相場の格言に「見切り千両」があります。
損を出したときに、今ここで手を引くことによって、大損が避けられるのなら"千両の価値がある"という意味です。
こうした格言が存在するのは、それだけ相場の戻りを期待して、さらに損をしてしまう投資家が多いということでしょう。
そうした損失拡大を避ける有効な手段がFXにはあります。
それは「ストップ注文」です。
PickUp編集部では、当社をご利用いただいているお客さまの取引データを分析し、今後、FXの取引に役立てていただけるような情報を提供することにいたしました。
今回のテーマは「ストップ注文」です。
集計したデータをみると、ストップ注文を "入れる"投資家は、"入れない"投資家よりも、結果的に"得"をしているようです。
両者にはどのような違いがあるのでしょうか、詳しくみていきましょう。
■ストップ注文とは
「ストップ注文」とは、現在のレートよりも不利なレートを指定して発注する注文方法です。
その主な目的は「損切り」。
「レートが○○円以下(以上)になったら、許容できる損失額を超えてしまう」というときに、そうなる前に取引終了させるため、わざと不利なレートを指定して取引を終了させるわけです。
そうすることで、自分が知らない間に相場が不利な方向へ動いたときでも、損失を小さく抑えることができます。
■勝率が良いのは、「含み損」の決済を先送りしているから?
「外貨ネクストネオ」での取引データ(2018年10~12月)から、①ストップ注文を入れている投資家と、②ストップ注文を入れていない投資家の成績(平均値)を抽出してみました。
(各項目の意味は以下のとおり。スポット損益:為替差で確定する損益。スワップ損益:スワップポイントで確定する損益。取引損益:スポット損益+スワップ損益。最大取引益:1回の取引で確定する最大の取引益。最大取引損:1回の取引で確定する最大の取引損。勝率:利益の出た取引回数÷決済回数)
まず、勝率に注目します。
勝率は、ストップ注文入れない②に軍配が上がっています。
しかし、勝率はあくまでも決済して、損益が確定した取引が集計された結果です。
そこで最大取引損を見てみると、ストップ注文を入れない②は、ストップ注文を入れる①と比較して、8割も損が大きくなっています。
この比較から推察されることは、ストップ注文を入れない投資家は損切りを先送りにすることで、勝率は良くなっているが、損失を出したときの損の大きさが、ストップ注文を入れる投資家よりも大きくなる可能性があるということです。
■取引数量との相関関係で決定的な差が
取引数量と取引損益、ポジション含み損益の相関関係からも、ストップ注文を"入れる"投資家と"入れない"投資家の差は明らかなようです。
ストップ注文を入れる投資家①の場合、取引数量と取引損益に、"弱い順位相関(相関係数:0.25)"が確認されました。
つまり、取引数量が増加するほど、取引益も増加する傾向にあり、ストップ注文が損失の抑制に寄与していることがうかがえます。
一方、ストップ注文を入れない投資家②の場合、取引数量とポジション含み損益に、"中度の逆相関(相関係数:-0.51)"が確認されました。
これは、取引数量が増加するほど、ポジション含み損が増加する傾向にあることを示しています。
理由としては、ストップ注文が設定されていないことで、適切なポジション管理ができず、ポジション含み損が増加すると考えられます。
簡単に言えば、ストップ注文を入れると、取引をすればするほど、利益が増えるのに、ストップ注文を入れないと、取引するほど含み損が増えてしまうということになります。
そう考えると、ストップ注文を入れない理由が見つかりません。
■ストップ注文は資産防衛の有効手段
FXに限らず、資産運用で利益を出すのに最も大切なことは、損失を可能な限り小さくすることです。
資産を大きく減らしてしまうと、それを取り戻すために、投資パフォーマンスを上げなければならず、たいていの人は冷静さを失いがちです。
今回集積したデータから、ストップ注文を入れる投資家は、入れない投資家よりも、ポジションの含み損が小さく、決済したときの最大取引損も小さいことがわかりました。
そうしたことから、「ストップ注文」は損失を最小化するための手段として有効であると考えられます。
長期保有でスワップ運用するという投資スタイルを否定するわけではありません。
ただ、単純にストップ注文を入れず、塩漬けにしていたり、相場が戻ってくることを期待して、損切りできない状況に陥っていたりしているのであれば、運用できていない分、その投資金はもったいないのではないでしょうか。
「なんとかなるだろう」という発想で、ストップ注文を入れずに取引するスタイルは、結果的に損失を大きくする可能性が高いわけで、一攫千金ではなく、損失を極力小さく抑えた安全な運用が、良い結果をもたらすことになると言えそうです。
PickUp編集部