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人民元見通し【人民元】2023年の中国経済成長は+5.0%越えとなりそうだが、目先は売り優勢 FXレポート 2022/12/20

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本では情報の少ない人民元について、報道や公表データ、現地の報告などをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国経済が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第18回は「【人民元】2023年の中国経済成長は+5.0%越えとなりそうだが、目先は売り優勢」といたしまして、中国の経済活動と相場見通しをお伝えいたします。

目次

1.人民元相場の定点観測
2.人民元が弱い理由は金利差
3.来年の中国経済は意外と底堅そう
4.人民元は対ドル、対円ともに見極めの時間帯に

1.人民元相場の定点観測

まずは簡単に直近の人民元の動きを振り返っていきます。

人民元相場の変化
Investing.comよりデータ取得、筆者作成

USD/CNH相場ですが、前回の寄稿時(2022年11月14日)と比べて729 Pips下落し1ドル=6.9831人民元となりました。

11月下旬に「ゼロコロナ政策」に対する抗議デモの影響でドル高、人民元安が進み、ドルの高値は7.2575を記録しました。ただ、その後に中央政府よりコロナ政策の緩和が示されると、人民元の買戻しが優勢となり、7.00を割り込み現在は6.9831レベルで推移しています。

CNH/JPYも前回の寄稿時と比べて0.32円下落し、1人民元=19.47円となっています。直近1ヵ月はあまり大きなトレンドは出ておらず、19.00~20.00円のレンジの中で上下動を繰り返していますが、ドル円と同様、上値の重い展開が続いています。

2.人民元が弱い理由は金利差

さて人民元を見ていくうえで特に重要なのは金利差(≒スワップポイント)です。なぜなら人民元は通貨設計の思想上、変動率がある程度抑えられており、ゆえに金利差に注目が集まるからです。

こういった中で2022年3月以降、次々と先進国通貨と中国との間で2年債利回りの逆転現象が起こっています。3~4月における米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとの金利差逆転を皮切りに、8月に英国、直近ではユーロ(ドイツ)との金利差逆転も発生しました

各国の2年債利回りの比較
各国の2年債利回りの比較 ロウソク足:中国、青:米国、水色:オーストラリア、紫色:ニュージーランド、朱色:カナダ、黄色:英国、黄土色:ドイツ 
出所:Investing.com

したがって目先は人民元安を免れるのは難しそうです。

ただし潜在成長率で考えれば、中国の経済成長率は、前述の先進各国よりも大きいので、現在の状況がインフレ圧力による特殊な環境であり、将来的には中国の人民元金利が大きくなっていく可能性が高いですから、中長期的には人民元金利の上昇と先進各国の利下げに起因する人民元高が十分に期待できる点は、押さえておくと役立つと思います。

3.来年の中国経済は意外と底堅そう

さて2022年の中国経済ですが、徹底したゼロコロナ政策を続けた結果として、特に第三次産業(飲食、宿泊、小売、不動産など)が停滞し、2022年の中国の経済成長率は筆者推計で前年比+3.0%前後となりそうです。

アリババ創業者のジャック・マー氏の退任、不動産開発大手の恒大集団の資金繰り懸念、習近平氏の続投および権力集中が象徴的な出来事として記憶されるなど、中国に対して引き続きダウンサイドのリスクを意識している投資家が多いのではないかと推測します。

しかし、細かく見ていくと、中国はここにきて財政支出を拡大させていることが分かります。GDPを分母とした2021年中国の財政バランスは▲5.2%でしたが、2022年は▲6.8%にまで拡大させています。

中国の財政バランス
国家統計局、財務局よりデータ取得、筆者作成

さらに先週に開催された経済工作会議と呼ばれる年に一度の経済政策会議においても、財政政策の強化方針が示されています

先進各国においては金融政策に注目が集まりますが、中国は財政政策がとても重要です。なぜならば実質、一党体制ですので巨額の財政政策も野党の反対無しに行うことが出来るからです。

また中国の財政は日本と比べれば遥かに健全ですので、余力も十分にあります。したがって2023年の中国の経済成長はIMFによれば+4.5%程度と見られていますが、筆者はゼロコロナ政策の緩和もあり、+5.0%以上の成長可能性も十分にあると見ています

したがって、2023年における中国経済への不安は報じられているほどではないと見ており、人民元高に戻す可能性も十分にあると見ています。この点も覚えておくと投資に役立つはずです。

4.人民元は対ドル、対円ともに見極めの時間帯に

目先のトレードに関して、対ドル(USD/CNH)はドル高、人民元安方向で見ています。

USD/CNH 4時間足
USD/CNH 4時間足チャート 出所:Investing.com

直近のFOMCにおいてFRBの引締め的な姿勢は鮮明になりましたし、人民元はユーロ金利との逆転もあり弱含みそうですので、対ドルではドル買い先行で問題ないと思います。ちょうど、チャート的にも底堅くなってきていますので、押し目と判断しています

対日本円(CNH/JPY)はドル円次第になるとは思いますが、ややダウンサイドのリスクが高いと見ています。

CNH/JPY 4時間足チャート
CNH/JPY 4時間足チャート/外貨ネクストネオ


ドル円の調整が一服したとはいえ、日本の物価上昇が勢いづいてきましたし、日銀の政策修正観測も出てきていますので、19円割れを警戒したいところです。

ただし、国債残高の大きい日本においては大幅な利上げは困難であり、日本と中国との金利差や日本と米国の金利差は高い水準で残り続けると推測していますので、来年の第2Qあたりからはまた底堅い展開へと転じるのではないかと見ています。

以上が私の現時点における人民元相場との対峙方法になります。ご参考にして頂ければ幸いです。

戸田裕大

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【インタビュー記事】

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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