
ドル/円の2月見通し 「日米政治を睨みドル安と円安の綱引き状態に」
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト 神田卓也
ドル/円 の基調と予想レンジ
基調
もみ合い
予想レンジ
152.000-157.500円
ドル/円1月の推移
1月のドル/円相場は152.094~159.452円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約1.2%下落した(ドル安・円高)。2026年の取引は156~157円台のもみ合いで開始。3日に米国がベネズエラへ侵攻して大統領を拘束したが影響は限定的だった。その後、9日の米12月雇用統計と本邦衆院解散検討の報道を受けて158円台へと上伸。13日には159円台へと続伸し、14日には約1年半ぶりの高値となる159.45円前後まで上値を伸ばした。ただ、本邦財務省筋から円安けん制が相次いだため円買い介入発動への警戒感が高まると、その後は円売りが一服。一方で、トランプ大統領の政策に対する不透明感や連邦準備制度理事会(FRB)の独立性をめぐる懸念を背景にドルも軟調だったため22日にかけて157~158円台で膠着状態となった。しかし、23日には日銀とNY連銀が協調して「レートチェック」を行ったとの観測から155円台へと急落。日米協調ドル売り・円買い介入への警戒感が広がる中、27日にはトランプ大統領のドル安容認発言もあって約3か月ぶりに152.09円前後まで下落した。もっとも、ベッセント米財務長官が為替介入を明確に否定したほか、FRBが追加利下げに慎重な姿勢を示したことで28日にはドルが反発。30日には次期FRB議長に、比較的市場の信任が厚いウォーシュ氏が起用されたことを受け、154.70円台に下げ幅を縮小して1月の取引を終えた。
ドル/円 日足チャート

