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経済指標と為替相場の関係「元大手邦銀ディーラーが教える FX実力アップ教室」戸田裕大

FX実力アップ教室 戸田裕大

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替ディーラーとして様々な失敗を経験してきた私が、どのように工夫して少しずつ上達していったのか体験談をお伝えしていきます。新人ディーラー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策などを通じて、読者のみなさまの実力UPの参考にして頂きたいと考えています。

第8回目は「経済指標と為替相場の関係」です。早速みていきましょう。

目次

1. 経済指標と為替相場の関係は複雑?
2. 実際に先週の経済指標とドル円の動きを振り返る
3.やっぱり指標も相場も生き物、自力をつけるしかないと思う

1.経済指標と為替相場の関係は複雑?

FXを始めると初心者から上級者まで必ず意識するもの、それが「経済指標」だと思います。特に米雇用統計が世界中の投資家の注目を集めていることは、広く知られているのではないでしょうか。

私は今でこそ経済指標にある程度詳しくなったと考えていますが、やはり駆け出しのころはよく分かっていませんでした。例えば米雇用統計においては、失業率に注目すべきなのか、非農業部門雇用者数の増減に注目すべきなのか、自分自身の解釈とマーケットの動きが逆に動くことも多々あり、発表された数値を見ては混乱していたことを最近のことのように本当によく覚えています。

実際にはいずれも重要項目ですが、仮に失業率の目安が金融政策メンバーの主要な議題になっている場合は、失業率により注目が集まります。ようは場面に応じて指標の重要性も変わるということです。

またその時の市場参加者のポジション状況によっても反応が異なります。ドル買いのプレイヤーが多い時に、悪い米経済指標が発表されると一気にドル売りに傾くことも多い印象です。

色々述べてはいますが、論より実践と言うことで、丁度先週のドル円は経済指標によって動いた相場だと思いますので、まずは一緒に相場を振り返ってみましょう。

2. 実際に先週の経済指標とドル円の動きを振り返る

以下に先週のドル円チャートを添付しました。こちらを用いて解説していきます。

ドル円チャート

先週のドル円相場は、1ドル=109.89円からスタートしました。週初はドル買い優勢で火曜日にかけて110.16まで上昇。しかし火曜日のNY時間に発表された米8月消費者物価指数が想定より低い5.3%で発表されると、早期の金融引き締め観測が後退しドル売り優勢となりました。

その後110円を割り込んだドル円はズルズルと下落し、水曜日のNY時間までに109.11の今週安値をつけます。しかし発表された9月ニューヨーク連銀製造業景気指数が34.1(基準は0)と強く再びドル買い優勢になると、木曜日の米8月小売や9月フィラデルフィア連銀製造業景気指数も強くドル買いが強まる展開に。結局再び110円に戻したドル円は110.07まで上昇したのち110円丁度でクローズしました。

ここで先週の相場(経済指標)のポイントを3点解説します。

まず下落のきっかけとなった米8月消費者物価ですが、絶対水準としては+5.3%とFEDの政策目標(2.0%)よりも高いのですが、その前週に消費者物価の先行指標でもある8月の卸売物価が8.3%と強く、市場の目線はもっと高かったので売り材料とみなされました

米8月消費者物価
※米8月卸売物価は上昇したのに、米8月消費者物価は下落した。消費者物価ももっと上昇するはずと思っている市場参加者も多かった。

次に米8月小売の前月比+0.7%は一見するとそんなに強くなさそうですが、これは絶対水準としてはかなりの高水準を維持しています。以下のグラフをみると青い棒グラフが高止まりしているのがわかると思います。ですから+0.7%と言う数字と合わせて絶対値がどれくらいかも重要な判断材料になります。

米国小売

ニューヨーク連銀とフィラデルフィア連銀の指標はそれぞれ基準が0ですので、30台は相当強いです。資源価格の高騰や半導体不足など製造業に不安なニュースが多い状況ですが、こう言った中でもポジティブな結果だったことで市場のセンチメント(雰囲気)は改善しました。

さてここでの持ち帰りポイントですが、やはり指標の数値(0.1とか、5.0とか)だけをみていてもよく分からないので並べてみてみる、関連指標と比べてみる、絶対値にも注目すると言うことが重要と言えそうです。まずはこれらの点を意識してみると役に立つと思います。

3.やっぱり指標も相場も生き物、自力をつけるしかないと思う

とは言え、ここまで解説してくれるニュースサイトはありません。メディアの報道官も相場展開や、出てきた指標の解釈までは専門外なので、数値をそのまま流しますよね。

となると状況に応じて、自分なりに噛み砕いて指標を理解する能力が求められているのかも知れません。一朝一夕に経済指標とその解釈を理解することは難しいと思いますが、日々訓練していくことが唯一の上達への道のりと思います。

とは言え、これで終わってしまうと解決策のヒントすら示していないと思うので、少し私の話をさせてください。

もしかすると以前にもお伝えしたかも知れませんが、私が経済指標などファンダメンタルズに詳しくなったのは仕事で人に説明する機会が増えてからです。インターバンクのディーラーと呼ばれる短期売買の仕事から、カスタマーディーラーと呼ばれる法人のお客様向けの為替セールスに移ってからこの能力は飛躍的にレベルアップしました。

お客様に現在の市況や金融商品の内容を説明し、その対価として為替取引などの獲得を目指す仕事ですが、特に最初の1年間は質問されるたびに上手く答えられず本当に悔しい思い、恥ずかしい思いをたくさんしました。

完全失業率ってなんだろう?とか、雇用とインフレの関係とか、はたまた頭が真っ白になってFRB議長の名前すら頭に浮かんでこないこともありました。お客様に「こいつホンマに大丈夫か?」と思われたことも多々あると思います。でも暖かいお客様のもと、めげずに説明することを繰り返した結果が、今こうしてコラムを設けさせて頂くに至っていると思います。

ですからなるべく人に説明する、または説明するつもりで書き出してみる、自問自答(独り言)してみると言うことが上達に役立つと考えています。

ここだけの話ですが、私の社会人1年目の時(銀行の法人営業時代)は日経新聞を見た瞬間に眠気が襲ってくるほどの経済オンチでした。上司には新聞の切り抜きを強制させられ、仕事なので切り抜いて持っていくと、「なんでこのニュース選んだの?」とよく怒られました。

正直に、為替(FX)をさわるまでは経済指標など全く興味ありませんでした。ですが為替トレーディングを行ううちに、また仕事で人に説明することを強制されたことで上達したと思います。

大きな興味を持つ、または必要に迫られるのどちらかになれば、どんな方でも必ず習得できるスキル、それが経済指標を解釈する力だと思います。

取り組んでいる手法や分析がなんだか上手くいかないと言う方は経済指標の解釈力をつけることを試してみても面白いと思います。なんせ経済指標は「ファンダメンタルズ」、つまり基礎に分類されますから、基礎を学ぶということはどんな分野においてもきっと役に立つことと思います。

引き続き一緒に学んでいきましょう。

戸田裕大

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

各種経済指標:United States Census Bureau
https://www.census.gov/

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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