昨日の海外市場でドル円は、一時155.04円と2月4日以来約9カ月ぶりの高値を付けた。米政府機関再開への期待が高まる中、世界的に株価が上昇するとリスク・オンの円売り・ドル買いが出やすい地合いとなった。ユーロドルは米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りも入ると、一時1.1598ドルまで上昇した。
本日の東京時間でのドル円は、高値警戒感があるものの円安基調は変わらずか。経済指標では、本邦の企業物価指数や豪州から雇用統計が発表される。
昨日から14日までは、参院では予算委員会が行われている。これまでの質疑応答で、高市首相は単年度のプライマリーバランスの黒字化を取り下げ、数年単位のバランスを確認する方針を示した。「責任ある積極財政」路線と所信表明の冒頭で示し、積極財政路線は確約されているが、数年単位での財政収支ということは「責任ある」とは言えない。放漫財政に陥る懸念が強く、これを受けた円安地合いは継続しそうだ。
高市政権は「地域未来戦略本部」を設置し、「大胆な投資促進策とインフラ整備を一体的に講じる」と強調したように、株式市場にとってはプラス面が目立つ。デフォルトリスクや物価高対策が乏しいにもかかわらず、株高を背景にドル円はリスク選好の円売りが続くだろう。
ただ、「アベノミクス」の時はデフレ下で円高だったが、円安下でインフレが進んでいる中で「サナエノミクス」が進行した場合は、さらに円安が進みインフレも高止まりする可能性が指摘されている。経済財政政策と成長戦略を担当する内閣府特命担当大臣の城内氏が、円安の進行について「消費者物価を押し上げる可能性」と言及し、昨日片山財務相は「円安、マイナス面が目立っていることは否定できない」と述べるなど、円安進行について警戒感を示している。その一方で高市首相は、全国消費者物価指数(CPI)が前年比で3%を超えているのが食品高の影響とし、「デフレ脱却宣言には至らない」と日銀の利上げをけん制している。
しかしながら実際は、生鮮食料品を除いたCPIが昨年12月から7月まで3%を超えていたことを考慮すると、首相の発言は正しいとは言えない。食料品価格の上昇を主因とみなすのは、利上げに対して強く拒否反応を示していると受け取れる。前回の日米財務相会談後、米国が改めて「為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策」と日本への利上げ実施を求めた。それにもかかわらず、首相が依然として利上げに抵抗する考えを示していることで、口先介入だけで円安地合いを変えるのは難しいだろう。
本日は本邦から、10月企業物価指数が発表予定。今年に入り前年比では一時4.2%まで上昇していた同指数だが、6月から3%を割り込み、10月も2.5%まで低下すると予想されている。市場の反応は限られるだろうが、低下傾向が鮮明になった場合は金融政策の判断にも影響を及ぼす可能性があるため注目したい。
また、豪州からは10月雇用統計が発表される。前回9月の失業率は、コロナの余波がまだ残る2021年下旬以来となる4.5%まで悪化した。ブロック豪準備銀行(RBA)総裁は「労働市場は崖から落ちることはない」と述べ、「失業率は来月再び低下する可能性がある」との見方を示し、9月の失業率上昇は一時的な要因とした。7-9月期のCPIが上昇したことで、RBAはインフレへの警戒感を強めつつある。そういった中、ブロック総裁の予想通りに雇用悪化が一時的だった場合は、RBAの追加利下げがさらに後退する可能性が高まり、豪ドルは下支えられるだろう。一方で、悪化傾向が継続した場合は、RBAの金融政策の舵取りが難しくなる。
なお、米国の政府機関閉鎖に対する米下院での投票は、米国12日までに行われる予定。しかしながら、閉鎖解除が決まった場合でも、トランプ米大統領は多方面で窮地を迎えている。昨日はグリハルバ議員(民主党)が、ジェフリー・エプスタインのファイルを公開する請願書の承認に必要な218番目の署名を提出した。エプスタイン・ファイルを公開するための採決を強制する下院での請願の取り組みが始まったことで、再びトランプ米大統領が世論から厳しい評価を受けることになりそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
