
昨日の強い米雇用統計の発表を受けて、7月の利下げ予想が大幅に後退した。ただ、為替市場ではドル円以外の多くの通貨では、昨日の発表前の水準を24時間もかからずに取り戻している。市場では、来週にかけてドル売りリスクが高いことを警戒している。
ドル売りリスクの一つ目は、昨日トランプ米大統領による予算案「大きくて美しい1つの法案(one big beautiful bill)」が下院で可決し、本日大統領が法案に署名する予定であること。昨日は独立記念日を前に米債券市場が短縮取引だったため、法案可決時には米債市場が開いていなかった。市場はある程度は可決を織り込んでいたかもしれないが、どの程度まで織り込まれていたかが未知数だ。5月中旬に起こった米国のトリプル安相場は、財政悪化の懸念が高まったことも大きな要素だった。そして、議会予算局(CBO)は今回可決した修正法案について、前回の下院案の10年間で2.4兆ドルだった財政悪化が、3.3兆ドルまで悪化すると試算している。来週の休場明けの債券相場次第では再びトリプル安リスクが警戒されている。
二つ目のリスク要因は、再び関税相場になることが挙げられる。ここ最近は上述の予算案や、イスラエルとイラン間の戦争にかかりっきりだったトランプ大統領だが、来週からは再び「Tariff Man(関税男)」としての行動が再開されるだろう。大統領は明日には関税率の書簡を送付し、来月1日から新たな関税賦課を開始すると述べている。特に日本に対しての関税交渉が進んでいないこともあり、対日関税率次第ではドル円が値幅を伴って動く可能性がありそうだ。
・想定レンジ上限
ドル円の上値めどは、日足一目均衡表・基準線145.21円や前日高値145.23円付近。
・想定レンジ下限
ドル円の下値は、昨日の雇用統計発表前の高値143.93円、その下は2日安値143.32円。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