昨日の海外市場でドル円は、11月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ると一時155.29円と日通し安値を更新した。ただ、売り一巡後は下げ渋る展開に。米CPIデータに関する懐疑的な見方が聞かれる中で、米10年債利回りが低下幅を縮めたことなどが相場を下支えした。ユーロドルは、米CPIの下振れをきっかけに全般ドル売りが優勢になると一時1.1763ドルと日通し高値を付けたが、1.1715ドル付近まで押し戻された。なお、ECBは市場予想通り政策金利を現行の2.15%に据え置いた
本日の東京時間でのドル円は、日銀の金融政策決定会合の結果とその後に行われる植田日銀総裁の会見で乱高下になることが予想される。また、日本時間8時半には本邦の11月全国消費者物価指数(CPI)も発表される。
昨日に欧州中央銀行(ECB)、英中銀(BOE)ほか欧州の中央銀行が政策金利を発表したが、本日は日銀の金融政策決定会合が行われ、今年の中銀発表の大トリを務めることになる。市場では25ベーシスポイントの引き上げを予想し、1995年以来となる0.75%への利上げは織り込み済み。注目は今後の金融政策の展開を植田日銀総裁がどのように説明するかになる。これまでは、政府からの利上げ反対で日銀の利上げは遅々として進まなかったが、10月下旬の日米財務相会談後に米財務省のホームページで「アベノミクス導入から12年が経過し、状況は大きく変化していることから、インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した」と掲載されるなど、米国の圧力から高市政権も利上げを容認する方針だ。
市場は来年2回程度の利上げを予想し、利上げの最終到着点となるターミナルレートを1.25%と予想している。植田日銀総裁の会見で今後も緩やかな利上げ程度で収まれば、円は動意薄になるか、織り込み済みで円売りが進みやすい。一方で、これ以上のタカ派発言となった場合は、円買いが進むことになるだろう。
声明文や植田総裁の冒頭会見や幹事社からの質問などではサプライズとなる発言は期待できないかもしれない。市場が動意づくのは、その後に行われる各社からの質疑応答になりそうだ。注目したいポイントは複数あるが、まずは中立金利について具体的な数値を述べるかだ。現在は1.0%から2.5%と幅を持たせていることについて、植田総裁は11月4日の参院財政金融委員会では狭めることを示唆した。12月1日の会見でも中立金利について「もう少しはっきりと明示したい」と述べている。しかし、日銀内でコンセンサスをとれないとの意見が多く、いつものように曖昧な発言にとどめるとの予想が多い。仮に、狭める発表となった場合は、上限を引き下げるよりも下限となる1.0%を引き上げることになり、利上げ幅が拡大することで円が買われやすくなるだろう。
また、実質金利の算出方法のインフレ率基準を、これまでの日銀の予想物価から生鮮食料品を除いたコアCPIに置き換える発言をしていることで、今後の日銀の実質金利の捉え方も気になるところだ。
他にも、これまで日銀は基調的な物価上昇率について、引き続き目標の2%には達していないとの見解を持っている。しかし、2022年4月以後からの日銀の目指す2%の物価安定にインフレ率は達している。本日発表される生鮮食料品を除いたコアCPIが予想の3.0%程度となった場合でも、同じ見解が示されるかも気になるところだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
