス感染拡大
1月21日、中国で肺炎患者が増加したことを皮切りに、未知の新型コロナウイルスが世界中に蔓延。3月には米国の各州で非常事態が宣言されるなど、未曾有の危機的状況に陥った。さらに各国のロックダウンは経済に打撃を与え、マーケットにも甚大な影響を与え続けた。年後半にはワクチンの開発などで明るいニュースもあったものの、確実に感染拡大を抑えられるか未だに未知数であり、来年も予断を許さない状況である。
英EU通商交渉、数ヶ月にわたり難航

- 今回はランキングの3位から1位までを外為どっとコム総研の神田調査部長に解説して頂きます
神田さん、よろしくお願いします 
- はい、よろしくお願いします

- さっそくですが、今回3位に入った英EU通商交渉、これは為替相場にとってどのような意味があったと思われますか?

- 基本的に英EU離脱に絡む通商交渉というのは条件で揉めているところがあります
EUとしては「ルールに従ってくれないなら公平な貿易はできない」という主張があり、英国としては「手切れ金を払って離脱するからには自由にさせてほしい」との主張があります
これは主権の問題なのでなかなか落とし所が見つからない
ただ、包括では無理だけど一部だけなら合意できるのでは、という期待感からポンドが反発する局面もあるなど複雑な動きになっています 
- すごく微妙な交渉なのはわかりますが、毎日のように「合意できそう」「いや、合意なしかも」との発言が聞こえてくるとウンザリする人も多かったと思います

- それは市場も同じで「もうどっちでもいいから決めてくれ」というのが本音でしょう

- あ、市場も同じなんですね

- なので英EU通商交渉への市場の関心は薄れつつありますね

- もう「参った」と言った方が負けというチキンレースのようにも見えてきました

- チキンレースというのは両者が崖に向かって走る勝負ですが、これについてはどちらも一緒になって落ちそうです

- (笑)落ちるのは決定事項で、どちらがより浅いかという勝負ですね
その交渉ですが、今年も終盤に近づくと英国とEUの双方から「合意はないかも」という話が出てくるようになりました
本当に合意なしとなった場合、英国経済に悪い影響が出るという意見と、案外影響がないのではという意見があるようですが実際はどうでしょうか? 
- これはなかなか難しいですが、私は少なからず影響はあると考えています

- どういう影響でしょう?

- 英国にとってはEUとの貿易はかなりのウエイトを占めています
そこに関税がかかるとなると英国経済にとってそれなりに影響があるとみています
米大統領選、バイデン氏が勝利

- 2位はこれも数ヶ月にわたり大きな話題となった米大統領選が入りました
ただ、11月4日(日本時間)の投開票のときはもちろん市場を見ていたのですが、以前にトランプさんが当選したときのような大きな動きにはならなかったような気がします 
- 開票が始まった直後にはトランプさんが健闘しているとのことで瞬間的にドルが買われたのですが、その後は大方の予想通りバイデンさんが優位になったので、そこまでの動揺はありませんでした

- 前回の大統領選があまりに大きく動いたので身構えていたのですが、ちょっと拍子抜けしたのを覚えています

- 前回の大統領選では市場もまさかトランプさんが勝つとは思ってなかった節がありましたから、その分ショックが大きかったというのはあるでしょうね

- やや引きずっている感もありますが、もう新大統領はバイデンさんに確定ということでいいのでしょうか?

- そうですね、先日の選挙人投票でもバイデンさんが勝利したのでもう確実だと思います

- トランプさんの訴えも裁判所にことごとく門前払いされていますからね

- そうなると来年から先、新政権がどのような運営をするのかというところに市場の焦点が移っていくと思います

- なるほど、バイデン新政権のポイントについては後ほどお聞きしたいと思います
人類初の世界的な危機、新型コロナウイルス感染拡大

- 1位はやはりこれ抜きには語れないでしょう、新型コロナウイルス感染拡大です
というより、もうコロナかそれ以外という気もしますが 
- そうですね、今年はコロナに尽きるといってもいいでしょう

- すでに人類全体の問題となっていますが、為替相場にとってはコロナ禍がどのような意味があったとお考えですか?

- 為替にとっては、大きなルールが変更になったのが最も大きいと思います

- それはどのようなルールでしょう?

- コロナ前、いわゆるビフォー・コロナではリスクオン=円安の動きが主流で、円の専売特許であるともいえました
しかしアフター・コロナではリスクオンでドルが円よりも売られるケースが目立ってきています 
- そのきっかけなどはあったのでしょうか?

