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子どもたちが憧れる"esports"プレーヤーを育てたい ~esports専門会社 ウェルプレイド株式会社 代表取締役社長 谷田優也氏に聞く~(後編)

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インターネットで提供されるコンテンツの競争は激しさを増している。例えば、Hulu、Netflix、Amazon Prime Videoといった動画サイトで、お金を払って、自分が好きなときに、好きなだけ見るというスタイルが定着してきている。そうしたコンテンツの楽しみ方を一気に広げたのが、ソーシャルゲームであることは間違いないだろう。そうした中で登場した「esports」は、ゲームが常に選択されるコンテンツになるための新しい「仕掛け」だが、そこには、従来のスポーツを超えるぐらいの夢と希望と可能性が満ちあふれている。前編に引き続き、esportsビジネスに携わるウェルプレイド株式会社の谷田社長に話を聞いた。

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日本には世界に負けない実力がある"esports"の可能性 ~esports専門会社 ウェルプレイド株式会社 代表取締役社長 谷田優也氏に聞く~(前編)

急速に進む専用施設づくり

PickUp編集部:
esportsの専用会場というのは、国内にあるのでしょうか?
谷田社長:
東京の秋葉原や池袋にあります。最近では、2018年に吉本興業が、『ヨシモト∞ドーム』というesportsのイベントを見るための専用施設を、渋谷にオープンさせました。吉本興業がゲーム放送を、平日も土日も劇場を使ってやり始めたことは、大きなインパクトがありました。
PickUp編集部:
"お笑い"とのコラボもあるんですか?
谷田社長:
芸人が実況しにきたり、競技の前説で盛り上げたり、好きな芸人を見るために劇場に来るお客さんに、ゲームをアピールできるという仕組みになっているようですね。また、Amazonとも連携していて、チケットを購入できるようにするなど、先進的な取り組みが始まっています。既存施設としては、ここが最も優れているのではないかなと思います。先日コナミも、自社ビルに併設する巨大なesports施設を、銀座に建てるという計画を発表されました。

「甲子園」が生まれない理由

PickUp編集部:
野球でいう「甲子園」のような場所はあるんでしょうか?
谷田社長:
そういうものはまだないですね。それが秋葉原かというと、そうでもないんです。秋葉原はいろんな人の「好き」が集まる場所として認知されていますが、最近はスマートフォンが爆発的に普及したことから、自分の「好き」が、秋葉原でしか"肯定されない"というわけでもないんです。18歳で入社した社員と会話したときに、ものすごい衝撃を受けたのですが、現在36歳の僕ら世代にとって、学生時代に「今週のジャンプ読んだ?」っていうコミュニケーションが、当たり前だったと思うんですが、彼に「そういう会話ってあるの」と聞いたら、「そんなのあるわけないじゃないですか」と言うんです。(笑)
PickUp編集部:
なぜないんでしょうか?
谷田社長:
「たった40人しかいないクラスに、自分と趣味が同じ人がいるなんて、期待するだけ無駄です」っていうわけですよ。(笑)「このアイテム、このタレントが好き」なんて話を交えて、お互いに歩み寄るのは、ただのリスクでしかなくて、逆に共通の「好き」を語り合えるのは、部活のスポーツぐらいなんですって。ゲームやタレントの好みなんて、 SNSという"海"に飛び出ると、同じ趣味を持った人たちと、一瞬でゆるくつながれるから、その人たちオンラインチャットで語り合ったり、オフで一緒にイベントに行ったりという時代なんですね。これでは、野球でいう「甲子園」のような"聖地"は生まれないわけですよ。そういう状況だからこそ、逆に今、それぞれでesportsの聖地化を目指しています。巨大な世界大会を運営し、「君はあの舞台に立ちたくないか?」みたいな言葉が使えるように。

