戸田です。
本シリーズでは「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、新人トレーダー(個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策を通じて、読者のみなさまの実力UPに役立つ内容をご報告します。
第23回目は「ファンダメンタルズとは何か?どのようにトレードに活かすのか?」です。
情報発信を通じて、ファンダメンタルズは難しいとか、役に立たないとか、よく分からないといった意見を耳にすることがあります。ですが、もしかすると、ファンダメンタルズとはそもそも何なのか?という点で、意見の相違があり、ゆえに理解が深まらないのではないかとも考えるようになりました。
そこで本日は私なりのファンダメンタルズとは?をみなさんにお伝えします。ファンダメンタルズに対する理解を深めることを目的にご覧頂ければ幸いです。
目次
1.ファンダメンタルズとは?
2.ファンダメンタルズの活用方法
1.ファンダメンタルズとは?
ファンダメンタルズとは、一言でいうと、世の中で起こっている事象を正しく理解し、相場の将来予測に役立てる、市場における「コンパス」のようなものです。
以下のピラミッド図をご覧ください。
ファンダメンタルズのピラミッド図/筆者の経験をもとに独自に作成
上から金融政策、経済、政治、地理・歴史・宗教・文化とありますが、上にいくほど相場との関係性が強く、下にいくほど相場との関係性が弱くなります。ですが上の項目は下の項目からの影響を大きく受けるため、高い精度で上の項目を見通したい時にはどうしても下の項目まで理解を深めていく必要があります。
ゆえにファンダメンタルズとは一両日中に身につくものではなく、筋力トレーニングのように日々のニュースや出来事に対して着実に理解を深めていくことが大切になります。また1事象を切り取って理解しようとすると誤解してしまうため、事象を時系列にならべて理解していく必要があります。
中国を例に、ピラミッドの説明をします。
現在、中国は緩和的な金融政策を続けており、人民元の価値は対米ドルで下落し続けています。
USD/CNH日足チャート、ドル高、人民元安方向に推移している/出所:Investing.com
背景には先進各国の中で長くゼロコロナ政策を続けており、ゆえに経済の落ち込みが大きいことが挙げられます。ではなぜ中国は頑なにゼロコロナ政策を続けているのでしょうか?そこには政治的な決定があります。
中国は共産党の一党独裁体制ですが、その共産党の方針がゼロコロナ政策の堅持だからです。では、共産党はなぜここまで徹底したゼロコロナ政策を続けるのでしょうか?
推測になりますが、中国は地理的に14ヶ国との国境を有しているため、感染症が入ってきやすい、広がりやすいところがあるので、厳密に管理しているのかも知れません。また都市部と比較すると農村部において医療体制が充実していないので、相対的に体力が低下している高齢者への配慮としてゼロコロナ政策を堅持している可能性もあります。
また西側のワクチン使用よりも、自国の薬品の開発・投与を優先しており、その効果があまり芳しくない可能性があります。また本件に関しては発生地が同国であったため、自国の製品にて問題解決したいという「中国のメンツ」もあるのかも知れません。
あくまで例示なので、細かくエビデンスを取っていませんので、その点は差し引いてください。ただし、現在の緩和的な金融政策が、ゼロコロナ政策による経済の停滞から発生しているものであり、且つその政策の根源にあるのは中国の地理的、歴史的、宗教的、文化的な価値観に基づいている点はご理解を頂けるのではないかと思います。
このように日々起こる事象を、より深い理解に落とし込むことで、相場の大きな方向性を掴む、これがファンダメンタルズということではないかと思います。
2.ファンダメンタルズの活用方法
ではどのようにファンダメンタルズの理解を投資や短期売買に活かすのか?ここが個人投資家にとって重要なポイントでもあります。
1つ目は経済指標や要人発言に飛び乗るのではなく「判断する」、ということです。具体的には経済指標の事前予測と結果の「差」だけに着目するのではなく、その数字がどう金融政策に影響を与えるのか?どう政治の意思決定に影響を与えるのか考察します。難しく考える必要はなくて、自分が政策当局者になったつもりで、その指標を眺めることが大切です。
例えば今週末には米国の10月雇用統計が予定されています。失業率の事前予想は3.6%です。これが仮に3.5%または3.7%だったとして、あなた(政策当局者)は政策を変更しますか?しないですよね。こういう風に相場を見れるようになると、指標や要人発言に意思決定を阻害される回数がぐっと減ってくるわけです。
2つ目は幅広いプロダクトの値動きをみながら、相場のテーマを大切にするということです。ニュースで報じられることだけが、相場を動かしているわけではありません。値動きからいち早く異変に気付くことも重要です。
FXをしていても株式市場、債券市場、コモディティ市場に目を配っておき、いま相場は何をテーマに動いているのか?ということを意識します。例えば2022年10月31日の東京市場において、総合的な資源価格の推移を示すBloomberg Commodity Index がオープンから上の水準で始まっていますが、これは週末に出ていたロシア国防省によるウクライナ産穀物の輸出再開停止の報を受けてのことでしょう。
Bloomberg Commodity Index15分足チャート/出所:Investing.com
したがってウクライナ情勢は悪化しており、この日の東京市場のマーケットは全体的にリスクがやや高まっている、となると「株は売られやすく、為替はドル高になりそうだ」と考えることが出来ます。このように自分が取引する市場だけでなく、世界的な視野でマーケットを捉え、相場のテーマを推測していく視点も重要です。
ファンダメンタルズは1日で理解できるものではありません。ですが地力がついてくることでだんだんと相場の方向性を掴む能力に長けてきます。したがって逆張りが減るということですね。
相場と対峙する上で、非常に重要なスキルの1つになりますので、着実に一歩ずつ、相場への理解、すなわちファンダメンタルズ能力を鍛えていきましょう。
それでは本日はここまでとなります。
最後までご覧いただきありがとうございました。
戸田裕大
<参考文献>
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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