こんにちは、戸田です。
本シリーズでは「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替トレーダーとして様々な失敗を経験してきた私が、どのように工夫して少しずつ上達していったのか体験談をお伝えします。新人トレーダー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策を通じて、読者のみなさまの実力UPに役立つ内容をご報告します。
第17回目は「自分に合ったFXトレードの時間軸を探そう」です。
FXに関する情報発信を見ていて気になるのが、「話している時間軸がバラバラで勘違いする読者が多そう」なことです。例えば「デイトレ」と「長期ポジション」ではトレードに対する考え方をガラッと変えた方がよいですが、ところが情報の読み手からするとそれが見えづらいと感じています。そこで本日はトレードの時間軸とそれに応じた必要な情報を整理し、特に読者の方の興味関心の高い、短期トレードの準備について詳しくご報告させて頂きます。
主に伝えたい点は3点です。
1. どの時間軸においても「イベントスケジュール」と「実需取引」を意識しよう
2. 損切りと利食いを躊躇なくできる人は短い時間軸で、相場観に自信がある人は長めの時間軸で勝負しよう
3. 自分の性格を踏まえて、それにあったトレードの時間軸を設定することで、理想のトレードへと変化させられる
早速みていきましょう。
目次
1.トレードの時間軸とそれに応じて必要な情報、準備
2. みなさんに向いているトレードの時間軸は?
1.トレードの時間軸とそれに応じて必要な情報、準備
FX界隈で使われている用語と、会計の基準を参考にトレードの時間軸を2種類5つに分類しました。短期:①デイトレ、②スイング、③コア 中長期:④中期、⑤長期の5つです。
デイトレは1日未満、スイングは1日以上~数週間、コアは数ヶ月、中期は1年以上~5年未満、長期を5年以上として分類しています。中期より先はFXと言うよりも主にFX積立や外貨預金を想像して頂くとよいかも知れません。
一般的にトレードの時間軸が短ければ短いほどに、相場観に頼らない姿勢が重要になります。反対に、取引の時間軸が長ければ長いほどに相場観に頼る必要があります。「相場観など必要ない」とか「相場観が何よりも大事だ」的な論争は、この時間軸を意識していないから起こると考えます。
それからゴトー日(5日や10日に実需の取引が多く持ち込まれるとされる)や仲値(東京9:55の銀行の値決め)、東京株のオープン(9:00~)などはデイトレに必要なタイムスケジュールになります。一方で長めのスイングやコアを中心に取引するトレーダーからすればあまり強く意識する必要はありません。この辺りも、どの時間軸で自分が取引するかと言う視点があれば、必要な情報か、不要な情報かを簡単に整理することができます。
一方でトレード全体の共通項もあります。例えばFXにおいて「実需」の取引は影響が大きく、どの時間軸のトレードを行うにしてもある程度意識しておいた方がよいです。これは株のトレードとの大きな違いになりますが、FXは旅行に出かける個人や、貿易を営む企業、そして株や債券の投資家など、さまざまなプレイヤーが参加しているので、それぞれの特徴や出現頻度、規模を抑えておくことは重要です。
例えば過度に英ポンドが安くなれば英企業を買収する動きが出てきて英ポンドは支えられやすくなりますし(ソフトバンクのアーム社買収などは典型例)、ドルが高くなれば日本企業の輸出玉が出てきやすいといった価格をトリガーとした実需のフローがあります。それから月末、期末はリバランスと呼ばれる投資家の資産再配分(アロケーション)が行われやすいです。このあたりは短期トレードをする上で意識した方がよいポイントになります。
一方で中国人による爆買いや、フィリピン人やメキシコ人による本国への仕送りは毎月発生するフローですので、じわりと為替レートに効いてきます。こういった情報は中長期のトレーダーがより意識しておくべき実需情報になります。
またそれぞれの時間軸における「スケジュールの把握」も重要です。デイトレなら1日~1週間の、スイングなら月のイベントスケジュールを把握しておくべきです。仮に中長期のトレードであったとしても、米国の大統領選や中間選挙、日銀総裁の任期やダボス会議などの国際金融イベントは把握しておいた方がよいでしょう。
主観的な情報ですが、金融機関のトレーダーはスイング~コアの取引がメインで、FX個人投資家と比べてスケジュールを良く把握している印象があります。一方で短期的な値動きのクセを捉えるのは個人投資家の方が上手という印象ですね。どっちが良いと言うことではなく、お互いに学ぶべきところは多いように思います。
どの時間軸だから勝てる、勝てないと言うのはありませんので、やはり自分に合ったトレードの時間軸をみつけることが成功のカギを握っていると思います。
2.みなさんに向いているトレードの時間軸は?
上級者の方はここまでお伝えしたことを、ある程度、自分の中で区分けが出来ていると思います。ですが初・中級者にとっては自分がどの時間軸のトレードをしているのか、そして自分に合っているのかよく分からないと思います。
よく聞く失敗談としては、デイトレードのつもりで始めたのですが、含み損が増えて、スイングになり、コアになり、そして中長期のポジションへと変化していく現象です。気持ちは分かりますが、やはり悪手と言えるでしょう。利益が乗ってしまいデイトレがスイングに、そしてコアにと言うのであればそれは喜ばしいことですが、おそらくその逆が多いですよね。
まずはやってみないと何もわからないので、ぜひ色々と試してみてほしいです。その上で、個人的には性格で分けると上手く機能するのではないかと思います。
トレードの軸によって必要な準備や気をつけるべきことが違うわけですから、やはりそこに向き不向きがあります。中長期で相場を捉える人には分析力が必要ですし、デイトレで成功したい人には利食いや損切りに躊躇しないタイプの方が向いていると思います。
気持ちは非常によく分かりますが、損切りが得意ではないと言う人もいるでしょうからそう言った方にはある程度、長い目線でのトレードが向いていると思います。一方でガシガシ損切りできて、早めに利食いしてしまってその後に伸びてもあまり後悔のない方にはデイトレが向いていると思います。
またスイングトレードにおいてはエントリーポイントが勝敗を分ける可能性が高いので、じっくりとチャンスを待つ姿勢が必要になります。一方でデイトレであれば、勢いのある通貨にさっと飛び乗ることも重要なスキルになってきますので、この辺りも向き不向きが分かれるところです。
本日添付させて頂いた表をもとに、ある程度自分の向き不向きを考えながらトレードの時間軸について考えてみると、ご自身の理想のトレードに近づけるかも知れません。
最後に、「相場観」を醸成するのが難しいと思われる方もいるかも知れないと思い補足させて頂きます。銀行員が相場観を養うためにやっていることは、とにかく他の金融機関などのレポートを読むことです。もちろん最終的には自分で分析できるようになるとベストですが、色々な方のレポートを読むことで、少なくとも調査方法や考え方の参考になるわけです。
私の尊敬する元上司は、相場観のなかった頃はとにかくレポートをプリントアウトして、持ち帰って読んでいたと言っていました。まずはマネ育チャンネルや新聞等に掲載されている情報で十分かと思いますので、相場観を養いたい方は色々なレポートの読み込みにチャレンジしてみるとよいと思います。
わたしも色々と寄稿させて頂いていますので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。
それでは本日はここまでとなります。
引き続き一緒に学んでいきましょう。
戸田裕大
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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