- 今年の3月に株価が急落した局面がありましたが、そのときのリスクオフの勢いが強すぎてドルが大きく買われたことがありました
これは「究極のリスク回避」といっていいと思います 
- その株価急落が引き金になってドル=安全通貨に変わってしまったということですね

- そうですね
これまで安全通貨といえば円とスイスフランで、リスクオフで円が買われリスクオンで円が売られていました
これがリスクオフでドルが買われ、リスクオンでドルが売られるというルールに変わってしまい、今まで見たこともない相場になっています
このルール変更はドル/円にも影響が出ました 
- その変更になったルールが元に戻るタイミングはあるのでしょうか?

- まず大元になっている要因には日米欧、豪州までも金利がゼロになってしまったというのがあります
為替市場では金利差が重要な意味を持つのですが、これがなくなってしまったので、リスクオン/オフで動くしかなくなったわけです 
- たしかにレポートやニュースでもリスクオン・オフの言葉を聞かない日はないくらいです

- そんな状況でドルが安全通貨になるという新ルールが加わって、話がややこしくなってしまった
金利はしばらく上がらない公算が大きいですから、この流れは当面変わらないのではないでしょうか
2021年の注目ポイント
まずはコロナワクチンの開発が大前提!

- さて、我々は結局コロナを克服できないまま年をまたいでしまうわけですが、2021年に注目しているポイントを教えてください

- まずコロナワクチンが本当に効果があるのか、どれだけ効くのかが最も重要な点だと思います
ワクチンが効いて外出制限がなくならなければ経済活動はもとに戻りませんから 
- それはそうですよね

- 経済活動が盛り上がって世界景気がもとの状態に戻るのかどうかが2021年の焦点といえるでしょう
いろいろ元に戻り初めて、そこから東京オリンピックが開催されるかといった細かい話になってくるのではないでしょうか 
- それもこれもワクチン次第だと

- あとはコロナ治療薬も重要になってくると思います

- たしかにコロナの治療は現在確立されつつあるとはいえ、まだ決定打はないんですよね
ただ逆にいうと、ワクチン開発の進展によってはかなりリスクオン的な状況になるということですよね? 
- すでに市場はかなり楽観的で、特に株式市場はワクチン開発の成功をすでに織り込んで上昇している節はありますね

- 株価の高止まりは続きそうでしょうか?

- 株についてはワクチンとともに日米欧の主要先進国すべてが金利を下げて財政出動して支えている一面もあります
そう考えると株価は急激には落ちにくいのではないでしょうか 
- ワクチンだけではなく金融政策の支援も念頭に置く必要があるわけですね
バイデン新政権の注目ポイント

- 先ほども話題にのぼったバイデン新政権ですが、市場への影響も少なくないと思います
新政権のポイントを教えてください 
- バイデン新政権は民主党で「大きな政府」を標榜していますから、財政出動して景気刺激をしていこうという立て付けになっています
さらに対中貿易政策も緩めるとみられるので、財政赤字と貿易赤字、いわゆる双子の赤字が拡大するという見方からドル安要因になると考えられます 
- 今のところバイデン新政権=ドル安という図式なわけですね

- あとは財政赤字が拡大すると悪い金利上昇が起きかねないので、それを抑えるために米連邦準備制度理事会(FRB)が低金利政策を長く続けている点もドル安につながっています

- なるほど、では米新政権に関して目先はどこに注目すればいいでしょうか?

- まず本当に米新政権=ドル安になるのか見極めなければなりませんから、1月終わり、または2月初旬にあるバイデンさんの一般教書演説に注目していくべきだと思います

- よく考えてみたら、我々もまだバイデンさんの話をきちんと聞いてませんからね

- あと新政権に関しては、元FRB議長のイエレンさんが財務長官に就任する予定ですが、どのような為替政策をとるのかというのも大きな注目点になります

- イエレンさんといえば民主党時代に任命されたFRB議長です
もちろん今のFRBメンバーともツーカーなんでしょうね 
- そうですね、FRBの金融緩和と歩調を合わせて財政の面でも協調政策をとりやすくなるでしょう
この点も現時点ではドル安要因になると思われます 
- なるほど、わかりました
これらのことを念頭に置きながら、あともう少し残された今年の相場、そして2021年の相場に臨んで頂ければと思います
神田さん、ありがとうございました 
- はい、ありがとうございました