ドル/円1月の四本値
始値 156.650 高値 159.452 安値 152.094 終値 154.769
1月振り返り
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 5日 | 米12月ISM製造業景況指数は47.9と市場予想(48.4)に反して前月(48.2)から低下。1年2カ月ぶりの低水準となり、活動の拡大と縮小の分岐点となる50.0を10カ月連続で下回った。 |
| 7日 | 米12月ISM非製造業景況指数は54.4と市場予想(52.2)に反して1年2カ月ぶりの水準に上昇した。構成指数では仕入れ価格が64.3と9カ月ぶりの水準に低下した一方、新規受注は57.9と1年3カ月ぶりの高水準となった。 |
| 9日 | 米12月雇用統計は非農業部門雇用者数が5.0万人増と市場予想(7.0万人増)を下回ったものの、失業率は4.4%に低下(予想、前月ともに4.5%)した。また、平均時給は前年比+3.8%と予想以上に伸びた(予想、前月ともに+3.6%)。その後、読売新聞は「高市政権安定へ勝負、衆院解散検討」として「高い内閣支持率を維持する現状を好機と見て、慎重論を振り切り、就任後からひそかに温めてきたカードを切る方向に傾いたとみられる」と報じた。 |
| 12日 | 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、FRB本部改修について昨年夏に行った議会証言を巡り、司法省から刑事訴追の可能性を示す大陪審への召喚状が届いたと明らかにした。召喚状の根拠としている建物改修や議会証言というのは「口実」であり、「大統領の意向ではなく、公共の利益に関する最善の評価に基づいて金利を設定した結果だ」と述べた。 |
| 13日 | 米12月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%、前年比+2.7%と市場予想に一致。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前月比+0.2%、前年比+2.6%だった(予想+0.3%、+2.7%)。なお、トランプ米大統領は「インフレの数字が発表された。とても低いインフレ率だ。『遅すぎる』パウエルは意味ある利下げを行うべきだ」とSNSに投稿した。 |
| 16日 | 片山財務相は閣議後の会見で、足元の円安について「私は再三、あらゆる手段を含めて、断固たる措置を取らせていただくと言っている」などと発言。財務相は午後にも会見を行い、日米共同声明について「急激な、ファンダメンタルズを反映しない動きには断固たる措置が取れる、これは介入のことだが、これにはなんの制約や制限はついていない」と述べて、より直接的に円買い介入に言及した。 |
| 22日 | 米11月個人消費支出(PCE)は前月比+0.5%、FRBがインフレ指標として重視する同PCEデフレーターは前年比+2.8%、同コアPCEデフレーターも前年比+2.8%で、いずれも予想通りだった。 |
| 23日 | 日銀は政策金利を0.75%に据え置くことを決定。9人の審議委員のうち高田委員は1.0%への利上げを主張したが反対多数で否決された。同時に発表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では「経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている」との認識を示した。金融政策運営については「見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」とあらためて表明した。植田総裁はその後の会見で、最近の長期金利の動きについて「かなり速いスピードで上昇している」との認識を示し、金利上昇を抑制するため「機動的に(国債買い入れ)オペを実施することはあり得る」と発言。また、円安については「具体的コメントすることは控える」としながらも「基調的な物価上昇率も少しずつ上がってきている中では、小さな動きでも注意を払っていかないといけない」として、市場の動きに警戒感を示した。一方で、物価は「見通しを大幅に超えてどんどん上がっていく状況ではない」と述べた。 |
| 27日 | トランプ米大統領は、記者団からドルが下落しすぎていると思うかと問われ、「いや、素晴らしいと思う」「ドルは好調だ」と語り、最近のドル安を懸念していないことを強調した。 |
| 28日 | 米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を3.50-3.75%に据え置いた。声明で、「雇用の伸びは低いままで、失業率は安定化の兆しをいくらか示している」と指摘。過去3回の声明にあった「雇用に対する下振れリスクが高まったと判断している」という文言を削除した。なお、ミラン理事とウォラー理事はそれぞれ25bp(0.25%ポイント)の利下げを主張して金利据え置きに反対した。パウエルFRB議長はその後の会見で、「次の利下げがいつになるのか、あるいは次回の会合で金利を引き下げるのかについて、明確な判断基準を示そうとしてはいない」とした上で、「入手するデータや変化する見通しなどを考慮しながら会合ごとに判断していく上で、われわれは良い位置にある」などと述べた。この日、ベッセント米財務長官は23日以降の円急伸について、ドル売り・円買いの介入は「絶対にしていない」と明言。その上で、「米国は常に強いドル政策を堅持している」と語った。 |
| 30日 | トランプ米大統領は5月に任期が切れるパウエルFRB議長の後任に元FRB理事のウォーシュ氏を起用すると発表。ウォーシュ氏はFRB理事時代に量的緩和(QE)に反対の立場を取った経緯があり、ハセット氏やリーダー氏など他の議長候補者に比べるとタカ派寄りとの見方が多い。 |
各市場 1月の推移

2月の日・米注目イベント

ドル/円の2月見通し
2月の為替市場では円安の流れが再開しそうだ。1月31日、高市首相は衆院選の応援演説で、外国為替資金特別会計(外為特会)の運用が円安によって「ホクホク」だなどと発言。のちに円安メリットを強調した発言ではないと弁解したが、市場は高市首相が円安をさほど懸念していない証左と受け止めたようだ。加えて、2月1日に朝日新聞が世論調査を基に報じた所によると、自民党は2月8日の衆院選において、単独過半数(233議席)を大きく上回る勢いで、日本維新の会とあわせて与党として300議席超をうかがう情勢のようだ。選挙後に高市首相の政権運営基盤が強固になることで「責任ある積極財政」の推進力が増すとの見方が強まる公算が大きい。市場は高市財政を円売り材料として意識していることから、衆院選の前後は特に円安が進行しやすくなると考えられる。一方、米国でも政治的にドル安の流れが続きそうだ。トランプ大統領は1月27日にドル安を歓迎する発言を行った。ベッセント財務長官が火消しに動いたものの、米政権のドル安志向は根強いと見るべきだろう。そうしたこともあって、トランプ大統領の外交政策はことごとくドル売り材料視されている。1月にグリーンランドの領有をめぐり欧州と対立した際も、ドルはユーロに対して大きく下落した。トランプ大統領は2月24日に、内政・外交の基本方針を示す「一般教書演説」を行う予定であり、ドル安の流れが継続する可能性が高いと見る。結果的に2月のドル/円は、円安とドル安の綱引き状態になることで方向感が出にくい展開が予想される。
株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
