昨日の海外市場でドル円は、政府・日銀による為替介入への警戒感が高まる中、円買い・ドル売りが先行。24時前に一時155.68円付近まで値を下げた。ただ、円先安観を背景に円売り・ドル買いも出やすく、3時前には156.02円付近まで下げ渋った。ユーロドルは、アジア時間に一時1.1808ドルと9月24日以来3カ月ぶりの高値を付けたものの、1.18ドル台では戻りを売りたい向きも多く滞空時間は短かった。
本日の東京時間のドル円は、日本と中国以外の主だった市場がクリスマス休場のため閑散取引が想定される。ただし、毎年12月25日恒例となる日本経済団体連合会審議員会(経団連)での植田日銀総裁の講演には要注目。また、口先介入や赤字国債特例法の延長など、本邦からの大きなリスク要因があることも念頭に置いて取引する必要もありそうだ。
植田日銀総裁の講演時間の詳細は判明していないが、昨年と一昨年はいずれも13時過ぎに発言内容が伝わっている。両年ともに日銀金融政策決定会合の声明文や会見をほぼ踏襲するもので、市場の動意は限られた。質疑応答も予定されておらず、本日の講演内容でサプライズを期待するのは難しいかもしれない。
ただ、警戒しなくてはならないのは、先週19日の金融政策決定会合後の植田総裁の会見後に円安が進んでしまっていることだろう。本来であれば利上げ継続を示唆し、円安に歯止めをかけるつもりだったが、逆に円安が進行した。
米国から今年の6月5日に公表された「外国為替報告書」では、日銀の金融政策について、「ドル高・円安を是正する観点から引き締め政策の継続が必要」との見解を示し、10月の日米財務相会談後に米財務省は、「為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した」と発表している。このように、米国も日銀の利上げで、ドル高に歯止めを掛かるのを期待していたのは明らか。自民党は米国からの圧力がかかり日銀の利上げを認めたが、円安を止められなかったことで、日銀総裁が逆に政府から圧力をかけられている可能性も指摘されている。講演内容がタカ派寄りになるリスクには備えておくべきか。
為替介入については、ここ最近為替当局者から、介入についての発言が繰り返されていることも気に留めておく必要がある。さらに、日本だけでなく韓国の為替当局者も口先介入を行っている。
トランプ政権は貿易不均衡でドル安を望んでいるとの声もあるが、米政府は年央に起こった米トリプル安の再燃が懸念されることで、ドル安について声高に要求することはできないだろう。よって、為替政策については、日本や韓国などの個別国には利上げを促し自律的にドル安に進むように仕向け、更にドル高が進んでしまった場合は為替介入を米国が同意するとの憶測もある。
ただ、ここで問題となるのは片山財務相など多くの要人が述べている「投機的な動き」には現状はなっていないことだ。商品先物取引委員会(CFTC)が発表した12月16日付の円先物のポジションは、僅かに円ショートになった程度で、ほぼフラットの状態。けっして投機筋が円売りを仕掛けていないにも関わらず、「投機的な動き」との判断で介入を行うのは難しいかもしれない。
植田日銀総裁のタカ派発言期待や口先介入などで円買い要因がやや多い中で、円売り要因となるのは財政不安ということは変わらない。高市首相は23日の日経新聞とのインタビューで国債発行について「抑制的に」と述べている。しかし、昨日の報道によると今年度に期限を迎える赤字国債特例法について、2026年度から5年の延長を検討していると伝わっている。「抑制的に」だけではなく「責任ある積極財政」など言葉だけ先行し、財政悪化は不可避と市場は判断していることは変わらず、円売り要因として重くのしかかる。
なお、本日は2年物利付国債の入札も行われ、債券市場が動意づいた場合には円相場にも影響を与えそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