子どもたちが憧れる"esports"プレーヤーを育てたい

PickUp編集部:
競技人口といえるのは何人ぐらいでしょうか
谷田社長:
国内で1000万人以上はいると思います。ゲームでランクを上げていったら、「大会があるのでプロとしてやってくれないか」って、急に声がかかるパターンもありますし、ゲームセンターで『ストリートファイター』をしている人たちも、競技人口とみなすのであれば、その分、人数は増えます。まだ定義があいまいなんですね。
PickUp編集部:
野球選手だったら現役引退後に解説者になるとか、コーチになるとか、芸能人になるとか、人生設計のパターンが確立されていますよね。
谷田社長:
esportsの場合、すべてが体力や運動能力の勝負ではないので、競技可能な年齢が何才までなのかも、人それぞれになります。『ストリートファイターⅤ』で、世界で一番強いとされている格闘ゲームのプレーヤーは現在38歳ですし、40歳を超えているプレーヤーも、世界のトップレベルで活躍しています。その一方でシューティング系のゲームのプロチームでは、20代前半で引退するプレーヤーもいます。また、そのプレーヤーのセカンドキャリアは、まだ保証されたものにはなっていません。
PickUp編集部:
そんな状態は、今後、改善されるのでしょうか?
谷田社長:
ウェルプレイドでは、ゲームのトッププレーヤーとして人気が出そうなタイミングで、YouTubeを始めていただいて、プロとしての価値を持つYouTuberとして認めてもらうまでのストーリーを、どう選手たちに描いてもらうかに取り組んでいます。成功事例としては、18歳のときに4万人の大会で1位になったプレーヤーがいるのですが、彼にYouTube を始めてもらい、アジア大会とか、世界大会とかに挑むまで、そして、大会で最後に負けて涙を流すまでのドキュメンタリーをVTRにまとめて、ネットで公開しました。そうすると彼のファンが爆発的に増えて、YouTube のチャンネル登録者が12万人ぐらいにまで急増したんです。それだけチャンネル登録者数があると、月に数十万円のお金が入ってきます。例えば、19歳の時点で、年収600〜800万円ぐらいを目指せるわけです。

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※ウェルプレイド社内に飾られているさまざまな大会のメダル。
こうしたメダルを目指してチャレンジするプレーヤーの育成も大切な業務のひとつだ。

PickUp編集部:
かなり安定しますね。
谷田社長:
プロリーグのチームにプレーヤーとして所属すると、所属チームから報酬が支払われます。プロとして活躍しながら YouTube でもファンがいるぐらいに人気を集めれば、国内だけでなく、グローバルで注目されることになります。オーストリアの清涼飲料水メーカーのレッドブルは、いろんなスポーツ選手を「レッドブルアスリート」として認定していますが、今年、あるモバイルゲームのプロゲーマーが、世界で初めてレッドブルアスリートに任命されました。スポンサーからの収益、YouTubeからの収益があれば、ゲームの賞金に依存しない生活も可能です。彼が新しいゲームタイトルを始めると、さらに新たなファンがついてきます。これこそが、新しいセカンドキャリアの作り方になるのではないかと考えて、現在、そういう仕組みを推進するチームを社内に新設しました。
PickUp編集部:
そういう取り組みは、業界全体で進んでいるのでしょうか?
谷田社長:
最近では、大手芸能事務所で知られるアミューズが、esportsのプレーヤーを専属でマネジメントするチームを作ったそうです。また、吉本興業も芸人枠ではなく、文化人枠やアスリート枠でマネジメント契約を結び始めているようです。今後、こういうケースは増えるでしょうね。
PickUp編集部:
プロとして成功してどんな人生が送れるのかが広く知られるようになると、esportsでプロのプレーヤーを目指す子どもたちが増えてくるかもしれませんね。
谷田社長:
少しずつですが、「〇〇さんみたいになりたいけれど、どうしたらいいですか」とか、「〇〇さんを見て、イベントを支える仕事がしたくなりました」などのメールが会社に届くようになりました。

esportsプレーヤーはアーティスト

PickUp編集部:
ゲームの場合、野球のようなスポーツや音楽のような芸術活動と比べて、周囲の理解の問題もあるのではないでしょうか。
谷田社長:
確かにゲームはスポーツと違って、練習後に筋肉疲労を回復させるための時間を設けるなど、科学的に管理するノウハウが確立されているわけではありません。プレーヤーの中には、週5日、1日15時間も練習している人もいます。ただ、「それは遊びだからできるんじゃないの」と、受け止められてしまうことがあります。どんなに好きなゲームでも、それだけ長時間の練習は、過酷なことですよ。遊んでいるというよりも、勝つために必要なことを、徹底的に分析しているわけで、むしろ、賞賛されるべき努力だと思っています。
PickUp編集部:
スポーツも音楽もゲームも、努力の末に素晴らしい結果が生まれると。
谷田社長:
音楽を最高の技術でプレーする人はアーティストやシンガーソングライターなどと呼ばれ、表現者として世間で広く認知されています。彼らが賞賛されるのは、一般人がどれだけ頑張ってもたどり着けない境地にいて、できないことができるからじゃないですか。ゲームも同じです。プロゲーマーたちは、一般のゲームファンがたどりつけない世界で、究極のプレー、テクニックを披露する表現者なんです。自分たちがどれだけ頑張ってもできないことを表現できる人たちのことを、「素晴らしい」と思うのは、ゲームでも、音楽でも、野球でも、それほど関係ないですよね。esportsもそういう道を進んでいけばいいかなと思っています。

関連産業にまで裾野が広がり、巨大市場が出現する

PickUp編集部:
最後に、esportsは関連産業を巻き込んで伸びていきそうです。業界全体についてはどのような見通しを持っていますか?
谷田社長:
すでにゲーミングチェアなどの周辺機器が、大型家電量販店で並び始めています。ほかにもゲームへの集中度を測るメガネを作るメーカーや、ゲームプレーヤー専門のマッサージを提供する企業が出てきています。また、スポーツ衣料メーカー大手のチャンピオンがゲームのコントローラーを膝の上に置いてもすべらないような専用ウェアを開発したり、点眼薬で知られる製薬会社の老舗、ロート製薬が、格闘ゲームのプレーヤーのスポンサーを始めたりしています。ひょっとしたら、ゲーム専用目薬なんかも発売されるかもしれませんね。
PickUp編集部:
プレーヤーだけでなく、ゲーム実況者というジャンルもありますね。
谷田社長:
初めて見る人たちにも、知っている人たちにも、ゲームの状況を伝える実況者の実力って重要です。それこそ陸上競技のように多種多様な種目があり、それぞれで専門性が違うので、需要の割に供給が足りていない状態です。実況者は求められていますよ。ほかにも、プレーヤーを応援するチアリーダーのような存在や、メディアで解説記事を書くライターの需要も高まるでしょう。

今はまだ、超一流のプロプレーヤーになって、ようやく一定の収入があるという状況ですが、そこを目指していく過程が、すごく大変なので、一緒にプロプレーヤーを育ててくれるような存在が出てきてくれるといいなと思っています。私たちはesportsの専門会社を3年強続けてきましたが、市場規模が拡大するスピードは加速し、伸びしろが増えていることは間違いありません。数年後に、大きなリターンがある市場になる可能性は、非常に高いと思っています。

PickUp編集部

最近、子どもたちの将来なりたい職業に、YouTuberがランクインしています。一昔前の子どもたちの夢には、必ずと言っていいほど、野球やサッカーなどのプロスポーツプレーヤーが登場していました。谷田社長は、"esports"プレーヤーは音楽のアーティスト同様に、一般の私たちでは、たどりつけないような世界で、究極のプレー、テクニックを披露する表現者だと語りました。そうした人たちのことを素晴らしいと思い、憧れるのは、当然なのだと思います。子どもたちの将来なりたい職業ランキングに"esports"プレーヤーが登場する日も、そう遠くないではないでしょうか。

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日本には世界に負けない実力がある"esports"の可能性 ~esports専門会社 ウェルプレイド株式会社 代表取締役社長 谷田優也氏に聞く~(前編)

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代表取締役社長 谷田優也氏
ソーシャルゲームのプロデューサーを経て、渋谷のゲームセンターで『ストリートファイターIV』をやりこみ、"ザンギエフ使いのアカホシ"として名が知られているときに出会った髙尾恭平とともに、2015年11月にウェルプレイドを設立。「ゲームが上手い人、上手くなろうと頑張っている人が世間で高く評価される時代にしたい」という思いから、日本初のesports専門会社としてesportsに関する企画、プロデュース、運営、コンサルティング、配信などを行う。

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ウェルプレイド株式会社
URL:https://wellplayed.jp/
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷 3-13-7 原宿OMビル2F
設立:2015年11月19日
代表取締役:谷田優也 髙尾恭平
事業内容:esportsに関する企画、プロデュース、運営、コンサルティング、配信など